記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
近年の研究により、HIVの治療技術は複数の薬を服薬し続ければ健康な人と変わらない生活を送れるほどに進歩しました。
しかし、継続的な服薬にはわずらわしさもありますよね。そもそも、なぜ一生薬を飲み続けなくてはいけないのでしょうか?以降では、HIV治療薬を一生涯にわたって飲み続けることの重要性について、解説していきます。
現在、HIV治療薬として使用されている抗HIV薬にはHIVウイルスを死滅させる効力はなく、あくまでHIVウイルスの増殖を抑えるためのものです。そのため、抗HIV薬の服用をやめてしまうと、HIVは再び増殖を始め免疫機能を低下させてしまいます。ウイルスの増殖を抑え続けるためには、継続した抗HIV薬の服用が欠かせません。
また、HIVが増殖しないようにするには、HIVに対し常にある程度の抵抗力を持っておかなくてはいけません。HIVに抵抗するためには、医師の指示する用法・用量の抗HIV薬を継続的に服用し、血中に常に一定の抗HIV薬成分濃度が保たれるよう管理する必要があるのです。
抗HIV薬の服用ペースは、その患者の体質や状況に合わせて、薬の成分が常に一定以上の血中濃度になるように計算されています。しかし血液中の薬効濃度(有効血中濃度)が一定の基準を下回ったとき、HIVウイルスは服用中の抗HIV薬に対して耐性を獲得してしまいます。
このため、薬を飲み忘れて血液中の薬効濃度が薄くなりすぎてしまうと、いま飲んでいる薬が効かなくなり、治療に使える抗HIV薬の選択肢が狭くなってしまうのです。
以下に、もし抗HIV薬を飲み忘れてしまったときの対処法を「予定時刻から少し過ぎた場合」と「予定時刻を大幅に過ぎた場合」の2パターンに分けてご紹介します。
しっかりと読んで、飲み忘れてしまったときのために覚えておいてください。
服用する治療薬の種類によっても異なりますが、抗HIV薬が原因で起こる副作用としては、以下のような症状が挙げられます。
なお、抗HIV薬の服用によって上記のような副作用が出ても、身体が1~2か月ほどで薬を分解する酵素を増やすため、服用を続けるうちに軽減されていくのが一般的です。
ただし、薬の種類や患者の体質によっては、発疹や消化器官の副作用から命にかかわる状態にまで重症化するケースもあります。抗HIV薬の服用後に気になる症状が見られたら、必ず主治医に相談してください。
現在の抗HIV薬はあくまでウイルスの増殖を抑えるものであり、ウイルスを殺したり排除する効果はありません。薬の服用を途中でやめると、ウイルスの増殖をゆるすだけでなく、薬への耐性を獲得させて後の治療が困難になるリスクもあります。できるだけ長く、健康な人と変わらない生活を送るためにも、HIVの治療薬は一生涯欠かさず、継続的に飲む必要があると覚えておきましょう。