これって生理痛?卵巣嚢腫でお腹が痛くなることってあるの?

2018/7/12

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

女性特有の病気の一種「卵巣嚢腫」とは、どんな病気なのでしょうか。発症すると、生理痛のような腹痛を引き起こすことはあるのでしょうか。以降で解説していきます。

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卵巣嚢腫ってどんなもの?

卵巣は、子宮の左右両側に1個ずつある数cmから親指くらいの大きさの小さな臓器で、卵子を作りだし蓄える役割を担っています。「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」は、卵巣内に袋状のものができて水や粘液、血液、脂肪などが溜まることで発症し、ひどくなるとこぶし大以上に肥大することもあります。

卵巣嚢腫には大きく4つの種類があり、まず「皮様嚢腫(ひようのうしゅ)」(デルモノイド、類皮嚢胞、成熟嚢胞性奇形腫ともいわれる)では、袋の中に毛髪や油、骨など生殖細胞が分裂して成熟途中のものが混じりあって溜まります。「漿液性腺腫(しょうえきせいせんしゅ)」では卵巣から分泌される透明の液体(漿液)が溜まり、「粘液性腺腫」では多数の袋にゼラチン状の粘液が溜まります。

そして、「子宮内膜症嚢胞」(チョコレート嚢胞ともいう)は、子宮内膜症が原因で血液が溜まってかたまりができるものです。チョコレート嚢胞以外は原因が明らかになっておらず、誰にでも起こり得る病気とされています。

突然、下腹部に痛みが・・・これって卵巣嚢腫の痛み?

卵巣は身体の中でも腫瘍ができやすい臓器ですが、病気があっても多くの場合無症状であることから、「沈黙の臓器」ともいわれます。悪性化の危険もあるチョコレート嚢胞は子宮内膜症が原因で、激しい生理痛などを起こす場合もありますが、そのほかの嚢腫では自覚症状はほとんどありません

卵巣は身体の深い部分にあるうえ、普段から排卵に合わせて腫れたりしぼんだりを繰り返しているので気づきにくいといわれています。ただし、ある程度の大きさ(5~8cm以上)になってくると、下腹部が膨らんできたり、お腹の壁が引っ張られているような違和感や軽い痛みを感じることがあります。さらに大きくなると、嚢腫の根元がねじれたり(茎捻転)、破れたり(破裂)して急激な腹痛や吐き気、出血を起こし、ひどいときにはショックで意識不明に陥ることもあります。このような場合には緊急手術が必要となり、症状によってはねじれた卵巣ごと摘出しなければならなくなることがあります。

生理痛がひどいなど、気になる症状がみられたら婦人科へ!

卵巣嚢腫はほとんどが良性ですが、悪化すると大変危険な病気です。悪化を避けるのに何より大切なのは、早期発見です。定期的に子宮がん検診を受けている人は少なくありませんが、視診や内診だけで卵巣の状態まで正確に判断するのは困難なので、同時に超音波検査を少なくとも年に1回は受けることが推奨されています。ひどい便秘で超音波検査を受けたら嚢腫が見つかったという場合も少なくありません。

生理痛がひどい、だんだんひどくなっている、太ったわけではないのにお腹がぽっこりしているなど、体調に気になることがあれば、婦人科で検査を受けるようにしましょう。

おわりに:ほとんどの卵巣嚢腫は無症状。年に1回は超音波検査を受けるようにしよう

卵巣嚢腫には、子宮内膜症を原因とする激しい生理痛を起こすものもありますが、自覚症状がないものがほとんどです。しかし良性であってもサイズが大きくなれば、捻れたり、破裂することで強い腹痛を起こすこともあります。年に1回は卵巣の超音波検査を行うほか、気になる症状を感じたら早目に婦人科で検査するようにしましょう。

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