記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/13 記事改定日: 2019/7/19
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
結核を発症すると咳や血痰などの症状が現れるといわれますが、発症するまでの潜伏期間はどれくらいなのでしょうか?また、結核菌に感染すると必ず発症し、周囲に感染を広げてしまうものなのでしょうか?
肺結核(結核)は過去の病気ではなく、現在も年間で1万人を超える感染が報告されている現代の病気です。
結核は感染したからといって、すぐに発症するわけではありません。成人では半年から2年ほどの潜伏期間があり、発症するまでは静かに身体の中で隠れています。
体力が落ちたり別の疾患で体調を崩しているときに発病をしますが、なかには何十年も経過してから発症する人や一生発症せずに過ごす人もいます。
発症すると、咳や痰、微熱といった風邪に似た症状から、血が含まれた痰、食欲低下、体重減少などがみられるようになります。
成人に比べると、小児での潜伏期間はやや短く、高齢者では発症しても咳や痰といった明らかな症状がでないこともあります。そのため高齢者では、原因不明の食欲低下や体重減少がきっかけで病院を受診したときに、結核の感染が発見されることもあります。
結核は、感染している人の咳やくしゃみ、唾液などによって空気中に吐き出された結核菌を吸い込むことで感染(空気感染)し、感染した場所で炎症を起こして組織を壊していきます。
おもに肺で病巣をつくりますが、病状が進むと肺の組織が壊されて肺に穴が空いた状態になり、結核菌がますます繁殖していきます。そこから症状が進むと呼吸困難に陥り危険な状態になることもあります。
また、結核菌が血液やリンパ液を通って広がっていくと、全身の骨や腸、腎臓、脳など、さまざまな臓器でも病巣をつくることがあります。
結核菌は感染したとしても、8割の人は発病することなく一生を終えます。
これは免疫の作用によって肺に感染した結核菌が「乾酪壊死」と呼ばれる硬い殻の中に閉じ込められて眠った状態となるためです。
残りの2割の人は加齢や体調不良などによって免疫力が低下したことをきっかけに、閉じ込められて結核菌の活動が再燃して発病すると考えられています。
結核菌は潜伏期間が半年以上と長いですが、潜伏期間中の肺の中の結核菌は硬い殻の中に閉じ込められた状態であるため体外へ排出されることはなく、周囲へ感染を広める心配はありません。
結核を発病すると次のような症状が現れます。
一般的に結核といえば、咳や痰などの呼吸器症状を思い浮かべる方が多いと思いますが、高齢者などは呼吸器症状がほとんどないことも多く、「なんとなく元気がない」「活気がなくなった」という活動性の低下のみが現れることもあります。
思い当たる症状や状態の変化があるときは、できるだけ早く医療機関に相談しましょう。また、咳がひどいときなどは周囲に感染させてしまうリスクが高い状態ですので、電話などで症状を伝え、どのように受診すればいいか事前に相談するとよいでしょう。
肺結核は空気感染をする病気のため誰しもが感染する可能性があります。
感染したからといって必ず発病するわけではなく、感染から発症までの期間には個人差がありますが、症状がはっきりでないこともあるので、発病したのを知らずに周囲に感染を広げている可能性もあるのです。
周囲に感染を広げないためにも、気になる症状があるときは早めに病院を受診し、ただの風邪のときでも、咳をするときは口元を押さえる咳エチケットを徹底し、習慣づけるようにしましょう。