記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/7/9 記事改定日: 2020/1/31
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
大きくなった卵巣嚢腫が、子宮と繋がっている部分でねじれてしまう卵巣嚢腫の茎捻転。激痛を引き起こすともいわれますが、この卵巣嚢腫の茎捻転は運動や妊娠中に発症しやすいのでしょうか?また、前兆はあるのでしょうか?予防法も併せてお伝えします。
卵巣にできる腫瘍を卵巣腫瘍といいますが、液体や血液、組織などが溜まってできる卵巣腫瘍は、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)と呼ばれます。
卵巣嚢腫はほとんどが良性で、以下のものが代表的です。
チョコレート嚢腫は子宮内膜症が原因となるため月経のたびに痛みが生じることがありますが、その他の卵巣嚢腫は、初期には痛みやおりものの変化もなく、ある程度大きくなるまで自覚症状がありません。そのため、超音波検査を受けてみたら卵巣が腫れていたということが起こります。
しかし、卵巣嚢腫は自覚症状がないからといって、大きくなるまで放置して良いものではありません。その理由のひとつとして、卵巣腫瘍茎捻転(らんそうしゅようけいねんてん)のリスクが挙げられます。
左右の卵巣は、それぞれ靭帯によって子宮と繋がっていますが、卵巣嚢腫が大きくなってくると、その重みで靭帯がねじれてしまうことがあります。このねじれた状態を卵巣腫瘍茎捻転といいます。
激しい運動や性行為後、妊娠によって子宮が大きくなり卵巣の位置が変わることでも起こりやすくなります。茎捻転が起こると、激しい痛みや吐き気が起こり、意識を失うこともあります。また、卵巣に血液が届かなくなることで卵巣の組織が死んでしまうこともあるのです。
卵巣嚢腫の茎捻転がいつ起こるかどうかを予測することはできません。しかし、原因となる卵巣嚢腫を早期に発見し、治療を行うことは可能です。
卵巣嚢腫は初期段階では自覚症状はほぼないため、自覚症状が現れたときには、すでに大きくなっている可能性があります。
いつ茎捻転が起こってもおかしくはありませんので、もし腹痛や腰痛、頻尿や便秘などの自覚症状があらわれたときには、先延ばしにせずに医療機関を受診をしましょう。
そして、早期発見の可能性をより高めるためには、定期的に超音波検査を受けることが大切です。
卵巣茎捻転が起こると、次のような症状や体の変化が生じます。
症状の特徴は、突然卵巣茎捻転を起こした側の下腹部に強い痛みが生じることです。軽度な場合は自然に捻転が元の状態に戻ることもあり、自然に痛みが軽快していきます。
しかし、捻転した状態が続くと卵巣への血流が途絶えることで強い炎症を起こしはじめ、吐き気や嘔吐などの症状を引き起こします。
また、腸管の機能が著しく低下する「麻痺性イレウス」を引き起こすこともあり、お腹が張ったりお腹全体に痛みが広がるといった症状が現れます。
この状態にまで進行すると卵巣が壊死し、早急な摘出手術を受けないと命を落とすこともあります。
卵巣嚢腫茎捻転の治療は、かつては数cm程度開腹をして卵巣を摘出することが一般的でした。しかし、最近では、茎捻転を解消することで卵巣の機能も回復することがわかってきており、必ずしも卵巣の摘出が必要とは限らなくなっています。
また、腹腔鏡手術を用いることで大きく開腹をしなくてすみ、患者さんへの負担も軽減しています。
ただし、茎捻転が解消されても、卵巣嚢腫が残存していれば茎捻転が再び起こらないとは限りません。状態に合わせて卵巣嚢腫の治療も行っていくことになるでしょう。
とくに、これから妊娠の可能性のある患者さんには、卵巣をできるだけ温存する手術が検討されます。
卵巣嚢腫の茎捻転は、前兆もなく突然起こりうる症状です。予防をするためには、卵巣嚢腫茎捻転の原因となる卵巣嚢腫を早期に発見し、必要であれば治療を行うことが必要です。
卵巣嚢腫は、思春期以降の女性であれば、誰しもが起こる可能性があります。できれば、1年に1回程度超音波検査を受けることが望ましいでしょう。特に若い世代では、なかなか婦人科に行くということは敷居が高いかもしれませんが、婦人科は女性の身体を大切にするための診療科です。何かあったときに受診をするのではなく、かかりつけの婦人科を見つけておくと安心です。
卵巣嚢腫の茎捻転は、激しい運動の後や妊娠中などに起きやすい症状です。卵巣の中に、液体や組織、血液などがたまって卵巣が大きく腫れてしまう卵巣嚢腫が、気がつかない間に大きくなっていることが引き金となります。卵巣嚢腫の茎捻転を予防するためには、卵巣嚢腫を早期に発見して、必要な治療を受けることが大切です。かかりつけの婦人科を見つけ、定期的に超音波検査を受けましょう。