記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/6 記事改定日: 2019/7/19
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
結核は、感染しても症状が出ない場合や発病しないこともあります。このようなときは自然治癒したと考えてもいいのでしょうか。
この記事では、肺結核と自然治癒について、発病を防ぐ治療法もあわせて解説していきます。
結核菌が肺に侵入して増殖を開始すると、組織が炎症を起こし、肺のリンパ節が腫れるなどの症状が起こります。
通常は、この時点(肺に菌が入ってから2〜3ヶ月以内)で菌に対抗する免疫が作られ、結核菌を抑え込むことにより発病を防ぎ、作られかかっていた病巣も治ります。
このような「感染はしていても発病には至っていない状態」を潜在性結核感染症といいます。
潜在性結核感染症の人は免疫により結核菌が押さえ込まれているだけで、体内から消えたわけではありません。
免疫機能が低下したときなどをきかっけに活動を再開すれば、再発することがあります。
ちなみに、大人(成人)の場合、一般的には感染から半年〜1年以上または何十年も経過してから免疫力の低下に伴い発病しますが、赤ちゃんや子供、成人の一部は感染直後の免疫形成がうまくできずに初期に作られた病巣が進行することがあります。
結核の「感染」とは、体内に入りこんだ結核菌が肺や他の臓器に定着している状態で、活動をしていない間は周囲に感染することはありません。結核菌の感染後に実際に発病する確率は1〜2割程度とされ、感染してから6ヶ月〜2年後に発病することが多いといわれています。
対して「発病」とは、結核菌の活動が開始された状態であり、症状が進むにつれて、咳や痰中に排菌されるようになります。排菌量が増加すると周囲へ感染を広げる危険があるため、入院治療が必要になります。
肺結核では次のような症状が現れます。
肺結核は咳や痰などの呼吸器症状が見られないこともありますので、体の不調が続くときは放置せずになるべく早めに病院で相談するようにしましょう。
周囲の人が肺結核を発病した場合には、感染症法に基づいて管轄の保健所が調査を行い「接触者検診」を実施します。保健所から知らせが届いた場合は必ず受けるようにしましょう。
また、周囲に肺結核を発病した人がいない場合でも結核は空気感染する感染症なので知らず知らずの内に感染している可能性があります。年に一回は健康診断を受けて胸部X線写真で肺の状態をチェックするようにしましょう。
潜在性結核感染症の治療では、発病する確率を下げる目的で、イソニアジド(INH:イスコチン)という抗結核薬の服用を6〜9ヶ月間継続する方法が用いられます。
基本的には、結核を発病しやすい人に対して行われ、感染後に発病する確率を50〜70%抑えることができます。
イソニアジドには肝障害、食欲不振、悪心、嘔吐、全身倦怠感などの副作用があり、肝障害がある人や高齢者の場合は重症化する可能性が高いといわれています。
以下のような症状が続く時はすぐに担当医に相談しましょう。
薬の副作用などで服薬を中断せざるを得ない場合は、胸部X線検査などを定期的に受け、発病を見逃さないようにするように心がけてください。
DOTSとは、医療従事者などの第三者の目の前で服薬をすることで、結核の治療をきちんと行えるように支援する方法です。各自治体の保健師がDOTSや服薬手帳の確認などを行います。
結核菌に感染した全ての人が結核を発症するわけではありませんが、免疫力が落ちている人は特に発症のリスクが高くなります。また、結核菌は感染後数年単位で体内に潜み続けることもあります。
結核菌に感染したあと発症しなかったからといって、自然治癒したわけではありません。
感染の可能性があるときは必ず検査をしてもらい、適切な治療を受けるようにしましょう。