アレルギー性鼻炎の治療の効果を高めるポイントって?

2018/7/13

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

花粉やハウスダストが原因であるアレルギー性鼻炎は、本来は身体を守ってくれるべき免疫機能がアレルギーの原因物質に過剰に反応してしまうことで起こる症状です。アレルギーは、原因となる物質は身の回りのどこにでもあるため、いつ、誰にでも起こりうる疾患です。
そんなアレルギー性鼻炎を治療するために、日常生活で気をつけられること、また、アレルギー性鼻炎の治療の方法についてご紹介します。

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アレルギー性鼻炎の治療を効果的にするために必要なことは?

アレルギー性鼻炎の治療をより効果的に進めるために、日常生活で気をつけることがあります。それは、アレルギー反応の原因となる物質、すなわちアレルゲンを除去、または避けることです。

アレルゲンの多くに共通する対策は?

まず、多くのアレルゲンに共通して行える対策から見ていきましょう。

掃除機

  • 週1〜2回
  • 1㎡あたり20秒程度の時間をかける
  • 排気循環式のものを使う
対策方法 ポイント
室内環境
  • 温度:20〜25℃、湿度:50%程度に保つ
  • じゅうたんやカーペット、畳は避けてフローリングにする
  • 布製や織物製のソファーは避ける

アレルギー性鼻炎を避けるために最も重要なことは、アレルゲンが鼻に入らないようにすることです。つまり、室内に飛散するアレルゲンの量を減らすことが大きなポイントです。

室内環境では、温度は20〜25℃、湿度は50%前後に保ちましょう。ダニが好む温度・湿度は気温25℃、湿度75%程度の高温多湿の状態を好みます。ダニが繁殖しにくいような環境を作ることが大切です。また、布製や織物製のソファは繊維の隙間にダニが繁殖しやすいだけでなく、花粉やほこりも溜め込みやすいため、避けた方が良いでしょう。

また、室内のほこりや花粉などを除去するためには、掃除も大切です。掃除機を週に1〜2回、1㎡あたり20秒の時間をかけてしっかりと掃除しましょう。吸い込んだダニやほこりを撒き散らさないために、排気循環式の掃除機を使うのがおすすめです。

掃除の際、布団を乾燥させるのに天日干しにすることはもちろん良いのですが、布団を叩くとアレルゲンが舞い散る原因になります。布団やマットレスを干した後は、叩かず掃除機で吸い取るようにしましょう。

アレルゲン別に行える対策は?

アレルギー性鼻炎のアレルゲンは、室内ダニやほこりなどのハウスダストと花粉に大きく分けられます。

アレルゲン 対策
ダニ・ほこり
  • ベッドのマットや布団、枕に防ダニカバーをかける
  • 布団やソファーに布団クリーナーをかける
花粉
  • 花粉の飛散の多い日はできるだけ外出を避ける
  • 花粉が舞い込まないよう、窓や戸は閉めておく
  • 外出時には花粉防御用のマスクやゴーグルを使う
  • 帰宅時は家に入る前に衣服や髪から花粉を払い落とす
  • 帰宅したら手洗い、うがい、洗顔を忘れずに行う

ハウスダストが原因のアレルギー性鼻炎の場合、アレルゲンの多くは室内ダニといわれています。つまり、室内ダニが繁殖しにくい環境を作る、もしくは死滅した後の死骸や糞を撒き散らさないようにすることが大切です。防ダニ用のカバーをかけ、掃除の際に布団クリーナーをかけると繁殖・飛散防止になります。

花粉の除去・回避で大切なことは、「家の中に持ち込まない」ということです。飛散量の多い日は不要不急の外出をしない、外出の際にマスクやゴーグル・花粉除去スプレーをしておくことはもちろん、外から帰ったときは家に入る前に玄関の外で花粉を払い落としましょう。

アレルギー性鼻炎を治療しよう:薬物療法

アレルギー性鼻炎の治療法で最も使われているのが、薬物療法です。投薬する薬は、主な症状がくしゃみ・鼻水か、鼻づまりかで変わってきます。

主な症状 薬の種類
くしゃみ・鼻水
  • 抗ヒスタミン薬
  • 抗アレルギー薬
  • ステロイド点鼻薬
鼻づまり
  • 抗ロイコトリエン薬
  • 抗トロンボキサン薬
  • ステロイド点鼻薬

くしゃみ・鼻水タイプの場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使用します。抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代があり、第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気が出やすく集中力の低下を招きやすいという性質がありますが、第二世代ではそのデメリットが抑えられ、眠気などの副作用が出にくくなっています。市販の風邪薬や鼻炎薬にも含まれているのは第一世代の抗ヒスタミン薬です。

鼻づまりの場合は、抗ロイコトリエン薬や抗トロンボキサン薬を使用します。ロイコトリエンは血管を拡張させ、トロンボキサンは血管の壁を弱くしてしまい、どちらも鼻粘膜の腫脹を起こして鼻づまりを引き起こします。そこで、これらの伝達物質を阻害する薬によって血管の拡張を抑えることで、鼻づまりを解消します。

