卵巣嚢腫は自覚症状がないのはなぜ?どうすれば予防できる?

2018/7/10

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

卵巣の一部に袋状の嚢胞が発生し、何らかの液体が溜まってしまう「卵巣嚢腫」。この卵巣嚢腫は自覚症状がない病気ともいわれますが、なぜ目立った症状が現れないのでしょうか。どうすれば、予防することができるのでしょうか。

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卵巣嚢腫ってどんな病気?

女性の体にある卵巣は、2~3cmのクルミのようなサイズです。この卵巣にできた腫瘍の総称を卵巣腫瘍といい、卵巣嚢腫は卵巣腫瘍のひとつです。卵巣嚢腫は、そのほとんどが良性で、10代から中年期以降まで幅広い年代にみられます。

卵巣嚢腫は袋状の嚢胞の中に、何かの物質がたまって膨らんでいる腫瘍です。代表的なものに、次の4つがあります。

漿液(しょうえき)性嚢胞腺腫

思春期以降の比較的若い年代から幅広い年代にみられ、発症頻度の高い腫瘍のひとつです。卵巣からは、漿液(しょうえき)というサラサラした水のような液体が分泌されていますが、この漿液が溜まってしまう嚢腫です。

粘液(ねんえき)性嚢胞腺腫

閉経後の女性に多く、粘液性の液体が溜まっている嚢腫です。かなり大きくなります。

皮様(ひよう)嚢腫/成熟嚢胞奇形腫

毛髪や歯、脂肪などの組織が含まれた物質が溜まります。20~30代の女性に多いといわれます。

チョコレート嚢腫/子宮内膜症性嚢胞

子宮内膜症では、子宮の内側にあるはずの子宮内膜が、子宮外にでき月経と同じ時期に出血が起こります。卵巣チョコレート嚢腫は、子宮内膜症が卵巣で生じており、月経時に出血した血液がたまっていき、チョコレートのように血液や組織が変色している状態です。30〜40代の女性に多く、40代以降には悪性腫瘍化に注意が必要です。

卵巣嚢腫って自覚症状がないって本当?

卵巣嚢腫は小さい間は痛みや違和感もなく、自覚症状がほとんどありません。腫瘍が大きくなるにしたがって、下腹部の痛みや、お腹が張るといった自覚症状がみられます。また、肥大した腫瘍に、下腹部を外側から触って気がつく人もいます。

卵巣嚢腫に自覚症状がないのはどうして?

卵巣は、女性の体の深い部分にあり、病気になっても自覚症状がなかなかみられないため「沈黙の臓器」といわれています。

女性は卵巣の中に、卵子の元になる細胞を持って生まれてきます。その数は、数百万ともいわれ、思春期以降に排卵が始まると、基本的には約1ヶ月サイクルで卵子を育てて排出するということを閉経の時期まで繰り返していきます。この排卵のリズムに合わせて、卵巣は腫れたりしぼんだりを繰り返しています。そのため、たとえ腫瘍で膨らんでいても、あまり体が自覚しづらいのかもしれません。

ただし、チョコレート嚢腫は子宮内膜症が原因となって起こります。子宮内膜症は、激しい痛みを伴うことも多く、月経の時期には強い痛みが生じることがあります。

定期的な検査が卵巣嚢腫予防の第一歩!

卵巣嚢腫の多くは良性ですが、放置しておくと過度に大きくなったり、何かのきっかけで嚢腫の根元がねじれを卵巣嚢腫茎捻転(らんそうのうしゅけいねんてん)を起こすことがあります。卵巣嚢腫茎捻転は、意識を失うほどの激しい痛みや吐き気、出血などの症状をともなうことがあります。また、症状によっては卵巣の摘出をしなければならないこともあります。

卵巣嚢腫は、早期に発見できればその後の治療もしやすくなります。ある程度の年齢になると会社や勤め先、市町村から婦人科検診のお知らせが届きますが、卵巣のう腫は早ければ10代から起こってもおかしくはありません。婦人科は、女性の身体を大切にするための診療科です。できれば、年に1回は超音波検査を受けると良いでしょう。

おわりに:卵巣嚢腫の早期発見のためにも、年に1回の定期検査を受けよう

卵巣は、身体の中でも腫瘍ができやすい臓器のひとつですが、自覚症状があらわれにくい沈黙の臓器です。卵巣嚢腫のほとんどが良性ですが、放置すると過剰に大きくなったり、がん化してしまったり、あるいは茎捻転が起こり、卵巣の摘出が必要になることもあります。卵巣嚢腫は超音波検査で確認ができる腫瘍です。どんな年齢の女性でも起こりうるものなので、毎年1回程度定期的に検査を受けるようにしましょう。

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