マラソンでの栄養補給のコツは?

2018/7/23

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

マラソンの完走や目標距離の達成のために、重要なカギとなってくるのが「栄養補給」です。今回はマラソンランナーなら知っておきたい、栄養補給のコツについてお伝えしていきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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マラソンの完走は栄養補給がカギ!

フルマラソンやハーフマラソンなど、マラソンにはいろいろな種類がありますが、42.195kmのフルマラソンに必要なエネルギー量は、体重60kgの人の場合およそ2530kcal(60kg×42.195kcal)となります。

この2530kcalというのは、成人男性が1日で必要とする食事量と大体同じくらいのエネルギー量です。フルマラソンを完走するまでにかかる時間によっては、さらに多くのエネルギー量が必要になってきます。

この走るためのエネルギーが不足すると、体にはさまざまな不調が現れるようになります。具体的には足が動かなくなる、頭がぼーっとするなどエネルギー切れの状態に陥り、完走ができなくなってしまうのです。

つまり、フルマラソンを完走するにはエネルギー補給が重要です。そして、長時間のマラソンでのエネルギー源となるのは、筋肉や肝臓に蓄えられている「筋グリコーゲン(食事で摂取した糖質が体内で分解され、筋肉や肝臓に蓄えられたときの名称)」という糖と、脂肪の両方です。
この筋グリコーゲンは糖質の摂取が足りないとどんどん減少するため、いくら脂肪が体脂肪として蓄積されていても燃料不足に陥り、エネルギーを生み出すことができなくなってしまいます。そのため、マラソンの前やマラソン中にいかにうまく糖質を補給できるかどうかが重要になってくるのです。

マラソン前日の栄養補給のポイントは?

マラソンの完走や目標距離を達成するには、大会の3日前から糖質(炭水化物)を補給し、筋グリコーゲンを満タンにしておくことが重要です。具体的には、以下のような食事を心がけましょう。

一日3食、主食をとる(ご飯、パン、麺類など)
ビタミンB1の補給
ビタミンB1は、炭水化物を効率よくエネルギーに変換する作用があるといわれています。ビタミンB1は豚肉や納豆、豆腐などの大豆製品に多く含まれています。

なお、前夜は脂っこい食事は控えましょう。当日の朝にも胃に油が残ってしまい、必要な食事が必要なタイミングで食べられず、肝心のレース中にエネルギー切れを起こす恐れがあるからです。

マラソン当日の栄養補給のポイントは?

マラソンの当日は、スタート時間の3〜4時間前には糖質を含む朝食を済ませてください。朝食で補給したエネルギーは会場への移動中も消費されてしまうので、スタートの1時間前になったら、バナナ1本、カステラ1切、羊羹60gなど200kcal相当の糖質をさらに補給しましょう。さらに30分前になったら、吸収効率の良いエネルギーゼリーなどで糖質を追加補給してください。

そしてマラソンが始まってからの栄養補給は、基本的には1時間に1回のペースで、100〜200kcal程度の糖質摂取を行うようにしましょう。補給のタイミングは「お腹が空く前」です。お腹が空いたと感じたときには、すでに筋グリコーゲンが空になりかけています。

なお、特にフルマラソンの場合は、捕食の置いてあるエイドステーションがスタート地点から20〜30kmほど離れたところにあるので、エネルギーゼリーや羊羹などを入れた小ぶりのウエストポーチなどを携帯して、10kmごとに糖質補給をするようにしてください。

また、エイドステーションには美味しいものがたくさん用意されているため、つい食べ過ぎてしまう人も少なくありませんが、走っている最中は血液が筋肉で消費される一方、内臓には行き渡りにくくなります。つまり、消化吸収能力がかなり低下している状態なので、たくさんの固形物を食べると胃の中に残ってしまい、腹痛などを招きます。食べ過ぎには注意してください

おわりに:栄養補給のタイミングや量を見極め、マラソンを完走しよう!

マラソンを完走するには、栄養バランスや補給のタイミングをしっかり計算することが非常に重要です。途中でエネルギー切れを起こさないためにも、レース中は適度な糖質補給を欠かさず行いましょう。初心者の人はとくに無理をしやすいので気をつけてください。

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