記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
アトピー性皮膚炎であっても「病院へ行く時間がなかなかない」という人は、気軽に手に入る市販薬に頼りがちです。では、アトピー性皮膚炎は市販薬で治すことはできるのでしょうか。また、よく処方されるステロイド薬は、使ってかえって皮膚症状が悪化する恐れはないのでしょうか?以降で解説します。
アトピー性皮膚炎は、皮膚疾患の中でもとくに多くの人が悩まされているといわれています。乳幼児に発症しやすく、成長とともに改善していくことが多いのですが、症状が重症化したりなかなか治らなかったりして、大人になっても症状が落ち着かずに残ってしまう人も少なくありません。
アトピー性皮膚炎の原因はいまだはっきりしておらず、メカニズムも明確ではありません。そのため、自己判断で市販薬で対処しようとすると、かえって症状を悪化させてしまう恐れもあります。アトピー性皮膚炎かな?と思うようなかゆみや湿疹が繰り返し起こるようになったら、まずは皮膚科で診てもらいましょう。
アトピー性皮膚炎には、3つの治療法があります。
アトピー性皮膚炎の人は皮膚のバリア機能が弱っているので、皮膚を清潔に保つために入浴やシャワーが必要です。入浴後は肌が乾燥しないように保湿剤を塗布してバリア機能を高めるようにしてください。
赤みやかゆみといった皮膚の炎症には、塗り薬(外用薬)を使用します。まずは炎症を鎮めることが目的の治療です。またかゆみへの対処として内服薬を使用することもあります。
ハウスダストやダニといった環境因子を始めとして、汗やストレスなどもアトピー性皮膚炎を悪化させる因子です。症状の状態や検査をして何が悪化因子となっているかを探し、その因子を避けることによって悪化を防ぎます。
病院に行って処方される主な薬は、外用薬としてのステロイドや免疫抑制薬、内服薬としての抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬です。これらは市販薬と配合量や効果の仕組みが異なっているため、やはり病院で処方してもらった薬を使ったほうが治りやすいことを実感できるかと思います。
ステロイドがアトピー性皮膚炎の治療に必要だとわかっていても、使うのに抵抗がある人も多いでしょう。ステロイドは、上手に使用することができれば怖いものではありません。炎症を抑えることができれば、そのうちステロイドはやめることができます。
確かに、急にステロイドの使用をやめてしまうと、リバウンドといって症状が悪化する可能性もあります。しかし、炎症の原因をちゃんと取り除くことができていれば、ステロイドを中止して発生するリバウンドは防ぐことができます。
しかし、注意が必要なのは「ステロイド依存」です。長期でステロイドを使用したことによって、皮膚がステロイドを自ら作れなくなってしまう可能性があるといわれています。これは強いステロイドを大量に長期にわたって使用することで起こる可能性がありますが、一般的に起こることではありません。不適切な強さ・量のステロイドを長期にわたって使用しないよう、医師と相談しながら使うことをおすすめします。
さらにもう1つリスクとしてあるのは「骨への影響」です。ステロイドの副作用として、骨に影響が出ることもありますが、これはあくまで飲み薬の場合です。塗り薬での使用は、骨に影響が出るほどの悪い影響はないと考えられています。
ステロイドに副作用がない、というとウソになってしまいますが、アトピー性皮膚炎の治療には必要な薬です。あまり敏感になりすぎず、医師からの指示を守って適量を使用しましょう。
アトピー性皮膚炎に市販薬を使っても、なかなか治りません。病院で診察を受け、適切な治療を受けたほうが早く治すことができます。
なお、アトピー性皮膚炎の治療ではステロイドが主に使用されますが、適切な使用であれば身体への影響は心配しなくても大丈夫です。医師の指示に従い、根気よく治療を続けていきましょう。
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