記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/3
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
長期的な咳や血痰などを引き起こすことで知られる「結核」ですが、結核の原因菌にはどのように感染するのでしょうか?また、感染後は必ず結核になってしまうのでしょうか?結核の感染経路や発症しやすい人について解説していきます。
結核は、結核患者の咳やくしゃみの飛沫に含まれている結核菌を吸い込むことにより感染します。ちなみに、結核菌は細胞に侵入すると、免疫により覆われて小さな核を形成するため、結核と呼ばれるようになったといわれています。
なお、結核菌を吸い込むことで感染しますが、手を握ったり、同じ食器を使用するなどで感染することはありません。ただし、空調換気が悪く狭い場所では、結核菌が空気中に留まる時間が長いため、感染者が側にいない場合でも、気づかぬうちに感染しているケースがあるので注意しましょう。
結核は、感染しても必ず発病するというわけではなく、多くの場合は免疫機能により菌の活動が抑え込まれるため、発病に至ることはありません。しかし、免疫力の低下により結核菌の活動が開始されると、感染してから半年~2年後に発病することが多いとされています。ただし、乳幼児などの免疫力が弱い人はそれより早く発病することがあるため、注意が必要です。
また、結核菌は一度感染すると、完全に体内から消えることはないため、他の病気や老化により免疫機能が低下すると、感染から数十年経った後でも発病する恐れがあります。とくに、高齢者はこのケースでの再発が多いといわれています。しかし、人によっては感染しても生涯発病しないこともあり、発病に至る原因については未だはっきりとは解明されていません。
なお、結核菌に感染しているだけでは周囲へ感染することはなく、発病してから痰中に排菌している場合のみ感染の恐れがあるとされています。
免疫機能が弱い乳幼児は、感染後すぐに発病する確率が高く、また重症化しやすい傾向があるため注意が必要です。
ストレスや不規則な生活が続くと、免疫力が低下しやすいため、発病する確率も高まります。
中年期以前では女性の発病率が高く、中年期以降では男性が多いとされています。
糖尿病、胃潰瘍、胃の切除をした人、塵肺、腸のバイパス手術をした人、人工透析を受けている人、血友病の人などは発病率が高いとされています。
喘息、膠原病、癌などの治療で用いられる副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)や抗癌剤は、免疫を抑制する作用があるため、発病率が高くなるとされています。また、関節リウマチなどの治療で使用されるTNFα阻害剤(生物学的製剤)を投与している人も発病率が高くなるため、注意が必要です。
アフリカや一部のアジアの国々ではHIV感染により免疫力が弱まることにより、結核の発病者が増加する問題が起こっています。
最近の研究では、結核菌への対抗に必要な抵抗力は遺伝的に定められていることが徐々に明らかになりつつあります。
喫煙者、過去に結核を発病したことのある人、BCGワクチンの接種歴がなくツベルクリン反応(結核感染の診断に用いられる抗原)が陽性の人、最近身近に結核を発病した人がいる、などの場合は、発病率が高くなるため注意が必要です。
以下のような症状が見られる場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
ただし、気管支喘息や肺炎、副鼻腔気管支症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、胃食道逆流症、肺腫瘍、百日咳、ACE阻害薬(血圧を下げる薬の1種)の副作用などでも、長期間咳が続く場合があります。いずれの原因でも早期の対処が重要になるので、早急に医療機関を受診してください。
結核は、結核患者の咳やくしゃみの飛沫に含まれている結核菌を吸い込むことで感染します。しかし、感染した人すべてがその後必ず発病するというわけではなく、多くの場合は免疫機能で結核菌の活動が抑え込まれるため、発病に至ることはありません。
ただ、結核は乳幼児や高齢者など免疫力の弱い人は発症しやすい傾向にあります。早く治すためにも周囲に感染を拡げないためにも、早期に治療を開始することが重要です。他の病気の可能性もあるので、咳が2週間以上続く場合などは早急に医療機関を受診しましょう。