妊娠中に卵巣嚢腫ができることはある?見つかったら手術するの?

2018/7/11

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

卵巣嚢腫はある程度の大きさになるまでは経過観察となるのが一般的です。では、妊娠中の卵巣嚢腫はどのように治療を進めていくのでしょうか。
この記事では、妊娠中の卵巣嚢腫の治療と診断方法について説明していきます。卵巣嚢腫の特徴とあわせて、きちんと理解しておきましょう。

妊娠中に卵巣に腫瘍が・・・これって卵巣嚢腫なの?

卵巣は「沈黙の臓器」と呼ばれ、何らかの病気になっても自覚症状が起こりづらい臓器です。腫瘍ができても、ある程度のサイズになるまでは気づかれず、妊娠中に超音波検査を受けて発見されることもあります。

妊娠初期にみつかる腫瘍は必ずしも卵巣嚢腫とは限りません。妊娠初期に多くみられる腫瘍にルテイン嚢胞と呼ばれる良性の腫瘍があります。ルテイン嚢胞は妊娠初期に分泌されるhCG(絨毛性ゴナドトロピン)というホルモン分泌が原因です。
hCGは、胎盤の絨毛組織から分泌され、卵巣を刺激してエストロゲンとプロゲステロンの分泌をうながし妊娠を継続させます。通常hCGによる卵巣の刺激は徐々に減っていくため、胎盤が形成される妊娠16週ごろにはルテイン嚢胞も小さくなったり消失したりしていきます。しかし、ある程度の大きさで残存してしまった場合は、卵巣と子宮をつなぐ靭帯がねじれる茎捻転を起こしたり、妊娠時や分娩の際に破裂するリスクがあります。
主治医と治療方法や治療の時期など方針を相談していくことになるでしょう。

妊娠中の卵巣嚢腫はどうやって診断するの?

卵巣嚢腫であったときは、卵巣の中にたまっている内容物によって以下の4つに分類されます。

漿液(しょうえき)性嚢胞腺腫
サラサラした水のような液体がたまっているもの
粘液性嚢胞腺腫
ネバネバと粘液性の液体がたまっているもの
皮様(ひよう)嚢腫(成熟嚢胞性奇形腫)
歯や髪の毛、脂肪といった組織がたまっているもの
チョコレート嚢腫(子宮内膜症性嚢胞)
本来は子宮の内側にできる子宮内膜が、あちこちにできて月経サイクルに合わせて出血を繰り返します。チョコレート嚢腫は、卵巣に子宮内膜ができて出血し、血液がたまっている状態です。

血液や、脂肪、髪の毛が含まれて腫れている皮様嚢腫やチョコレート嚢腫は、超音波検査で卵巣嚢腫と判断ができます。しかし、そのほかは超音波検査だけでの判断は難しくなるため、MRIで成分を分析します。MRIはCTと異なり放射線は使用せず、妊娠14週以降で造影剤を使用しなければ妊娠中も用いることができます。また、血液検査で良性かどうかの検査も行います。

検査の結果卵巣嚢腫だったら、妊娠中でも手術するの?

卵巣嚢腫は、小さなうちは経過観察とすることもありますが、ある一定以上の大きさになると手術をすることが一般的です。医療機関の多くは直径5センチを基準としているといわれています。卵巣嚢腫は大きくなると、卵巣と子宮をつなぐじん帯がねじれる卵巣嚢腫茎捻転(らんそうのうしゅけいねんてん)が起こったり、卵巣嚢腫が破裂して激しい痛みを生じることがあります。

経過観察中でも、予想以上に大きくなってきたときや自覚症状があらわれたとき、悪性の可能性がみられたときなどは、方針変更をして手術をすることもあります。手術は妊娠14週から20週くらいで、子宮の膨らみの程度が低い状態で行われます。

おわりに:妊娠中の卵巣嚢腫の治療は、医師と相談しながら進めていこう

卵巣は腫瘍ができやすい臓器であるにもかかわらず、自覚症状はほとんどあらわれない「沈黙の臓器」です。妊娠初期にみられる腫瘍としてルテイン嚢胞があります。ルテイン嚢胞は胎盤ができる頃には消失してしまう人もいますが、卵巣嚢胞はサイズが小さくなるということはありません。いずれも、妊娠中でも手術が必要になることもあります。放置することで茎捻転や卵巣破裂のリスクもありますから、医師と相談しながら不安な点をひとつひとつ確認をして治療を受けていきましょう。

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