記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/8/3
記事監修医師
前田 裕斗 先生
乳がんにはいくつかのタイプがありますが、女性ホルモンもHER2タンパクも関係しない「トリプルネガティブ乳がん」の場合、再発率が高いというのは本当でしょうか?また、治療の選択肢としてはどんなものがあるのでしょうか?
乳がんはその特徴から、大きく以下の3つに分類されており、タイプによって治療方針が異なります。
トリプルネガティブ乳がんは、女性ホルモンもHER2タンパクも関係しないタイプです。乳がん患者全体の約1割が該当しますが、増殖能力が高く、治療薬が限られているということから予後不良といわれています。比較的若い年代の乳がんに多く、他のタイプに比べて3年以内の再発が多いといわれています。
しかし、再発をせずに3年を超えると、今度は他のタイプに比べて再発率がぐっと低下することも大きな特徴とされています。
乳がんの治療薬には、ホルモン剤、分子標的(ぶんしひょうてき)治療薬、抗がん剤の3つの選択肢があります。
ホルモン剤には、女性ホルモンを減らしたり、女性ホルモンとがん細胞が結びついて作用することを防ぐ薬があります。分子標的治療薬は、HER2タンパクががん細胞を増殖させる作用のじゃまをする薬です。乳がんのタイプ分類がされるようになったことで、より効果が期待される薬剤が治療に用いられるようになりました。
しかし、トリプルネガティブタイプの乳がんは、女性ホルモンもHER2タンパクも関与していないため、ホルモン剤や分子標的治療薬の効果は期待できません。現状では抗がん剤のみしか選択肢がなく、いくつもの薬の効果を試しながら治療を行っていきます。
近年では乳がんの研究が進み、トリプルネガティブタイプ乳がんがさらに細かくサブタイプに分類されることがわかってきています。また、それぞれのサブタイプのがん細胞を使った研究では、薬剤に対しての反応がサブタイプごとに大きく異なる可能性が示されています。今後は、トリプルネガティブタイプ乳がんのサブタイプへの診断が早期に行われることや、サブタイプの薬剤への反応の違いが明らかになることで、より高い効果が得られる薬剤が治療に用いられることが期待されています。
乳がんといっても、原因によっていくつかのタイプに分類されることがわかっています。中でもトリプルネガティブ乳がんは、若年性で多くみられ、3年以内に再発しやすく予後不良のタイプです。そして、ホルモン剤や分子標的治療薬が有効ではないことから、抗がん剤のみに治療方法が限定されています。今後の乳がん研究の進展や新薬の開発に期待しましょう。