乳がんのホルモン治療の副作用は?体重が増えることはある?

2018/7/23

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

乳がんの治療ではホルモン療法が行われますが、この影響で体重が増えることはあるのでしょうか?ホルモン治療の副作用を中心にお伝えしていきます。

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乳がんのホルモン治療で使う薬ってどんなもの?

ホルモン療法剤は、以下のように閉経前と閉経後では使用される薬剤が異なります。

閉経前
  • LH-RHアゴニスト製剤
  • 抗エストロゲン薬
閉経後
  • アロマターゼ阻害薬
  • 抗エストロゲン薬

抗エストロゲン薬

抗エストロゲン薬は、多くの臨床試験により乳がんの縮小効果や再発抑制効果があると明らかにされており、閉経前・閉経後のどちらの場合でも使用することができます。

具体的には、乳がんの増殖を促進する作用のあるエストロゲンがエストロゲン受容体(ER)と結合するのを防ぐことにより、ホルモン依存性の乳がん増殖を抑制する効果があります。
また近年では、ホルモン療法剤の種類の増加に伴い、閉経状況によって使用する薬を変えることができるようになっています。

LH-RHアゴニスト製剤

LH-RHアゴニスト製剤は、閉経前の患者に皮下注射することで、エストロゲンの産生を促す卵巣内の下垂体ホルモンの働きを低下させ、ホルモン依存性の乳がん増殖を抑制する効果があります。

一般的には、LH-RHアゴニスト製剤と抗エストロゲン剤を閉経前の患者に4週間か12週間に1回または、24週間に1回皮下注射するのが基本的な治療法となります(閉経前の患者の場合)。薬剤を使用している期間は一時的に月経が止まりますが、ほとんどの場合薬剤の使用の中止に伴い月経が再開します。

アロマターゼ阻害薬

アロマターゼ阻害薬は、エストロゲンを減少させ、がん細胞の増殖を抑制する効果があります。閉経後は、脂肪組織や乳がん組織内にあるアロマターゼによるエストロゲンの産生が活発になるため、アロマターゼ阻害薬が有効となります。
またアロマターゼ阻害薬の投与期間には以下の2種類があり、詳しい投与期間や内容については担当医や薬剤師に相談する必要があります。

  • 5年間投与する場合
  • 抗エストロゲン薬を2~3年間投与した後、アロマターゼ阻害薬に移行し合計5年間投与する場合

乳がんのホルモン治療の副作用は?

エストロゲンは、本来女性の健康を維持するために必要なものなので、ホルモン療法剤により分泌量や作用が阻害されると、以下のようなさまざまな副作用が起こります。心配なことや気になる症状が現れたときは、担当の医師や薬剤師に相談しましょう。

更年期様症状

エストロゲンの低下により、のぼせ・ほてり・疲労感・不眠・イライラ・耳鳴り・立ちくらみ・関節痛などの更年期様症状が起こることがあります。

体重増加

エストロゲンの低下によりLDLコレステロールが蓄積されやすくなったり、手術後の運動不足やストレスにより過食が進んで、体重が増加することがあります。

骨量の低下

エストロゲンの低下は、骨のカルシウム不足により起こる骨粗鬆症を引き起こす恐れがあります。長期的なホルモン治療が必要な場合は、定期的に検査を受けて骨の状態を確認しましょう。

ホットフラッシュ

ホットフラッシュとは、血液中のエストロゲンの減少に伴い、体温調整機能に影響が出ることにより起こる更年期に似た症状のことをいいます。主な症状として、突然暑くなる・汗をかく・胸から顔にかけて赤くなる・動悸・不安・睡眠障害などが起こります。

ホットフラッシュは、ホルモン療法を受けている患者の50%以上に発症するとされていますが、自然に症状が軽減する場合が多いので、しばらくの間は経過観察を行い、必要な場合は医師に相談しましょう。

ホルモン治療で体重が増えた!どうすればいい?

術後、ホルモン剤を使用している間は、食欲が増進することにより過食になり、体重が増えることがあります。
閉経後の体重増加のリスクとその対策については、下記をご覧ください。

閉経後の体重増加のリスク
  • 乳がんの再発リスクが高まる
  • 患側上肢のリンパ浮腫を引き起こす可能性がある
対策
  • 定期的な体重測定を行い体重を管理する
  • 規則正しい食生活を心がける(食事内容・食事時間・摂取量など)
  • 適度な運動を生活に取り入れる

おわりに:気になる症状がある場合は医師に相談しましょう

エストロゲンは女性の健康を維持するために必要不可欠なものなので、ホルモン治療により分泌量や作用が阻害されると、更年期様症状・体重増加・骨量の低下・ホットフラッシュなどの副作用が起こることがあります。特に体重の増加は、乳がんの再発リスクを高める要因の一つでもあるので、体重管理に努めることが重要です。

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