がんの遺伝子治療ってどんなことを行うの?メリット・デメリットは?

2018/7/23

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

がん治療の現場で、比較的新しい治療法として注目を集めているのが「遺伝子治療」です。では、がんの遺伝子治療とはどのような治療なのでしょうか?また、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

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がんの遺伝子治療ってどういうもの?

遺伝子治療とは、がんの原因となる遺伝子異常を減らす治療法です。
治療の効果が出るまでに1~2ヶ月かかる免疫療法と比較すると治療期間が短く、遺伝子治療では2~3週間で効果が現れるとされています。また、耐性がついて治療効果が得られなくなることがあまりないため、他の治療法(抗がん剤や放射線療法)で免疫力が落ちている場合でも、治療が受けられます。以下にその詳細をご紹介しますが、現在保険承認されていない医療であり、まだ未知の副作用などが存在する可能性があります。本記事は本治療を推奨するものではありませんのでそのうえでご覧ください。

 

がん遺伝子治療のメリット

通院のみで治療が可能
麻酔をする必要がないため、通院のみで治療を受けることができます。治療時間は2~4時間ほどです。
抗がん剤耐性の解除
抗がん剤に耐性がついて治療が効かなくなった場合でも、遺伝子治療によって抗がん剤の効き目が出やすくなるケースがあります。
合併症の心配がない
遺伝子治療では、点滴や注射を使用してがん抑制遺伝子を体内に投与するため、手術のように切除痕などの傷口からの感染症(創感染)や、合併症(縫合不全、腹膜炎など)の心配をする必要がありません
再発予防効果
現在では、全身に作用することで新しいがんの発生を防ぐ、再発予防としての効果が期待されています。

がんの遺伝子治療の方法は?

遺伝子を体内に運搬するための効果的な方法として、ウイルスベクターというものがあります。

ウイルスは、それ自体に遺伝子(DNAやRNA)を複製する機能がないため、感染した細胞に自身のDNAやRNAを注入してその複製装置を利用することで増殖します。ウイルスベクターとは、がん細胞を正常な細胞に戻すための遺伝子を細胞内に導入する治療法です。

ただし、一部にはインフルエンザ、脳炎などを引き起こすウイルスがあるため、遺伝子情報を導入する際には、人工的にウイルスの病原性を弱めてからウイルスベクターとして使用されます。

がんの遺伝子治療のデメリットは?

治療費は自己負担

がん遺伝子治療は保険承認がされていないため(自由診療)、原則として治療費は自己負担となります。国内のがん遺伝子治療を行っている医療機関の平均的な治療費は、1クールで100~300万円ほどになっています。ただし、保険外診療のため医療機関により治療費に幅があります。

治療のリスク

遺伝子治療には下記のようなリスクがあることを理解したうえで治療を受ける必要があります。

ベクターそのものの安全性
遺伝子治療を受ける際には、ベクターそのものの安全性を考慮する必要があります。人工的に病原性を弱めて毒性をなくしてはいますが、ウイルスを感染させるという方法のため、風邪に似た症状や注射場所の炎症などの副作用が起こる可能性があります。
遺伝子産物による副作用
ウイルスに導入する遺伝子が産生した物質(遺伝子産物)により、副作用が起こる可能性があります。また、細胞内に遺伝子が入るときに患者自身の遺伝子に傷がつくことがあり、過去にフランスにて白血病の発症が確認されたことがあります。
しかし、現在では遺伝子に傷をつけない方法の開発や、過去の問題事例を考慮した安全対策が急速に行われています。

おわりに:リスクを考慮した上での検討を

遺伝子治療とは、がんの原因となる遺伝子異常を減らす治療法で、免疫療法と比較すると治療期間が短く、免疫力が落ちている場合でも治療が受けられるなどのメリットがあります。
しかし、治療費の自己負担や遺伝子産物による副作用のリスクなどもあるため、それらを考慮した上で治療を受けるか判断しましょう。

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