慢性腎臓病は食事や生活習慣が原因になる!?対処法はあるの?

2018/7/26 記事改定日: 2018/8/15
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腎臓の障害が長期間続き、慢性化してしまう「慢性腎臓病(CKD)」。この慢性腎臓病の原因として、ストレスや飲酒、食事などは関係しているのでしょうか?また、慢性腎臓病を予防する方法はないのでしょうか?
対処法もあわせて詳しく解説していきます。

食事が慢性腎臓病を招く!?予防する方法はある?

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)とは、腎臓の障害が長期間続き慢性化している状態のことです。現在の国内の患者数は1330万人(成人の8人に1人)といわれています。

肥満の予防・解消は、慢性腎臓病の発症率の低下につながるといわれています。以下のような肥満の原因となる食習慣は避けるように心がけましょう。

不規則な食事

不規則な生活を送っていて、食事の時間もバラバラになると間食をとりがちになります。
また、1日1、2回など食事回数が少なくなると、1度の食事で摂る食事量が増加するほか、空腹後に食べることにより栄養吸収がよくなり、肥満になりやすくなります。

外食

外食では炭水化物や脂質の摂取量が多くなり、野菜が不足しがちです。一品ものの注文を控え、副菜の小鉢を追加するなどの工夫をしましょう。

夜に食べすぎる

夜間は胃腸や消化管の働きが増すため、摂取した栄養がすぐに吸収されてしまいます。また、余分なエネルギーが溜まる原因にもなるので、夜食の食べ過ぎには注意する必要があります。

ストレスやお酒も慢性腎臓病の原因に!?

慢性腎臓病の原疾患(原因となる病気)として代表的なものとしては、生活習慣病と呼ばれる糖尿病・高血圧・動脈硬化などや、慢性腎炎などがあります。近年では糖尿病の合併症による糖尿病性腎症の割合が高まっています。そしてこのほかにも、ストレスやアルコールは生活習慣病のリスクを上げる要因になるので、飲酒は適量を心がけ、適度な運動や趣味などでリフレッシュするようにしましょう。

また、煙草に含まれるニコチンには血管を収縮させる働きやインスリン抵抗性を高める働きがあり、生活習慣病のリスクを上げます。そして、喫煙は血圧が上昇させる作用があるので、腎臓に直接負担がかかってしまいます。まだ腎臓に異常がない人も煙草を吸う本数を減らすようにし、可能なら禁煙することをおすすめします。

慢性腎臓病は予防できる?どう対策をとればいい?

上記でも説明したように、慢性腎臓病を予防するには生活習慣病を予防することが重要になってきます。
下記のことを心がけ、生活習慣病を予防しましょう。

適度な運動

慢性腎臓病の患者が運動不足になると、心筋梗塞や脳卒中により死亡する確率が高まるといわれています。適度な運動は腎臓病以外にも、高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などの予防や症状の進行を抑える効果があり、ストレス解消にもつながるため、無理をしない程度に日頃から運動をするようにしましょう。ウォーキングや水泳など、少し息が切れる程度の有酸素運動がおすすめです。

睡眠を十分に取る

慢性腎臓病の患者が睡眠障害を患っている場合は、血液のろ過機能が低下する確率が高いといわれています。また、肥満患者に多くみられる睡眠時無呼吸症候群は慢性腎臓病の発症のリスクを高めるとされています。
日ごろから早寝早起きを心がけることはもちろんですが、根深い睡眠の悩みがある場合は、専門の医療機関に相談し、根本から解決をしましょう。

禁煙と減酒

喫煙は生活習慣病の原因になるだけでなく、腎臓に負担をかけます。先ほども述べましたが、禁煙をするようにしましょう。

また、飲酒は適量であれば、血管を拡張させて血流を促進するなどの効果があり、腎臓の働きが低下することはないといわれています。しかし適量には個人差があるので油断はできません。飲み過ぎないように自分をコントロールし、必ずお酒を飲まない日(休肝日)を設けるようにしましょう。

慢性腎臓病の症状 ― こんな症状があるときは病院へ!

