アスペルガー症候群は大人になってから発症する?接し方のコツは?

2018/7/10 記事改定日: 2019/6/17
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

複数の遺伝的・環境的な要因から発症する発達障害の一種「アスペルガー症候群」。子供の精神障害というイメージもありますが、大人が発症することもあるのでしょうか。
今回は大人のアスペルガー症候群について、大人になってから発症する可能性と、周囲にアスペルガー症候群の人がいる場合の接し方のポイントなどを紹介します。

大人になってからアスペルガー症候群を発症することはある?

アスペルガー症候群の原因ははっきりとはわかっていませんが、近年の研究では遺伝的要因と環境的要因の両方が、複雑に絡み合うことで発症するといわれています。そのため、基本的には生まれつき遺伝子に特性を持った人が発症する障害であるため、子供の頃には全く兆候がなかったのに、大人になって急に発症するというものではありません

つまり「大人になってからアスペルガー症候群になった」というケースは、成人してから発症したのではなく「大人になって初めて症状を自覚した」ということになります。子供の頃にもアスペルガー症候群の兆候が出ていたと予測されますが、周囲の手助けが必要なのは「子供だから」と捉えられ、自覚に至らなかったと考えられます。

ただし、成人して就職し、社会人になると子供の頃のような手助けは受けられなくなります。
この段階で初めて、自分と周囲との感覚の差や特性に違和感や疑問を感じるようになり、障害に気が付いたり、専門機関への受診を考えるきっかけになることも少なくないのです。

アスペルガー症候群の人と仕事でどう接すればいい?

アスペルガー症候群の人は、相手の言葉・表情・立場などから本当の意図や気持ちを想像して察する能力が弱く、自分を客観視するのが苦手な傾向があります。

このため、社内や取引先にアスペルガー症候群の人がいる場合は、仕事上の指示や頼み事・コミュニケーションにおいて、彼らの特性にあわせた工夫が必要になります。

以下に、あいまいな表現や指示が伝わりにくいアスペルガー症候群の人と一緒に仕事をするための接し方のポイントをまとめましたので、参考にしてください。

アスペルガー症候群の人と仕事をするうえで、気を付けるべきポイント

感覚の共有や想像が必要になるような、漠然とした指示や依頼はしない
時間やペースは「〇分」「〇時間」、距離は「〇cm」など、具体的な数値で指示をする
仕事の内容、やり方、期日、対応の仕方ははっきりと指示しておく
「適当にやっておいて」ではなく「この順序でこの区切りまで、〇日の〇時までに」と指示し、また「期日に間に合わなかったときにどうすべきか」のルールも伝える
イメージを共有したいときは、視覚的・数値的に伝える
「もう少し力を抜いて」などの「もう少し」の感覚を理解することが難しいので、「今が100%だから、〇%くらいになるように力を抜いて」などと具体的に言い替える

大人のアスペルガー症候群の特徴を確認しよう

仕事上、特に周囲とのコミュニケーションにおいて「なんだかうまくいかない」ことが多いという人は、自分や周囲の人がアスペルガー症候群だからかもしれません。
ここからは、大人のアスペルガー症候群に見られる特徴をご紹介しますので、自分や周囲に当てはまる特徴がないかどうか、チェックしてみてください。

  • 代名詞や比喩を使ったあいまいな表現が苦手で理解できず、トラブルになってしまう
  • 指示をもらったがあいまいだったのでよくわからず、適切にこなすことができなかった
  • 空気を読むことが苦手で、周囲の状況を想像して動けずに非難されることがある
  • つい率直な物言いをしてしまうため、相手を傷つけるようなことをいってしまう
  • 相手の立場を考慮した言葉遣いや社交辞令を、理解できないし使いこなせない
  • 自分のこだわりを曲げることが苦手で、細部にこだわってしまい仕事が進まない
  • 規則や法則を重んじる傾向が強く、急な優先順位や仕様の変更に対応できない
  • 物を捨てられず収集癖があるため、整理整頓が苦手で散らかりがち
  • 人の顔をなかなか覚えられない、何度も会っているのに顔と名前が一致しない

自分や周囲の人が上記に複数当てはまる場合は、アスペルガー症候群の可能性があります。アスペルガー症候群を放置していると周囲との関係や仕事に支障が出たり、生きづらい思いをすることも考えられますので、早めに専門機関に相談することをおすすめします。

グレーゾーンに注意

アスペルガー症候群をはじめとする発達障害の人には、医学的な診断基準には当てはまらないもののアスペルガー症候群が極めて疑わしい症状に悩まされている人もいます。
このような状況を「グレーゾーン」と呼び、集団生活や社会生活上様々な支障を感じながらも、実際に発達障害と診断されている人よりも周囲からの理解を得にくく、支援を受けることもできないため、人知れず悩みを抱えているケースが多々あります。その結果、抑うつ気分や反社会的行動に出るなどの二次障害を発症してしまうこともあります。

二次障害を防ぐためにも、発達障害の明らかな基準に当てはまらない場合でもできるだけ早めに専門の機関で治療や療育などに必要性について相談するようにしましょう。

おわりに:アスペルガー症候群は生まれつき素養のある人が発症する!仕事上での接し方には工夫が必要

アスペルガー症候群は、基本的には生まれつき素養のある人が発症するもので、大人になってから急に発症するものではありません。ただし、子供の頃には症状に気が付かず、大人として働くようになって初めて自覚するケースはあります。アスペルガー症候群の人は独特の感覚を持っているため、仕事上のコミュニケーションには工夫が必要です。自分や周囲にその兆候を感じたら、まずは専門機関に相談してみましょう。

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