卵巣嚢腫予防は定期検査がおすすめ!その理由は?

2018/7/9

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

卵巣嚢腫は、子宮の両側にある卵巣という親指大の組織に起こる嚢腫です。卵巣嚢腫のほとんどは良性腫瘍と言い、身体に悪影響のない腫瘍ですが、まれに悪性化する腫瘍があります。
ここでは、卵巣嚢腫の定期検査の目的について解説しています。

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卵巣嚢腫で定期的な検査が欠かせない理由は?

卵巣嚢腫は体質や生活習慣に関係なく、誰にでも起こりうる疾患です。また、卵巣は腹部の奥にあり、病気になっても自覚症状が現れにくく、沈黙の臓器とも呼ばれています。そのため、卵巣嚢腫の予防や早期発見には、定期検査がおすすめです。

卵巣嚢腫は、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。卵巣は、身体の奥に位置していて自覚症状が現れにくいことに加え、もともと排卵周期に合わせて伸び縮みする臓器であるため膨らみができてもわかりにくいのです。

ところが、卵巣嚢腫が進行して肥大したままになると、腹痛や腰痛、頻尿や便秘などの自覚症状が起きることがあります。また、卵巣の根本が回転してねじれてしまう「茎捻転」を引き起こす可能性があります。この「茎捻転」は激痛を伴い、非常に危険な病気です。

茎捻転の状態まで進行してしまうと、卵巣摘出の手術を行う必要が出てきます。特に、自覚症状が全くないまま、突然激痛が起こって初めて茎捻転だと気づく方もいます。

このため、卵巣嚢腫の定期検査は非常に重要なのです。

卵巣嚢腫の種類

卵巣嚢腫の種類は、4つに分けられます。

名称 概要
漿液性嚢腫
  • 思春期以降に起こる。年齢を問わず、卵巣嚢腫で最も多い
  • 卵巣から分泌される漿液という液体が溜まったもの
粘液性嚢腫
  • 閉経後の女性に多い
  • ゼリー状の粘液が溜まったもの
成熟嚢胞性奇形腫
  • 20〜30代の女性に多い
  • 内部に皮膚組織・毛髪・脂肪などの組織が見られる
  • 皮様性嚢腫とも呼ばれる
チョコレート嚢腫
  • 20〜30代の女性に多い
  • 子宮内膜症が卵巣の内部で発症したもの
  • 月経の度に血が溜まるため、チョコレート色になる
  • 40代以降で大きさが4cm以上の腫瘍は悪性化しやすい

いずれの場合も、投薬などで治療することはできませんので、手術で該当部位を切除することになります。

また、チョコレート嚢腫の場合、生殖年齢の女性では嚢腫自体が悪性化することはほとんどありませんが、嚢胞内に血液が溜まることで卵巣内の血流が阻害されたり、周辺組織が癒着することで排卵障害につながる可能性があり、不妊の原因の一つとなります。

こんな症状が出たら要受診

  • 太っていないのに、下腹部の膨らみが目立つようになった
  • 下腹部痛や腰痛が頻繁に起こる
  • 下腹部にしこりのような膨らみがある
  • 経血の量が急に増えたり、月経痛が激しくなった

このような症状は、卵巣嚢腫の兆候です。これらの症状が出てきたら、一度検査を受けるのがおすすめです。

どんな検査をするの?

卵巣嚢腫の検査では、診察や超音波診断、MRI・CTスキャンなどを行います。

内診
卵巣の大きさ、形、癒着などを確認します。
超音波診断
経腟超音波(エコー)診断により、卵巣や子宮の状態を画面で観察します。
MRI・CTスキャン
画像診断により、嚢腫の組成を類推し、良性・悪性の判定を行います。
※通常、放射線被曝のないMRIを使用することが多いですが、ペースメーカー装着などでMRIの使用できない方にはCTを行うこともあります。

卵巣嚢腫を放置するとどうなるの?

卵巣嚢腫を放置していても、自然にしぼむことはありません。身体に悪影響を起こす場合は主に3パターンあり、肥大化して腹痛や腰痛を引き起こす場合、腫瘍が悪性化(がん化)する場合、茎捻転を起こす場合です。

特に、茎捻転を引き起こすと激しい痛みや吐き気・出血を伴い、ひどい場合はショックで意識不明に陥ることもあります。また、捻れにより卵巣に血液がいかなくなり、卵巣が壊死する危険性もあります。

卵巣嚢腫の治療って?

卵巣嚢腫の治療は、該当部位を切除する方法となります。進行の度合いによって、3つの範囲を選択します。

  • 嚢腫の部位だけを切除する
  • 片側の卵巣をすべて摘出する
  • 片側の卵巣と卵管をすべて摘出する

7cm以上に肥大化した卵巣嚢腫は茎捻転を引き起こすリスクが高いため、原則として摘出することになります。ただし、卵巣は妊娠に関わる臓器であるため、摘出の範囲は可能な限り患者さんの意志が尊重されます。

検査はどのくらいの頻度で受ければいい?

卵巣嚢腫の検査は、早期発見のための検査と、発見後の経過観察が必要です。

理由 ポイント
早期発見のため 年に1回の定期検診を行う

子宮がん検診の際に卵巣の超音波診断を受けるとよい

経過観察 3〜4ヶ月に1回の定期検診を行う

子宮がんへの悪性転化がないか確認する

20歳を超えると、行政から子宮がん検診の通知が来ます。この検査は2年に1回ですが、ぜひ卵巣の超音波検査も一緒に行いましょう。卵巣嚢腫の検査・早期発見という意味では、1年に1回の定期検診を受けることが望ましいです。

また、定期検診の時期ではなくても、急にお腹だけが太った、腰痛や生理痛がひどくなった、といった自覚症状が現れた場合は早めに婦人科を受診しましょう。4cm以下の良性の卵巣嚢腫であれば即手術とはなりませんが、悪性転化(がん化)を見逃さないためには定期的な受診が必要です。

おわりに:卵巣嚢腫は定期検診で早めに発見しよう

卵巣嚢腫は、その多くが良性の腫瘍です。しかし、嚢腫自体が悪影響を及ぼすことがなくても、肥大化して腰痛や腹痛、茎捻転を引き起こすことがあります。また、チョコレート嚢腫であれば、年齢を重ねるごとに悪性転化の危険性が高まります。

ぜひ、卵巣の超音波検査などの定期検診を受診し、大切な臓器である卵巣を守りましょう!

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