学習障害の原因って、遺伝が関係しているの?どう対策すればいい?

2018/8/3 記事改定日: 2019/2/17
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

読み書きや計算などの習得に困難を感じてしまう「学習障害」。この学習障害の発症には、遺伝が関連しているのでしょうか?原因について詳しく解説していきます。

学習障害の原因に遺伝は関係する?

「学習障害(LD:Learning Disability)」とは発達障害のひとつで、全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算・推論する能力のうち、いずれかまたは複数のものの習得や使用に著しい困難を示すものです。

原因は、胎児期や出生後の脳や心身が発達する時期に、なんらかの遺伝的要因がさまざまな環境要因と影響し合い、脳の機能異常、中枢神経機能障害を起こすことという説が主流になっていますが、明らかにはなっていません。なお、遺伝についてはなんらかの関連はあると考えられているものの、単純に親から子へ遺伝するということはなく、学習障害になりやすい体質のもととなるリスク遺伝子を受け継いだとしてもそれだけで発症するということもありません。また、出生後の親の育て方や教育が原因ではないことは明らかになっています。

では、学習障害の原因は?

学習障害の原因はまだ明らかになっていないものの、何らかの脳機能の問題と考えられています。脳の機能不全が起こる仕組みについてはまだ仮説が立てられている段階ですが、本人の努力不足が原因でないことはわかっています。

一般的に人は、目や耳などから入ってきた感覚情報をこれまで経験した情報と照らし合わせ、判断や予測をしています。しかし学習障害があると、情報を取り込む際に使える感覚が限られていたり、脳内での情報処理ネットワークが偏っている部分が出ると考えられています。前頭葉が関与しているともいわれていますが、明確にはわかっていません。

なお、学習障害と誤解されやすいものとして、アレルギー性疾患による注意力や集中力の低下、視力や視野、色覚など目に関わる症状や聴覚障害による学習への影響、軽度の知的障害などがあります。

学習障害の治療法は?

現在のところ、手術や薬物など医学的方法による根本的な治療法はありません。現在行われている学習障害の治療は、子供の将来を広げるためのサポートのようなものになります。

学習障害の人は特有の見え方や感じ方をしており、生活や学習上の問題を努力だけで乗り越えることは困難で、日常生活の中で周りからのサポートを必要とします。学校や地域の専門機関(保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所など)の力を借りて子供の特性を理解し、それに合わせた学び方や環境をつくることで、その子が困難を感じている分野の苦手意識を解消することが大切です。できるだけ年齢が低い段階でその子にあった療育を始めると、その後の社会適応力も高くなるといわれています。教育面、生活面での環境調整や療育といった支援によって、快適に過ごせるようにすることが学習障害の治療となります。

大人の学習障害

大人の学習障害の人も就労することは可能ですが、さまざまなことで弊害が生じることがあります。このため、就労をあきらめてしまう人も少なくありません。
大人の学習障害に対しては以下のような公的支援サービスがありますので、上手に利用して就労を続けられるよう、本人だけでなく家族や職場でも協力しましょう。

障害者就労・生活支援センター

学習障害など何らかの障害を抱えている人を対象に、日常生活や職場での悩み事を聴取し、必要な支援サービスを紹介する施設です。障害者手帳を保持していなくても利用することができますので、まずはお近くの施設に相談してみましょう。

ハローワーク

職場の紹介などを広く行う施設ですが、障害のある人を対象としたサービスもあります。障害を持つ人に対する求人の紹介が主なサービスですが、専門の医療機関や自助グループなどを紹介してもらえる場合もあります。
障害者手帳を保持していなくても無料で利用できますので、気軽に相談してみましょう。

おわりに:遺伝による発症はなく原因はわかっていません。それぞれに合わせた支援が必要

学習障害を発症する原因は明らかになっておらず、学習障害になりやすい体質のもととなるリスク遺伝子の可能性はあるものの、さまざまな環境要因と相互に影響を受けて発症するとされ、単純に遺伝するものではありません。根治させる治療薬などはありませんが、教育面、生活面での環境調整や療育といった支援によって徐々に困難は減り、社会に適応しやすくすることができます。

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