記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/4
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肺サルコイドーシスは、全身のさまざまな臓器に小さな線維の塊ができる病気で、国の難病にも指定されています。今回は肺サルコイドーシスの症状や原因、治療法などをご紹介します。
肺サルコイドーシスは、目、肺、皮膚、心臓、肝臓、腎臓、骨、神経、リンパ節など、全身のあらゆる臓器に肉芽腫という小さな線維の塊ができる全身疾患です。高頻度で症状が現れる臓器としては、肺や胸部リンパ腺が80%程度で最も多く、眼が50%程度、続いて皮膚で20%程度みられるとされています。ただしその人によって症状が現れる臓器は異なります。
なお、肉芽腫といっても、悪性の腫瘍や遺伝によって発症するわけではありません。原因不明の病気ですが、常在菌であるアクネ菌などの微生物が感染することで、身体の免疫機能が過剰に反応して発症すると考えられています。ただ、自覚症状はほとんどなく、健康診断でのレントゲン検査で見つかることが多い病気です。
肺サルコイドーシスは男性よりも女性に発症しやすく、20歳代と50歳代以降に多くみられます。そして肺サルコイドーシスは難病のひとつで、人口10万人に数人程度の割合で患者がいるといわれています。
また、肺サルコイドーシスの患者は世界中にいますが、人種や地域の違いによって重症度や発症率が異なります。たとえばアメリカでは黒人の方が白人よりも高率でかかりやすく、重症になるといわれています。
軽度の肺サルコイドーシスの場合は自覚症状がほとんどなく、自然に治癒することが知られています。しかし重症度の高い肺サルコイドーシスの場合には、以下のような病気になる可能性もあります。
心臓の右心室拡大などを引き起こし、息切れや動悸、息苦しくて夜中に目が覚めるなど、さまざまな症状がみられます。
肺には呼吸を通して運ばれた酸素などが入る袋の肺胞があります。間質性肺炎とは肺胞のまわりにある間質という組織に炎症が起こり、その症状が進行した場合に引き起こされるものです。肺胞が縮んでしまうため、息切れや咳が出てくる場合があります。
心臓から肺につながっている血管の血圧が高くなる病気です。肺に流れる血液の循環が滞り、肺から体内へ流れる血液中の酸素量が少なくなります。そのため、少し動いただけで呼吸困難や息切れの症状が現れることがあります。場合によっては、入院治療が必要となります。
肺サルコイドーシスが肺にみられた場合、胸部X線検査で心臓と肺が接しているリンパ節や、気管の右側に位置しているリンパ節に腫大がみられる場合があります。リンパ節の腫大とはリンパ節が腫れている状態のことをいい、肺サルコイドーシスの場合には身体の中で腫大が起きているため、外側から触ってもわかりません。そのため、さまざまな検査を行い、診断を行うといわれています。
肺サルコイドーシスの診断において最も重要なことは、肉芽腫を見つけることです。肺サルコイドーシスの場合、経気管支的肺生検といって肺の一部をつまんで検査する方法が一般的です。
また気管支肺胞洗浄をすることもあります。これは酸素を取り入れる肺胞の洗浄を行うことで、細胞の総数やCD4陽性Tリンパ球という免疫細胞が増加していないかを調べる検査です。
ただし場合によっては、主に肺機能検査や胸部CT、また血液検査や心電図など、さまざまな検査を行うことがあります。またツベルクリン反応をみることも、診断の判断材料になります。過去にBCG接種を受けたり、結核菌に感染している場合には陽性反応を示しますが、肺サルコイドーシスにかかっている場合には、陰転化がみられるためです。陰転化とは過去にツベルクリン反応が陽性であっても、陰性反応がみられる場合のことをいいます。
ただし近年では結核菌への感染経験がない人も増えているため、肺サルコイドーシスを発症していない場合でも陰性となる人もみられるようになりました。そのため、あくまでツベルクリン反応による診断は参考程度に捉えると良いでしょう。
また肺サルコイドーシスのタイプは治療期間や治りやすさなどによって、主に以下の4つにわけられます。
一時的に症状がみられても、そのほとんどが自然治癒します。
2~5年の間、症状が続きます。
5年以上にわたって症状が継続します。
治療を続けても改善がみられず、肺線維症などに進行するなど、生活の質(QOL)の低下がみられます。場合によっては肺移植を検討することもあります。
肺サルコイドーシスの治療では、一般的にステロイド剤や免疫抑制剤などを使います。短期改善型の場合にはステロイド剤に高い効果が期待され、大抵は2ヶ月以内に改善がみられるといわれています。ここで改善が見込めなかった場合に、免疫抑制剤を使うこともあります。
ただし、軽度の肺サルコイドーシスの場合には自然治癒することも多いため、経過観察を選ぶ場合もあります。一方で日常生活に支障が出ているなど、重症度の高い場合にはステロイド剤などで治療を続けることが必要です。
なお、投薬の副作用として骨粗しょう症や糖尿病、また胃潰瘍などにかかる場合があるため、長期にわたってステロイド剤を服用する場合には、骨粗しょう症を防ぐ薬や胃薬なども同時に服用する場合があります。ただし、前述のように肺サルコイドーシスは自然治癒する場合が多く、治療を続けても改善がみられない難治例は約1割程度に留まっているといわれています。
肺サルコイドーシスは難病指定を受けていますが、その多くは自然に治ることの多い病気として知られています。自覚症状がないことも特徴のひとつなので、健康診断などで早期に発見し、治療していくことが大切です。