ステロイド点鼻薬は、これらの内服薬と併用して使われる外用薬です。鼻に直接噴霧し、炎症を引き起こすサイトカインの産生を抑えます。

アレルギー性鼻炎を治療しよう:減感作療法

アレルギー性鼻炎の治療法として、減感作療法(げんかんさりょうほう)が行われることもあります。減感作療法は、体内にごく少量のアレルゲンを投与していくことで、徐々にアレルゲンに身体を慣らし、免疫の過剰反応を抑える治療法です。

治療方法 低い濃度から徐々に高い濃度のアレルゲンを注射していく
治療期間 週1〜2回の注射を半年〜1年程度続けた後、徐々に注射の回数を減らし、最終的に月1回の注射にして合計3年程度継続して治療する
効果 有効率は70%以上、花粉症では80%以上に治療効果がある
副作用 皮膚が赤くなる、腫れるなど。稀にアナフィラキシーショックを引き起こすことがある

減感作療法は、現時点では唯一の根本的な治癒が見込める治療法とされています。薬物療法はあくまでも対症療法ですが、減感作療法はそもそも身体に備わっている免疫機能を正常に近づけることで、薬に頼らない、または大幅に減らすことを目的とした治療法です。

ただし、この治療法が使えるのはアレルゲンが一つの場合です。複数のアレルゲンに対してアレルギー反応が起こる場合、同時進行することができないため、治療を行うことは非常に困難です。

また、ごく少量ではありますがアレルゲンを注射するという性質上、皮膚が赤くなったり腫れるなどの副作用が現れることがあります。非常に稀なケースではありますが、アナフィラキシーショックを引き起こすこともありますので、注意が必要です。

アレルギー性鼻炎を手術で治療するってどんなとき?

アレルギー性鼻炎の症状が重い場合、またはハウスダストなどで年間を通して症状が続く場合には、手術療法が使われることもあります。

  • 強い鼻づまり、20回を超えるくしゃみや鼻水など重篤なアレルギー症状
  • ハウスダストなどで年間を通して症状が続く
  • 薬が効きにくい、長期間の服用は避けたい

といった場合に適応となります。ただし、手術療法は減感作療法と違い、体質そのものを変える治療ではないため、数年経ってアレルギー反応部位が再生してしまうと症状が再発する場合があります。

手術療法の種類

アレルギー性鼻炎の手術療法には、下記の3種類の方法があります。

名称 概要
レーザー手術、アルゴンガス凝固術(下甲介粘膜焼灼術)
  • 粘膜を浅く灼いてアレルギー反応部位を少なくし、症状の軽減をはかる
  • 3〜4週間程度でアレルゲンの侵入しにくい粘膜に生え替わる
  • 痛みや出血、後遺症はほとんどない
  • 日帰りで手術が行える
後鼻神経切断手術+粘膜下下鼻甲介骨切除術
  • 鼻水を出す神経とくしゃみを起こす神経を切断する
  • アレルギー抑制効果は高いが、身体への負担は少ない
  • 涙液分泌の経路は切断しない
  • 手術は全身麻酔で行うため、1泊2日の入院が必要
後鼻神経凍結手術
  • 後鼻神経を低音で冷やし、変性させる
  • 粘膜や神経を傷つけないため、出血や手術後の腫れがほとんどない
  • 両側でも5〜6分で終了する

下甲介粘膜焼灼術と呼ばれる、レーザーやアルゴンガスで粘膜のアレルギー反応部位を浅く灼く方法が最も広く使われています。日帰りで手術が行える手軽で安全な方法である他、ハウスダストに対する有効性が約80%と高く、術後も7年で5割以上の方が有効性を感じるなど、効果が長く続く点で採用されています。

後鼻神経凍結手術は、下甲介粘膜焼灼術と比較してさらに簡便で安全に行える療法ですが、術後の効果の持続性にやや欠けるところがあります。したがって、ハウスダストなどの重篤かつ長く続く症状の場合ではなく、花粉症で期間が限定されている場合などによく利用されます。

後鼻神経切断手術+粘膜下下鼻甲介骨切除術の場合は、効果は最も高く、持続性も3年経過時点で約90%の方が有効性を感じているなど、非常に有効な治療法です。しかし、1泊2日の入院が必要であること、神経を切断するという方法であることから、適応はレーザーやガスでは効果が不十分な方などに限られます。

おわりに:アレルギー性鼻炎の治療はアレルゲンをコントロールしよう

アレルギー性鼻炎の治療として薬物療法や減感作療法を行う前に、生活環境を改善することは非常に重要です。常にアレルゲンに接している状態では、治療の効果がうまく得られない場合もあります。

手術療法はあくまでも、薬物療法や減感作療法では治療が困難とされた場合の最終手段として使われます。まずは、日常生活での衛生環境を見直し、アレルゲンに接しにくい環境を作りましょう!

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