記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/9 記事改定日: 2019/7/22
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
結核の治療法は以前と比べて大幅に進歩し、今では死に至る病気ではなくなりつつあります。ただ、治療の上では数種類もの薬を服薬する必要があるのですが、なぜ何種類も飲まなくてはいけないかご存知でしょうか?
この記事では、結核の薬の服薬上の注意点などをお伝えしていきます。
肺結核(結核)は、結核菌とよばれる菌が体の中に入ることによって起こる感染症です。
昔は多くの人の命を奪う病気でしたが、抗結核薬が開発された現在では、薬をしっかり飲み続けることで治すことができます。また、抗結核薬を飲む期間も、以前は2~3年だったものが、6〜9か月ほどにまで短くなりました。
とはいえ、風邪のときなどよりは遥かに長い期間、薬を飲み続けなければなりません。
飲まなければいけない薬の種類も3種から4種と多いのですが、これは結核菌には活動周期の違うさまざまな種類の菌がいるためです。
1日に1回活動する菌もいれば、2か月に1回しか活動しない菌もいます。これらすべての菌にアプローチするためには長い期間と薬のバリエーションが必要なのです。
結核の初期には、4剤あるいは3剤の薬を飲み、活発に動いている分裂増殖菌を治療していきます。2〜3ヵ月後には半休止菌や休止菌など、あまり活発に動かない菌が残るので、これらをイソニアジドやリファンピシンで治療していくという流れが一般的です。
このように抗結核薬をしっかり服用することで、かなり高い確率で結核の再発が防げます。
抗結核薬は結核の治療に高い効果を発揮してくれますが、ほかの薬と同じように副作用はあります。
なおほかにも、視力障害や手足のしびれ、耳鳴りなどが起こる可能性があります。
副作用が治まってきたら様子を見て薬を再開していきますが、薬の種類や飲む量、タイミングなどは医師の判断で慎重に決定します。以前もらった薬を自己判断で再開しないでください。
また、副作用があったからといって、自己判断で薬をやめるのは危険です。必ずかかりつけの医師に相談してください。
結核の症状が改善してきたからといって、自己判断で薬の服用をやめてはいけません。
何日も薬を飲まない日があったり、薬がまだ残っているのに飲むのをやめてしまったりすると、結核菌が薬に抵抗力をもってしまう場合があります。
現在治療薬の主流となっているイソニアジドとリファンピシンという2つの薬に、結核菌が耐性をもってしまった症状を「多剤耐性結核」といいます。多剤耐性結核になると、治療は極めて困難になり、より強い薬を長く飲み続けなければならなくなるのです。
それだけでなく「ずっと完治しない」「再発しやすくなる」、最悪では「死に至る」ケースもでてきてしまいます。
また、結核は感染症ですから、本人ばかりではなく周囲の人にも危険を与えてしまいかねません。
結核の治療中に薬を飲み忘れてしまったら、その日のうちに気づいたのであればすぐに忘れた分を服用しましょう。気づいたのが翌日だった場合、飲み忘れた日の分には手をつけず、その日の分から服用を続けてください。
上でも説明しましたが、結核は3~4種類の薬を6~9か月間に渡って毎日欠かさず内服する必要があるので、飲み忘れも起こりやすいです。服薬手帳などを利用して毎日忘れずに服用するよう心がけましょう。
結核の治療中の人は、お住いの地域の保健所や通院先の病院などで内服状況を確認する「DOTS(直視監視下短期化学療法)」がすすめられているので積極的に利用してください。
肝臓に負担がかかるので飲酒は控え、何か体調の変化を感じたときはできるだけ早く病院に相談しましょう。
結核は、複数の薬を6〜9か月の間飲み続ければ治療できる病気になってきています。肝機能障害やアレルギー反応などの副作用もありますが、自分の判断で薬を飲まなくなってしまうと、結核菌が薬への耐性をつけてしまい、完治が難しくなってしまいます。
副作用が出たときでも、自己判断でやめないようにし、必ず医師に相談しましょう。