アナフィラキシーの薬「エピペン®」はどのタイミングで使えばいい?

2018/7/18 記事改定日: 2019/6/27
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

アナフィラキシーの治療で使われるエピペン®とはどのような薬なのでしょうか?これだけで症状を改善することはできるのでしょうか?エピペン®の効果や使用方法について解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

アナフィラキシーの治療で使われる薬は?

アナフィラキシーの治療で使われる薬には、以下のものがあります。

内服薬

抗ヒスタミン薬
比較的軽い皮膚や粘膜症状に使用されます。
気管支拡張薬
呼吸器症状に使用されます。
経口副腎皮質ステロイド薬
症状が重いときに使われることがあります。

アドレナリン自己注射薬

アドレナリン自己注射薬には、気管支や血管に作用してアナフィラキシー症状(呼吸困難や血圧低下など)を改善する効果や、肥満細胞や好塩基球からのケミカルメディエーターの放出(脱顆粒)を抑制する効果があるとされています。
アドレナリン自己注射薬は、以下のような症状があるときに使われます。

ショック症状
ぐったり、意識障害、失禁など
のどの重篤な症状
のどが締め付けられる感じがする、声がれ、声が出ないなど
呼吸器系の重篤な症状
強い喘鳴、呼吸困難など

ただし、アドレナリン自己注射薬は根本的な治療法ではないため、応急処置後は速やかに医療機関を受診する必要があります。
過去にアナフィラキシーショックの既住歴がある人や、起こる可能性があると考えられる人は、アドレナリン自己注射薬を常に携帯しておきましょう。

アナフィラキシーの自己注射薬「エピペン®」とは?

蜂毒・食物・薬物などが原因となり発生する「アナフィラキシー」を過去に起こしたことのある人、起こる可能性が高いと考えられる人には、「エピペン®注射液0.3mg/エピペン®注射液0.15mg」が処方されます。エピペン®は、注射針一体型の注射器の中にアドレナリンが入っているキット製剤です。

エピペン®の使用方法

使用量

成人 0.3mg製剤
小児 0.15mg製剤または0.3mg製剤
(体重により異なる)

※1管中に2mLの薬液が入っているものがありますが、注射時に投与されるのは薬0.3mLで、注射後に薬1.7mLの薬液がキット内に残るようになっています。一度注射すると、再度注射しても薬液が出ないように設計されているため、薬液が残っていても2度は注射できないようになっています。

注射部位

太ももの前外側に注射します。緊急時には衣服の上からでも注射ができるようになっています。太もも以外の場所(お尻や腕など)には注射しないでください。

注射タイミング

  • アナフィラキシーの初期症状が現れショック状態になる前
  • 過去にアナフィラキシーを発症する原因となったアレルゲンを摂取し、異常症状が現れた時

注射が許可されている人

患者本人、保護者、教職員、保育士

エピペン®がないときはどうすればいい?

アナフィラキシーを発症した際に手元にエピペン®がない場合には、アナフィラキシーの症状を根本的に改善することはできませんが、速やかに原因物質の除去と呼吸確保を行って救急車を要請する必要があります。
具体的には、原因物質が飲食物の場合には口の中に残ったものを吐き出して口の中をゆすぐ、虫刺されなどの場合には患部をよく洗浄するなどの対処が必要です。

また、アナフィラキシーで最も恐ろしい症状は気管がむくんで呼吸ができなくなることです。息苦しさを感じているようであれば、洋服の締め付けを緩めて横にならせ、首をやや後ろに倒すようにして気管への空気の流入をサポートするような体勢を維持しましょう。
また、急激な血圧低下によって意識消失などが起こることもありますが、その場合には足をやや高くして寝かせるなどの対処法が効果的です。

エピペン®を注射すれば、病院の治療はいらない?

エピペン®は、あくまで患者が医療機関の受診が難しい状況下で行う応急処置であるため、根本的な治療ではありません。そのため、エピペン®の投与後に一時的に症状が落ち着いたとしても、その後すぐに医療機関を受診し治療を受けましょう。

救急隊が行う治療

患者の初期評価を行い、救急車内に収容・搬送します。アナフィラキシーか他の病気かの判断に迷う場合は、医師に確認を取ることがあります。

  1. 呼吸困難やショック状態の場合は、酸素投与を行います。
  2. 必要に応じて、下股挙上(ショック体位)※を行います。
    ※ショック体位とは、ショック症状のある人を仰向けに寝かせ、下股を15~30cm高くする体位のことです。
  3. 患者が持っているエピペン®を自分で投与できない場合は、救急救命士が代わりに投与を行います。エピペン®を保持している場合は、必ず救急隊員に伝えるようにしましょう。
初期評価
意識の有無、喉の腫れ、嘔吐物の詰まり、呼吸困難、ショック症状などの確認

医療機関が行う治療

アドレナリンの投与

アナフィラキシーの患者には、まず最初にアドレナリンの投与が行われます。

点滴

アナフィラキシーになると、血管から水分が外に逃げることにより脱水症状や、血管拡張による血圧低下(ショック)が起こりやすいため、点滴が行われます。

薬剤の投与

アドレナリン以外に、以下の薬剤が使われることがあります。

ステロイド
ステロイドは、アドレナリンと比較するとアナフィラキシーに対しての即効性はありませんが、二相性反応(初期症状が落ち着いた後に再び症状が起こる反応)を抑制する効果があります。
抗ヒスタミン薬
即効性はありませんが、皮膚症状を改善する効果があります。

経過観察

アナフィラキシーの初期症状の治療後は、入院して経過観察を行います。

おわりに:エピペン®はあくまでも緊急的な処置。投与した後でも病院にいく必要がある。

ショック症状やのどの重篤な症状、呼吸器系の重篤な症状がある場合は、速やかにアドレナリン自己注射薬を投与する必要があります。ただし、アドレナリン自己注射薬は根本的な治療法ではないため、応急処置後は速やかに医療機関を受診しましょう。

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