アレルギー性鼻炎で咳こむことがあるって本当?悪化は防げる?

2018/7/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

近年、アレルギー性鼻炎や喘息などといったアレルギー疾患が増加傾向にあるといわれています。そこで今回はアレルギー性鼻炎と咳との関係性や、日常生活において気を付けることなどをご紹介します。

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アレルギー性鼻炎で咳が止まらなくなるのはなぜ?

気道には鼻腔や喉頭などといった上気道と、気管支や肺などの下気道があります。一般に上気道では体内に取り入れた空気の加湿や小さなゴミなどを排除し、下気道では気道に生えている線毛によって身体の異物を捕まえて外に吐き出すはたらきがあります。

アレルギー性鼻炎は上気道で起こるのに対し、喘息は下気道で起こることが知られています。アレルギー性鼻炎と喘息は全く関係性がないと思われがちですが、このように繋がった1つの気道で起きており、どちらもアレルギー性による炎症で引き起こされることなどからも密接な繋がりがあるといえるでしょう。

ある研究では、「アレルギー性鼻炎を発症すると、咳や喘息を引き起こす可能性が約3倍高くなる」という報告もあります。その原因のひとつとして、アレルギー性鼻炎の症状である鼻づまりがみられた場合に口呼吸をすると、乾燥した空気や冷気が気管に入っていく可能性があることが指摘されており、気管収縮を起こす場合があると考えられています。

また鼻・肺反射といって、鼻の刺激が肺の収縮を引き起こす場合もあります。アレルギー性鼻炎を起こす上気道と喘息を起こす下気道はつながっているため、連動してこれが引き起こされているといえるでしょう。

そしてアレルギー性鼻炎となった場合、咳喘息も併発する場合があります。咳喘息とは喘息の特徴である「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」という喘鳴がみられない場合の症状を指し、喘息の前段階の状態といわれています。実際に咳喘息の約3割が、数年のうちに喘息を発症することが知られています。このようなことからも、アレルギー性鼻炎の治療をする際には喘息の治療も同時に行うことで、どちらも軽快していくといわれています。

鼻炎と咳の症状を悪化させないためにできることは?

アレルギー性鼻炎と喘息は相互に影響しており、関係性が深いことが指摘されています。そのため、日常生活においても注意する点が共通しているといわれています。普段の生活で気を付けることとしては、主に以下のようなものが考えられます。

アレルゲンを取り除く

畳や布団などは、アレルゲンとなるダニなどが特に発生しやすい場所といわれています。毎日掃除機をかける、布団や枕などの寝具をこまめに洗うなどして原因物質を取り除きましょう。

温度差や気候などの影響を考慮する

室内外で5℃以上の温度差があると喘息の発作が起きやすいといわれています。冷暖房のかけすぎに注意し、外出する際は上着を持参して温度管理をするなど、極端な温度変化に気を付けましょう。上着の持参はもちろん、発作止めなどの薬を準備して外出しましょう。なお、このような理由から、9月~1月、また5月に咳の症状が悪化しやすいといわれています。

前触れの症状に注意する

大人の場合には、空咳や疲労、また微熱などの症状が喘息発作の前触れとしてみられることがあります。また乳幼児の場合には、涙目になる、落ち着きがなくなるなど、何らかの症状が現れる場合があります。このような症状がみられた場合には、早い段階で薬を服用しましょう。

飲酒を控える

アルコールを摂取すると、体内でアセトアルデヒドに分解されます。ただし日本人の約半数はアセトアルデヒドの分解酵素が活発にはたらかないため、体外に排出されにくいといわれています。このアセトアルデヒドはアレルギー性鼻炎の原因物質であるヒスタミンも放出するため、気管が収縮し、発作を引き起こしやすくなると考えられています。できるだけ飲酒を控え、治療に専念することが望ましいでしょう。

煙草を控える

日本の喘息患者の喫煙率は諸外国よりも高く、約29%という報告もあります。しかし煙草を吸うことが気道の炎症を悪化させ、肺の老化を早めることにつながるといわれています。また、薬の効果を弱めるという作用もあります。身体の健康のためにも、煙草は控えましょう。

おわりに:アレルギー性鼻炎と喘息には、密接な関係がある!

アレルギー性鼻炎と喘息は同じ1つの気道で起きているため、日常生活を送る上で注意する点が共通しています。また治療においても同時に進めていくこと効果が得られやすいという報告もあります。同時に発症した場合にも、適切な治療でどちらの病気も軽快していくように努めましょう。

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