記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
飲酒後の下痢は比較的よくある症状の一つですが、中には病気のサインとなる下痢もあります。今回は、飲酒によって下痢や腹痛を引き起こす「急性膵炎」という病気と、その治療法を中心にお伝えしていきます。
多くの場合、飲酒後の急な下痢は胃腸の低下機能によるものです。アルコールによって腸の粘膜が荒れることで、水分やナトリウム、脂肪、糖分などがうまく消化・吸収できなくなった結果、下痢が起こるようになります。
しかし、飲酒後に上腹部の激しい痛みや吐き気、発熱、下痢などに見舞われた場合は、「急性膵炎(すいえん)」を起こしている可能性があります。
急性膵炎とは、膵臓の内部やその周辺で起こる病変のことです。そもそも膵臓は胃の後ろ側の背中に近い部分に帯状に分布する小さな臓器で、腸に消化酵素を含む「膵液」を分泌し、食べ物の消化をサポートする役割(外分泌機能)や、血管内にインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌し、血中の糖分をコントロールする役割(内分泌機能)があります。
急性膵炎は、この「膵液」の流れが滞り、膵臓を溶かしたことで起こる炎症です。発症原因は胆石や自己免疫疾患などさまざまですが、特に男性に多い原因がアルコールの過剰摂取で、およそ半数を占めるともいわれています。大量のアルコール摂取が膵液の分泌を活発化させるために起こると考えられており、飲みすぎた数時間後〜翌日にかけての発症率が高い傾向にあります。
急性膵炎の代表的な症状は以下の通りです。
急性膵炎が重症化すると、肝臓などの他の臓器にも炎症が起こり、ICU(集中治療室)での全身管理が必要になったり、最悪の場合命を落としたりする恐れがあります。該当する症状があれば、すぐに消化器内科を受診しましょう。
【 厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】
症状や血液検査、CT、MRIなどの結果から急性膵炎と診断された場合は、基本的にすぐに入院することになります。治療中は、食事をすると膵液が分泌されて炎症が悪化する恐れがあるため、絶食して安静にし、膵臓を休ませることが必要です。
また、それと併せて鎮痛薬や輸液、消化酵素の活性化を抑制するタンパク分解酵素阻害薬の投与などを行うことで、1〜2週間程度で改善するケースが多いです。重症の場合は抗生物質の投与や外科治療が行われることがあります。
飲酒後の一時的な下痢であれば、胃腸の機能低下によるものなのでそこまで心配はいりませんが、激しい上腹部痛や吐き気とともに下痢がみられる場合は、急性膵炎という病気の可能性があります。特に男性は過度の飲酒が原因で発症することが多いといわれているので、該当する症状があったら我慢せず、消化器内科を受診してください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。