テニス肘は治らないって本当?どうすれば痛みはなくなるの?

2018/7/31

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

テニス肘は、手首や肘に負荷がかかったときに、肘の外側に強い痛みを感じる疾患です。テニスをする方以外にも年齢を重ねた方で多く、一度なってしまうとなかなか治りにくいといわれています。
では、テニス肘が治りにくいといわれるのはなぜなのでしょうか?また、どうすれば痛みをなくすことができるのでしょうか?

テニス肘は治療しても治らないの?

テニス肘の方の9割は、6ヶ月〜1年以内に症状の改善、治癒ができます。治療法は保存療法と呼ばれ、患部を安静にしたり、運動療法でもともとの筋力を強化したり、物理療法で血行を良くしたり、というように疾患部位の切除や切開を伴わない治療が行われます。

保存療法ってどんな種類があるの?

保存療法には、以下のような種類があります。

患部の安静
  • 肘の筋肉の太い部分に巻き、筋肉の動きを抑える
  • 手首にもサポーターをするとより有効
運動療法
  • ストレッチ…肘だけでなく肩から手関節まで腕全体を行う
  • 筋力強化…ペットボトルやダンベルでトレーニング
物理療法
  • 温熱療法…入浴などで血行の促進をはかる
  • マイクロ波…電磁波を流して代謝を亢進する
薬物療法
  • 鎮痛・消炎のために一時的に行われる
  • 湿布や内服薬、注射などが使われる

このうち、根本的な治療法としてメインに行うべきなのは運動療法です。テニス肘が中高年の方に発症しやすいのは、年齢を重ねることで患部に同じ負荷をかけ続けていることの他、加齢によって筋力が衰えていること、筋肉と骨を繋ぐ腱が固く切れやすくなっていることが原因として考えられます。

ストレッチや温熱療法で固くなった筋肉や腱をほぐし、衰えた筋力を鍛えて取り戻すことが、テニス肘の治療にとって非常に大切です。

テニス肘の1割は手術療法で治す

テニス肘の残り1割は、保存療法では治療できないため、難治性テニス肘と呼ばれます。保存療法を始めて6ヶ月〜1年以上経過しても治らない場合、肘の炎症が慢性化した場合に手術療法が適用となります。

治療の基本は患部の安静・筋力トレーニングから

テニス肘を発症した場合、まずは患部の安静をはかります。テニス肘の生じている部分は肘の筋肉の最も太い部分ですから、該当部分に専用のバンド(テニスエルボーバンド)を巻き、筋肉の動きを抑えます。このとき、手首のサポーターも同時に使うとより効果的です。

少し症状が落ち着いてきたら、ストレッチと筋力強化の運動療法を行います。ストレッチでは、肘だけでなく肩から手首や指の関節まで、腕全体の筋肉をしっかりと伸ばしましょう。痛みがなくなってきたら、筋力トレーニングが有効です。1kgのダンベルや水を入れたペットボトルなどの軽めの負荷を使い、手首から肘の筋肉の屈伸を行って、加齢とともに低下した筋力を取り戻しましょう。

物理療法・薬物療法の使い方って?

ストレッチや運動療法と併用し、温熱療法や薬物療法が使われることがあります。

物理療法とは理学療法とも呼ばれ、温熱療法とマイクロ波の二種類があります。温熱療法は名前の通り入浴などで患部を温めて血行促進をはかり、自然治癒力を高める方法です。マイクロ波は、一般家庭で普及している電子レンジと同程度のごく短い電磁波を患部組織に流し、代謝を高めて血行を促進します。

薬物療法は、症状が特に重い場合に一時的に使用されます。湿布や内服薬で鎮痛・消炎を行う場合と、症状が深刻な場合に行われる局所麻酔やステロイド注射があります。局所麻酔は痛みの強いポイントにのみ注射して痛みを抑えるもので、ステロイド注射は患部に注射して炎症を抑え、症状を緩和する療法です。ステロイド注射は繰り返し投与すると組織を弱くしてしまうため、多くても2〜3回程度とされています。

自己多血小板血漿(PRP)療法って?

近年、PRP療法という血液内の血小板のみを抽出し、組織の再生を促す再生医療が注目されています。血小板とは、かさぶたを作るだけでなくその下で新しい皮膚の産生にも関わっている成分です。本人の血液を使うため拒絶反応の心配がなく、安全性の高い再生医療です。

しかし、テニス肘でのPRP療法の治療例や既存療法との比較試験はまだ少なく、既存の保存療法や手術療法と比べて有用であるという結果は出ていません。PRP療法を行うためには今後、臨床試験や研究を行い、治療の有効性を確立する必要があります。

テニス肘がなかなか治らないのはなぜ?

テニス肘は、患部に同じ負荷を与え続けることで発生する疾患です。特に、テニスなどのスポーツを行っている方は間違ったフォームのまま運動を続けていると再発しやすいです。また、スポーツでなくても普段から仕事や家事などのルーティンワークで同じ筋肉ばかり使うことが多い方も再発しやすいため、注意が必要です。

再発予防のためにできることは?

まずは、保存療法の項目でもご紹介したとおり、ストレッチと筋力トレーニングを普段から心がけましょう。テニス肘の症状である痛みが治まった後も、運動前後や合間にストレッチを行うこと、毎日の筋力トレーニングは非常に重要です。筋肉や腱を正しく鍛え、強度を上げて断裂や炎症の起こらない筋肉を作りましょう。

サポーターを正しく使う

テニス肘の治りにくい方の一部に、テニスエルボーバンドの巻き方が間違っている方がいます。肘を伸ばした状態でバンドを装着してしまうと、肘を曲げたときに筋肉が細くなってゆるんでしまい、筋肉の動きを抑える働きをしないのです。

テニスエルボーバンドは、必ずひじを曲げた状態で装着しましょう。

おわりに:テニス肘は筋力トレーニングで治そう!

テニス肘は治らない疾患ではありません。特に、9割の方は6ヶ月〜1年以内に、ストレッチや筋力トレーニングといった治療法で治すことができます。患部にメスを入れることがないため、安全な治療法です。

しかし、完治したからといってトレーニングをやめてしまうと、筋力の衰えや腱の固まりが再発してしまいやすい疾患でもあります。再発を防ぐために、普段からストレッチや筋力トレーニングを欠かさないようにしましょう。

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