記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
アトピー性皮膚炎には強いかゆみを伴ううえ、何度も再発してしまい、生活に支障をきたす可能性があります。アトピー性皮膚炎の治療では、なるべく皮膚を良い状態に保ち、症状を抑えることが大切になってきます。この記事では、アトピー性皮膚炎治療で重要になる「3つの柱」について解説します。
アトピー性皮膚炎の治療目標は「症状がない状態」または「症状が軽くて、日常生活に支障がない状態」もしくは「軽い症状はあるが、急に悪化しない状態」を維持することです。そのためにスキンケア、薬物治療、悪化因子の除去という「3つの柱」が重要になります。
なお、アトピー性皮膚炎治療において、3つの治療法はどれも大切ですが、一人ひとりで最適な組み合わせは異なります。そのため、実際の治療では重症度や原因などを考慮し、自分に必要な治療を行うことになります。
1つ目は「スキンケア」です。アトピー性皮膚炎の原因には、「皮膚のバリア機能」が弱っていることがあります。そのため、皮膚を清潔にして、保湿する必要があります。なお、アトピー性皮膚炎の症状が和らいでいるときにも、スキンケアを行うようにしましょう。
皮膚のバリア機能を高めるためには、まず「皮膚を清潔」にする必要があります。そこで、入浴・シャワーのときには以下のポイントを守るようにしましょう。
なお、入浴やシャワーで身体を温めすぎると、かゆみが起きてしまうので注意してください。そのほか、洗っている間に刺激を与えないことも大切なポイントといえます。
入浴やシャワーを行うと皮膚の脂分も流されてしまうので、そのままにしておくとすぐに皮膚が乾燥してしまいます。そのため、皮膚をきれいにした後には「皮膚を保湿」する必要があります。
保湿剤にはさまざまな種類があるため、使用感がよいものを選ぶといいでしょう。また、保湿剤を塗るときは、「やさしく手のひらで広げる」ことがポイントです。入浴してから5分を過ぎると乾燥しはじめ、入浴後30分では入浴前より乾燥してしまいますので、入浴後にすぐ保湿剤を塗る必要があります。
2つ目は「薬物療法」です。現時点ではアトピー性皮膚炎を根本から治す薬はないので、対症療法が行われます。また、薬には大きく外用薬と内服薬がありますが、基本的には外用薬を中心に使用され、内服薬は補助的に使用します。
アトピー性皮膚炎の治療では、主に外用薬を使用して症状の緩和を目指します。この外用薬にはステロイド外用薬とタクロリムス軟膏の2種類があり、違いは以下の通りです。
なお、中には「ステロイド薬を怖い薬」だと思っている人もいるかもしれません。しかし、ステロイド薬は、適切に使用することでアトピー性皮膚炎の症状緩和を目指すことができます。ステロイド薬の塗る量や塗り方など、使用方法を守るようにしてください。
内服薬には、主に抗ヒスタミン薬と免疫抑制薬の2種類が使われています。場合によっては、ステロイド内服薬、漢方薬などを使用する場合もあります。なお、抗ヒスタミン薬などの使用はあくまで補助的な治療であって、これだけを服用していてもアトピー性皮膚炎の炎症やかゆみを抑制できません。
3つ目は「悪化因子の除去」です。アトピー性皮膚炎の悪化要因はたくさんありますが、ここでは環境因子とその他の悪化因子に分けて見ていきます。ただ、一人ひとりで悪化因子は異なるため、診察や検査などで悪化因子を見つけることが重要になります。
環境因子にはたとえば、ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛などがあり、これらもアトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があります。そのため、もし生活環境に悪化因子があるようなら、部屋をこまめに掃除したり、換気したりするようにしましょう。
食物、石鹸、化粧品、汗、気温・湿度、精神的ストレスなども、アトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があります。もしこれらの中にアトピー性皮膚炎の原因が見つかった場合は、それを取り除くようにしましょう。
現在のアトピー性皮膚炎治療では「スキンケア」「薬物療法」「悪化因子の除去」という3つの柱が大切となっています。しっかりとこれらの治療に取り組んで、症状を和らげて、日常生活に支障が出ないようにしていきましょう。
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