お酒と血圧の関係性 ― 飲酒による血圧低下は危険?

2021/11/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

お酒を飲むと、顔が赤くなったり体が熱くなったりしますが、血圧は一時的に下がっています。では、この血圧低下は体にどのような影響があるのでしょうか。
この記事では、飲酒と血圧の関係と、飲酒による血圧低下の危険性について解説します。

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飲酒直後は血圧が低下する?

意外に思うかもしれませんが、一般的には飲酒後は、血圧が一時的に低下します。お酒を飲むと顔が赤くなる人は、とくに血圧の低下の幅が大きく、脈拍数はかなり増えます。この顔の赤みは、アルコールを代謝する酵素の作用が遺伝的に弱いために、アセトアルデヒドという物質が血中で増え、血管が拡張したために起こるものです。

しかし、飲酒直後に見られるこの血圧低下は、あくまでも一時的な現象です。長時間飲酒を続けると血圧は上昇しますし、短時間であっても、適量を超える過度の飲酒をすれば血圧は上昇します。

飲酒習慣は高血圧の原因になる

長期間に渡る過度の飲酒習慣は、高血圧のリスクを高める原因です。血圧と飲酒の関係について調査した研究によれば、アルコール約30mL(ビール大瓶1本や日本酒1合に含有されるアルコール量の目安)につき、血圧は3mmHg上昇するということがわかっています。また、日々の飲酒量が多ければ多いほど、血圧の平均値は上昇し、高血圧のリスクが高まるということが、多くの研究によって指摘されています。

飲酒にはリラックス効果などのメリットもありますが、「節度ある適度な飲酒」を守ることが大前提です。厚生労働省では、「節度ある適度な飲酒」を「1日平均純アルコールで20g程度」と定義しています。純アルコールで20g程度とは、ビールや発泡酒(アルコール度数5%)では「500ml缶 1本」、ハイボール(アルコール度数7%)では「350ml缶 1本」です。適量を守ることは、周囲に迷惑をかけない「楽しいお酒」にすることにも役立ちます。お酒は必ず適量を守って飲むようにしましょう。

飲酒後の血圧低下はヒートショックのリスクを高める

飲酒による血圧低下は、転倒や意識障害などを招く危険性があります。また、飲酒後による血圧低下は、ヒートショックのリスクを高める原因にもなります。

ヒートショックとは、冬場のお風呂などに多い「気温差による血圧の乱高下」が原因で起こるショック状態のことです。立ちくらみや意識を失うことによる転倒で大ケガをしたり、心筋梗塞や脳梗塞で命に危険が及んだりする可能性もあります。飲酒直後は入浴を控えましょう。

ヒートショックは高齢者に多いトラブルですが、血圧が高めな人や血圧が安定しない人、生活習慣病の持病がある人などもリスクが高いといわれています。寒い時期は「ヒートショック」のリスクが高まるので、とくに注意しましょう。

飲酒後の血圧低下や頭痛は「急性アルコール中毒」のサインのことも

飲酒後の一時的な血圧低下は一般的な現象であり、問題がないものです。しかし、大量のお酒を飲んだり、お酒を一気飲みしたりすると、「急性アルコール中毒」による血圧低下が起こることがあります。

急性アルコール中毒とは、短時間での大量の飲酒に対し、肝臓でのアルコール代謝が追いつかず、アルコールの血中濃度が急上昇するために諸症状が起こる現象です。飲酒習慣のない人やお酒が弱い人は急性アルコール中毒になりやすいですが、お酒が強い人、飲酒習慣がある人であっても、急性アルコール中毒になる可能性はあるので、一気飲みはしない、過度の飲酒はしないことは大前提として意識してください。

急性アルコール中毒のおもな症状は以下の通りであり、昏睡状態に陥った場合は、吐瀉物が喉に詰まる、呼吸困難に陥るなどして命に危険がおよぶ場合もあります。飲酒後にこれらの症状が見られる場合は、すぐに救急車を呼びましょう。

  • 意識の混濁、昏睡
  • 血圧低下
  • 失禁
  • 顔面や全身の紅潮
  • 発汗
  • 頭痛
  • めまい
  • 目のかすみ
  • 吐き気、嘔吐
  • 記憶障害(泥酔中のことを覚えていない)

おわりに:飲酒による血圧低下にはリスクがある。適量を守って飲むことが大切

一般的に、飲酒後には血圧が低下しますが、この血圧低下は一時的なものです。過度の飲酒の習慣化は高血圧のリスクを高めますし、飲酒後に起こる血圧低下は、ヒートショックのリスクを高めます。また、飲酒後の低血圧は急性アルコール中毒によって起こっている場合もあります。飲酒は適量を守ることが大切であり、飲酒直後の入浴は危険です。お酒はルールとマナーを守って、楽しく健康的に嗜むようにしてください。

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