記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
医療用麻薬というと、聞きなれない方もいるかもしれません。しかしがん治療において医療用麻薬は欠かせないものになっているといわれています。そこで今回は、医療用麻薬の副作用や使用における注意点などをご紹介します。
「医療用麻薬」は、がんの痛みをコントロールするために使われる薬です。
身体の中には「β‐エンドルフィン」という医療用麻薬と同じはたらきをもつ物質があります。このβ‐エンドルフィンは脳に痛みを伝える神経のはたらきを抑えて、強力に痛みを抑える効果があることで知られています。一般的な解熱鎮痛薬が主に痛みが生じている部位に直接はたらきかけて痛みを抑制するのに対し、β‐エンドルフィンや医療用麻薬は痛みを伝える脳や脊髄の神経などにはたらきかけ、痛みを抑える効果が期待できると考えられています。
また、医療用麻薬は使う量に上限がないため、痛みに応じて量を調節できることが特徴のひとつです。さらに使う量によって寿命が縮まるなどということもないといわれています。
代表的な医療用麻薬は、モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなどが挙げられます。中でもモルヒネが中心的な薬として知られ、粉薬や錠剤、また座薬や注射剤など、さまざまな種類があります。医療用麻薬は痛みの程度によって使い分けられ、副作用の問題などから薬を変えて使用を続ける場合もあるといわれています。
また医療用麻薬は、「麻薬及び向精神薬取締法」によって国から医療用に使用が承認されているのに対し、覚せい剤などの麻薬は同じ法律上で使用や所持、輸出や製造などが禁止されています。また医療用麻薬は有効性や安全性が確認され、痛みを取り除くために使用されるため、医師の指導の下で正しく使用することが求められています。一方で覚せい剤などの麻薬は快楽のために不正に使用され、妄想や幻覚などを引き起こすことなどにも違いがみられます。
医療用麻薬の主な副作用としては、以下のものが挙げられます。
医療用麻薬を使うことで、多くの患者さんにみられる症状といわれています。また軽快も期待できないため、下剤を併用するなどの対処を行います。下剤の種類も、患者さんの排便の回数や便の状態などをチェックして処方する必要があります。
医療用麻薬を増量した場合や飲み始めにみられる症状のひとつです。数日のうちに軽快することで知られていますが、場合によっては吐き気を抑える薬なども処方するといわれています。
一般的に適切に医療用麻薬を使う場合には、ほとんどみられない症状といわれています。ただし、過剰に投与を行った場合や急速に体内へ投与した場合には起こる可能性のある症状です。
医療用麻薬を増量した場合や飲み始めに多いといわれる症状ですが、数日以内に治まることも特徴のひとつです。ただし強い眠気があり、痛みもない場合には医療用麻薬を過度に投与している可能性があるため、減量を行うといわれています。
また麻薬といっても覚せい剤などとは異なり、正しい医療目的で使った場合には依存性が起こりにくいといわれています。医療用麻薬による依存は500人に1人以下でしか認められておらず、医師の指導なく、痛みをもっていない方が薬を乱用した際にみられるといわれています。
医療現場では、主に下記の項目をもとに医療用麻薬が使用されているといわれています。ただし医師との相談の下であれば、必ずしもこの項目にあてはまらない場合もあります。
そのため、自己判断で服用を中止することや、医師の許可なく多量に服用することは避けましょう。突然服用を止めることで、禁断症状が現れる場合があります。禁断症状とは、薬が突然身体に入ってこなくなることで変化に対応できず、腹痛や吐き気、イライラする、呼吸が速くなるなどといった症状がみられることをいいます。
通常は医療用麻薬の量に上限はないとされていますが、一人ひとりに合った薬の量があるため、勝手な判断で多く服用した場合に有害な症状が現れることがあります。また、子供の手の届かない場所に保管する、決められている時間に服用できない場合は医師へ相談するなど、必ず医師の指導の下で服用するようにしましょう。
覚せい剤などの麻薬と違い、医療用麻薬はがん治療で生じる痛みを少なくするために必要なものです。ただし、必ず医師の指導の下で使用するようにし、自己判断で服用を中止したり、多量に服用したりしないようにしましょう。