ギャンブル依存症、治療のカギは「家族」にある!

2018/7/4

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

いくら借金をしても、職を失ってもギャンブルがやめられず、経済的・社会的・家庭的な問題に発展することのある「ギャンブル依存症」。このギャンブル依存症から回復するには本人の自覚・治療が第一ですが、それと同じくらい家族の関わり方も重要といわれています。その理由や、家族が受けられるケア、相談機関などについてご紹介していきます。

家族の資金援助では、ギャンブル依存症は治らない

ギャンブル依存症を治療するには、まず本人がギャンブル依存症ということを自覚し、その問題点を理解することが重要です。しかし、ギャンブル依存症は本人だけでなく、その周囲の人々を巻き込んでいく病気でもあり、家族が疲弊してしまうケースも非常に多いといわれています。そのため、家族自身もこの病気を理解し、正しい対処の仕方を学ぶことが重要です。

例えば、ギャンブル依存症の家族は「本人にお金を貸し、2度とやらないよう約束させる」という対応をすることが多いですが、実はこれは間違った対応です。周囲が尻拭いをすると本人は修羅場を見なくなるので、一時的に反省させることはできても根本的な対策にはならず、少し経った後にまたギャンブルを始めるようになります。これは「イネイブリング(enabling)」という、周囲からの協力が仇になる現象です。

ギャンブル依存症から抜け出すには、結局本人がギャンブルを手放す決心をしなくてはいけません。家族からの資金援助など支えてくれる全てのものをなくし、借金や失業といった問題に直面し、どうにもならない状況に追い込まれることで、本人はようやく自分の本当の問題と向き合い始めます。そしてここで初めてきちんと周囲の言葉に耳を傾け、依存症回復に向けての行動がとれるようになるでしょう。

ギャンブル依存症の家族向けの治療とは?

専門機関で行っているギャンブル依存症の人の家族を対象とした治療やケアとしては、以下のものがあります。

家族教室

ギャンブル依存症の正しい知識を身につけ、家族としての正しい対応や関わり方を学ぶのを目的とした集団精神療法です。同じギャンブル依存症の家族と知り合い、これまでの悩みや辛さを共有することで、依存者本人への強い不快反応を低減させる効果があるといわれています。

家族相談

「ギャンブル依存症の夫への対処に疲れた」「受診を勧めても本人が拒否する」など、ギャンブル依存症によって困っている家族向けの家族相談です。専門機関によって異なりますが、家族相談には大まかに以下の形式があります。

個別相談

同じギャンブル依存症でも、本人の状態や進行度、精神病の有無、親と同居中か別居中かなどの条件によって、適切な対応は異なっていきます。先ほど、ギャンブル依存症の治療では家族からの支援を断つことが重要というお話をしましたが、管理が必要な人をいきなり拒絶してしまうと、回復につながらないケースも存在するのです。
そのため、専門家と個別相談をすることで、その家庭に合った対処法を見つけていきます。

クラフト型プログラム

依存者本人が受診を嫌がっているケース向けのプログラムです。本人に治療を受けてもらうための方法について家族が学び、家族自身が回復するためのケアをしていきます。このプログラムを受けると、およそ6割の当事者が治療を受けるようになり、また家族の不安やストレス軽減、家族全体の結束力が強くなるといった治療効果が見込めます。

アラノン型プログラム

依存者本人のことを思うからこそ、愛をもって距離をおくという方法を学び、家族自身の回復や自立を促すプログラムです。家族の抑うつやイライラなどが軽減され、家族全体の結束力が強くなるといった治療効果が見込めます。

ジョンソン型プログラム

依存者本人に問題を直視させ、治療を受けてもらうよう、家族が準備をし直接対決するためのプログラムです。これによって当事者が治療を受けるようになる割合は3割程度で、本人の通院継続力がカギとなります。

ギャンブル依存症の家族の自助グループへの参加も有効

家族の自助グループとは、依存症者を家族にもつ人たちが困りごとを話し合い、お互いに悩みを協力し連携することで、相互に支え合う会です。ここでの交流を通じて、依存者本人や家族全体も良い方向へと変化します。ここでの他の家族がどう対応しているかを参考にするといいでしょう。

ギャンブル依存症の家族のための自助グループは「ギャマノン」といいます。ギャマノンの例会場は全国に130ほどあるので、インターネットでお近くの例会場を調べてみましょう。

まずはギャンブル依存症の相談機関へ

ギャンブル依存症の家族相談は、以下の公的機関でも実施されています。お困りの方は一度お問い合わせください。

  • 保健所
  • 精神保健福祉センター

おわりに:家族の適切な対処が、ギャンブル依存症からの回復につながる

基本的にギャンブル依存症から抜け出すには、依存症者を家族や周囲からの支援が受けられず、どうにもならない状態に一度追い込み、ギャンブル依存症という問題と向き合わせる必要があります。良かれと思ってやっていた資金援助は逆効果になってしまうので、それぞれの家庭に合った正しい対処法について、専門機関で学んでいきましょう。

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