卵巣嚢腫で手術する場合って?どんな手術をするの?

2018/7/10

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

卵巣嚢腫は徐々に大きくなっていく腫瘍の病気ですが、基本的には良性腫瘍とされています。では、どんな場合手術を行う必要が出てくるのでしょうか。また、その際にはどんな手術が行われるのでしょうか。

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卵巣嚢腫で手術が必要になるのはどんなとき?

「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」は、卵巣の一部にできた袋状の腫瘍内に液体が溜まっていく病気ですが、小さいうちはほとんど自覚症状がありません。治療は、腫瘍の種類や大きさ、年齢、今後の妊娠・出産の希望の有無などを考慮して選択することが大切になります。

基本的に2~3cm程度の小さなものであれば、定期検査で経過を観察することになります。しかし5cm以上になると、捻転や破裂の可能性もあるため、手術を検討することになります。

また、卵巣嚢腫はある程度の大きさになると悪性化する可能性も考慮する必要があります。将来的に妊娠を希望する30代までの女性は、一般的に卵巣の正常部分を温存する手術を行いますが、状態や年齢に応じて腫れている方の卵巣を全摘出することもあります。また、進行して重症化してしまうと、子宮の全摘手術が必要となることもあり得ます。

卵巣嚢腫の手術はどんな方法でするの?

現在では技術が進み、嚢腫だけを取り除いて卵巣を残す「嚢腫核出術」が主流となっていますが、捻転などで卵巣が壊死していたり、悪性の可能性がある場合や40歳以上の場合には、腫れている方の卵巣を卵管ごと全摘する「付属器摘出術」が選択される場合もあります。卵巣や卵管はふたつあるため、片方の卵巣・卵管を取り除くことになっても、妊娠・出産は可能です。

なお、手術は多くの場合、小さな穴を身体に3~4個あけて行うことから身体への負担が小さい「腹腔鏡手術」で行われますが、嚢腫が大きい場合や悪性の場合には、より切除しやすい「開腹手術」が選択される場合もあります。入院期間は腹腔鏡手術で3-4日間、開腹手術で5-7日間が目安となります。退院後の静養期間については腹腔鏡手術では1週間程度、開腹手術では2週間から、人によりますが1ヶ月程度かかることもあります。

卵巣嚢腫の手術後、合併症が起こる可能性は?

手術の合併症には大量出血や感染、血栓症など様々なものがありますが、特に開腹手術の場合、手術後の傷が治る過程で本来別々にあるべき組織がくっついてしまう「癒着」が起こることがあります。癒着といえば腸管とお腹の中を包む腹膜が癒着することで腸管の動きが悪くなる「腸閉塞」が有名ですが、それ以外にも嚢腫摘出後に、摘出部と卵管が癒着することで卵管が閉塞してしまうこともまれにあります。ただし、卵巣嚢腫摘出術では傷自体が小さいため、そこまでリスクは高くありません。開腹手術では前述の腸閉塞が問題となることが比較的多いです。

一方、卵巣嚢腫が手術前から周囲の腸管、膀胱、尿管などと癒着している場合、手術で癒着箇所をはがすことから、これらの臓器に損傷が起こる可能性があります。これは子宮内膜症の卵巣病変であるチョコレート嚢腫によく認める状態であり、あまりに癒着が激しいと手術自体が困難となる可能性や、病変が一部残存する可能性もあります。他の臓器を損傷した場合はその場で縫合修復が必要となり、入院期間も長引くことになります。

また、閉経前に両側の卵巣を摘出する場合には、身体のほてりや気分の落ち込みといった更年期のような症状が出ることがあります。そのほか、両側の卵巣嚢腫の部分切除が行われた場合には、まれにではありますが、卵巣機能が低下する場合があります。

おわりに:手術の選択は症状や年齢などによって変わる。担当医とよく相談しよう

基本的には嚢腫が5cm以上になると、手術の検討が必要になってきます。手術には、卵巣を残すもの、残さないものがあり、方法としては負担の少ない腹腔鏡手術と開腹手術があって現在ではほとんどが腹腔鏡手術となっています。将来的な妊娠の希望の有無、症状の重症度や悪性度、年齢などによって、選択は変わってきます。担当医とよく相談して決めるようにしましょう。

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