漢方ってうつにも効果がある?うつで処方される漢方薬って?

2018/7/3

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

うつ病の治療法には精神療法や薬物療法などがあり、治療薬に「漢方薬が使用されること」もあります。そこで今回はうつ病に対して漢方薬が効くのか、漢方の視点からみた「うつ(精神疾患)」の捉え方などをご紹介します。

漢方はうつに効果があるの?

うつ病は症状の程度によって「軽症」「中等症」「重症」の3つに分かれています。そして、うつ病治療に漢方薬を使う場合、症状の程度などによって処方する目的が変わってきます。

軽症であれば漢方薬で改善できる場合もある

軽症うつ病とは苦痛を感じてはいるものの、対人関係や仕事上の機能障害はわずかな状態をいいます。この段階ではうつ病を改善するために漢方薬を処方する場合があります。

中等症~重症であれば漢方薬を補助に使用する場合もある

中等症うつ病とは、軽症と重症の中間に相当する状態で、重症うつ病とは強い苦痛を感じており、日常生活を送ることに支障を伴っている状態のことです。これらの段階であれば、西洋薬(抗うつ薬など)の効果を高めるために漢方薬を処方する場合があります。

漢方の視点からみた「うつ」って?

漢方(漢方医学)とは漢方的診断を行って、「証(しょう)」に合わせた漢方薬を処方する医療のことです。この「証」とは簡単にいうと、「自分の状態・体質のこと」です。それでは漢方の視点から見て、うつとはどういった状態なのでしょうか。

うつは「心の不調」によって起こるもの

西洋医学ではうつ病を「脳の病気」として捉えることが多いですが、漢方医学の中では「心の不調」として捉えています。また、漢方では心と身体はお互いに関係していると考えているため、精神的トラブルを全身の問題として捉え、「証」に合わせた治療を行っています。

漢方薬には「副作用がない」は間違い

ただし、「漢方薬に副作用がない」という認識は誤りです。確かに漢方薬は生薬(自然にある植物や鉱物など)を原料に作っていますが、使い方を間違っていたり、「証」が合っていなかったりすれば、身体に悪影響を及ぼす可能性もあるので注意しましょう。

うつを漢方で治す場合、どんな漢方薬が処方される?

漢方薬は薬効や剤形などによって、いくつかのグループに分けることができます。このうち精神疾患の改善が期待できる漢方薬には、和解剤、理気剤、瀉下剤などがあります。

和解剤
臓腑の不調を整える薬(加味逍遥散や柴胡加竜骨牡蛎湯など)
理気剤
気を巡らせる薬(半夏厚朴湯や柴朴湯など)
瀉下剤
排便を促す薬(大承気湯や調胃承気湯など)

それではここで紹介した漢方薬がそれぞれ「どのような薬なのか」を確認してみましょう。

加味逍遥散(かみしょうようさん):食欲が落ちている人、疲れている人

加味逍遥散は体力が中程度以下の方で、のぼせや肩こり、疲れなどの身体的症状、不安やイライラといった精神的症状がある場合に処方されます。主に月経異常や更年期障害などの女性特有の病気に対して処方されますが、うつ病にも効果があるとされています。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):不安や緊張などが強い人

柴胡加竜骨牡蛎湯は体力が中程度以上あって、精神不安や抑うつ、イライラ、不眠といった精神的症状に悩まされている方に処方されます。この薬にはイライラを鎮める作用があり、「脳の興奮によって生じている不眠を改善する」という働きが期待できます。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):のど元に違和感のある人

半夏厚朴湯は体力が中程度あって、のど元の違和感、不安感などがある方に対して処方されます。また、咳や声のかすれなどを伴う方にも使われます。これらは「気」の巡りが悪くなったからだと考えられるため、「気」の巡りをよくするために半夏厚朴湯が使われます。

柴朴湯(さいぼくとう):のど元に違和感がある人

柴朴湯は「半夏厚朴湯」と「小柴胡湯(しょうさいこんとう)」を合わせた薬であり、のど元に違和感や閉塞感を覚えている方に対して処方されます。また、動悸やめまい、吐き気などを伴う方で、さらに不安神経症やせきを伴う場合にも処方されます。

大承気湯(だいじょうきとう):便秘がちの人、おなかが張っている人

大承気湯は体力があって、便秘やおなかの張りに困っている方に対して処方されます。便通を促して、それによってイライラや不安といった精神的症状を和らげる作用も期待されます。そのほか、高血圧症や自律神経失調症などの病気に使用されることもあります。

調胃承気湯(しょうじょうきとう):慢性的に便秘がちな人

調胃承気湯は体力が中程度あって、慢性的な便秘をはじめ、便秘に伴う頭重感、のぼせ、湿疹(皮膚炎)、食欲不振などがある場合に処方されます。これらは「気」の流れが悪くなったことが原因だと考えられるので、「気」の停滞を解消して排便を促していきます。

おわりに:うつ病治療に漢方薬を使う場合もある!

うつ病を治療したり、治療を補助したりするために、漢方薬を使用する場合もあります。なお、漢方薬の使用はあくまでも治療の一手段であり、医師と相談して自分に合った治療法に取り組むことが大切です。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

うつ(49) 効果(67) 漢方薬(76) 漢方(40) 柴胡加竜骨牡蛎湯(4) 加味逍遥散(7) 処方(8)