脳卒中のリハビリは早く始めたほうがいい?リハビリ内容は?

2018/7/20

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脳卒中はある日突然、脳の血管が切れることなどから発症します。脳のダメージはそのまま身体のさまざまな機能を低下させる恐れがあるため、とても心配ですよね。そこで今回は、脳卒中になった場合のリハビリについて詳しくご紹介します。

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脳卒中のリハビリはいつから始めるのがベスト?

以前は、脳卒中後すぐに身体を動かすことは症状を悪化させることにつながるとされていました。しかし15年ほど前にガイドラインが見直され、現在では発症後すぐである急性期の頃からリハビリを開始することが推奨されています

これは寝たきりの状態が続くことで筋肉の衰えや関節が硬くなることなどから、運動する機能が衰える「廃用症候群」になる場合があるためです。廃用症候群になると、筋肉などが衰えるだけでなく、骨粗しょう症や呼吸器の感染症など、身体の内部にまで影響が及ぶ可能性があります。廃用症候群を防ぎ、早い段階でADL(日常生活活動)の向上や社会復帰を目指すためには、急性期からのリハビリが予後を大きく左右するといわれています。

急性期のリハビリで取り組むことは?

急性期に行うリハビリの目的は、身体機能の低下を防止することです。またリハビリは、発症から48時間以内に始めることが望ましいといわれています。その内容は症状によって異なりますが、基本的に急性期のリハビリは同じ体勢を避けるために「起こして、動かす」ことに重点を置いているといわれています。ただし、脳血管の状態を検査し、ベッドから頭を起こしても問題ないと判断された場合にできる範囲で行います。

たとえば、手足の関節を動かす、寝返りを打つ、座るなど、主にベッドまたはその周辺で行うことが基本とされます。また、背もたれのない椅子に両足をつけて座ってもらうなどの練習も行う場合があります。ただし発症直後は身体の機能を回復させることが最も重要であるため、無理のない範囲で進めることが良いとされています。

脳卒中の場合は骨折などと違い、損傷部位が同じであってもダメージの現れ方はそれぞれ違います。一人ひとりの回復スピードに合ったリハビリが大切です。

回復期ではどんなことをする?

急性期を終えて血圧や身体の状態がある程度落ち着いてきた頃に、回復期のリハビリを開始します。回復期のリハビリは、ADLの向上を目指し、食事、移動、入浴、排泄などを行い、自分ひとりで立ったり座ったりする動作や、杖などを使った歩行練習などを進めます。また下記の状況に応じて、以下のリハビリをすることもあります。

嚥下障害

上手く食べ物を飲み込めないなどの場合に、発声練習や喉への刺激などを通して、食べやすい姿勢や食事のペース配分などを考え、最終的には一人で食事ができる状態を目指します。

言語障害

上手く話せないなどの場合に、無理のない範囲で言葉を発する、歌を歌うなど、言葉が自然と出るような状態にしていきます。

運動障害

手が思うように動かせないなどの場合に、何度も腕を動かしたり、自分で動かしている感覚がないという人には電気刺激を使ってリハビリを進めていく場合もあります。他にも、ロボットに足などを支えてもらいながら歩行訓練を行う、身体のバランス感覚をもとに戻すなどの訓練も行うことがあります。

高次脳機能障害

また回復期には、症状に応じて高次脳機能障害を予防するリハビリも行うことがあります。高次脳機能障害は、物をどこに置いたか忘れるなどの記憶障害や、他の人から指示を受けないと行動できない、約束した時間に間に合わないなどの遂行機能障害など、日常生活を送る上で何らかの支障が出る状態のことを指します。

このリハビリではまず、その人に障害を認識してもらうことからスタートし、危険なく日常生活を送れるようにするにはどうしたら良いかなどを考えます。次に、物忘れなど記憶の曖昧さをメモなどを使って補うなど、症状に応じて工夫を重ねていくといわれています。

生活期のリハビリは自宅で取り組む

在宅で生活を送るようになる時期を生活期といいます。急性期、回復期は入院生活であるのに対し、生活期は自宅での生活になるため、退院するときが最も良い状態である傾向にあるといわれています。

生活期のリハビリの目的はこのような状態を防ぐために、これまでのリハビリで回復させてきた身体の機能を維持することです。そのため、これまでの入院生活で行ってきたリハビリを継続することや、外来や施設などでリハビリを行うことなどが重要だといわれています。

また最近では身体の機能を維持することに加え、QOL(生活の質)の改善が大きな役割をもっています。脳卒中になる前はできたことが今はできない、というようなことをなくし、脳卒中になる前の状態にまで回復させるような試みです。

病院によっては自宅訪問を行い、食事や入浴、精神的なサポートなどを行ってもらえる場合もあるため、その地域や身体の状態に合わせて自分に合ったリハビリを続けていくことが好ましいでしょう。

おわりに:脳卒中のリハビリは、早期開始が肝心!

脳卒中になった場合、48時間以内という早い段階でリハビリを行うことが、その後の生活のためにも重要だといわれています。症状によってできる内容は異なりますが、無理のない範囲でリハビリを進め、QOLの改善を図っていくことが望まれます。

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