以下のような症状が3ヶ月以上続く場合は、慢性腎臓病の疑いがあると判断され、精密検査が行われることがあります。

  • 蛋白尿や血尿などが起こる
  • 画像診断結果で腎障害が発見される
  • 腎機能が低下している

上記の「腎機能の低下」とは、クレアチニン(Cr)と呼ばれる血液中に含まれる老廃物の一種と、GFR(eGER)と呼ばれる年齢や性別から導かれた数値をもとに判断します。eGERの正常な値は100ml/分/1.73㎡ですが、腎臓機能が低下すると60ml/分/1.73㎡未満になり(末期腎不全)、この場合は透析治療や腎移植を受ける必要があります。

一般的に慢性腎臓病はあまり自覚症状がないため発見が難しいのですが、早期に治療ができれば治癒や症状の悪化を抑えることが可能なため、早期発見が望まれます。

慢性腎臓病は尿検査や血液検査で以下のような初期兆候がみられるため、早期発見には定期的な健診が重要になってきます。

  • 尿検査で蛋白の陽性(+)反応が出る
  • 血液検査でクレアチニン(血清クレアチニン:Cr)の数値の上昇がみられる

慢性腎臓病が進行したときに現れる症状

慢性腎臓病は、症状が出たころには病態がかなり進行していることが多いです。症状としては、だるさ、食欲不振、頭痛、吐き気、むくみ、動悸、息切れ、高血圧、貧血などが現れるようになります。骨が弱くなることもあります。
気になる症状があるときは、すぐに病院で診てもらいましょう。

慢性腎臓病になってしまったとき、食事で気をつけることは?

慢性腎臓病になってしまった場合には、腎臓に負担がかかるタンパク質と塩分、カリウムの制限を行い、エネルギーをしっかりと維持することが必要です。
タンパク質は筋肉などのもとになる重要な栄養素ですが、過度に摂取したものは尿で排出されます。この排出の際にタンパク質が腎臓をさらに傷つけることがあります。
制限の程度は慢性腎臓病の病状によって異なりますので、必ず医師や栄養士の指示に従って下さい。

また、塩分は高血圧の原因になるだけでなく、体内に水分を溜める効果もあるため腎機能の低下と相まってむくみの原因となり、心不全や肺水腫などの重篤な合併症を併発することもあります。一般的には、一日の塩分摂取量が6g以下であることが推奨されます。

さらに、カリウムは尿と共に排出される栄養素ですが、腎機能が低下した状態が続くとカリウムが排出されなくなって吐き気やしびれ、脱力などを引き起こすことがあり、重症な場合には不整脈を生じて突然死につながることもありますので注意が必要です。

このような食事制限をしながらも、慢性腎臓病の人は十分なエネルギーを摂る必要があります。エネルギーが不足してしまうと、筋肉などに蓄えられているタンパク質が分解されることになり、腎臓への負担が大きくなってしまいます。タンパク質を制限するとカロリーが不足しがちになりますので、砂糖や油分などカロリー源となる食材を多く摂る工夫をしましょう。

慢性腎臓病におすすめのレシピ

慢性腎臓病の人は食事に注意を払わなくてはなりません。ここでは、つらい食事制限も楽しく乗り越えるためのおすすめレシピを3つご紹介します。

レタスの煮びたし

だし汁にしょう油、みりんを、砂糖などの調味料を加えて適度な味に調整します。そこに、一口大にちぎったレタス、しめじ、厚揚げを投入して弱火で10分ほど加熱したら完成です。
あっさり味で満足度の高いメインメニューにもなる一品です。

肉野菜いため

がっつり食べたいときのおすすめメニューです。キャベツなどカリウムが気になる野菜類は料理前にしっかり茹でて下ごしらえをすれば、カリウム量を軽減することが可能です。
キャベツは一口大に切って、しっかり茹でます。サラダ油を熱したフライパンで茹でたキャベツ、玉ねぎ、豚肉をいため、しょう油や鶏がらスープの素、砂糖などで味付けすれば完成です。

フレンチトースト

食事制限中でもしっかり甘いおやつも食べたい!という人におすすめのレシピです。食パンは米粉などを用いた低たんぱくパンを使用すると尚よいです。
卵と練乳をよく混ぜ合わせ、パンを一晩漬けこみます。よく熱したフライパンにバターを熱し、漬け込んだパンを弱火でこんがり焼けば完成です。

おわりに:慢性腎臓病を予防するため、食事や生活習慣の改善を

慢性腎臓病の発症や悪化には、生活習慣の乱れや生活習慣病が深く関わっていると考えられています。日頃から食事内容や運動量に気を配り、できる限り慢性腎臓病の予防を心がけましょう。

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