オピオイドローテーションってどんなときに行われるの?

2018/7/30 記事改定日: 2019/4/16
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

がんなどの強い痛みや、他の痛み止めが効かないときに使われる医療麻薬「オピオイド」は正しく使えば非常に効果的な鎮痛薬となります。
今回はオピオイドを使った治療法であるオピオイドローテーションについて、その定義や実施される条件などを、わかりやすく紹介していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

オピオイドとは

オピオイドとは、強い鎮痛作用を持つ「麻薬性鎮痛剤」の総称です。
明確な作用機序は解明されていない部分も多々あるとされていますが、中枢神経や末梢神経に存在するオピオイド受容体に結合することで、痛みを和らげる効果が生じると考えられています。

植物由来の天然オピオイド、化学的に合成されたオピオイド、体内で産生される物質を利用した内因性オピオイドなど様々な種類があります。

オピオイドローテーションとは

オピオイドローテーションとは、以下のような事情からオピオイドが十分に投与できない、または求める効果が得られないときに、オピオイドの種類を変更することです。

オピオイドローテーションが検討されるケース

  • オピオイドへの副作用のために、鎮痛効果を得られるだけの量を投与できない
  • オピオイドを投与しているにもかかわらず、期待するような鎮痛効果が得られない

具多的には上記2件の要件に当てはまり、かつ以下に示す条件にあてはまる場合に、オピオイドローテーションが適応されます。

  • オピオイド投与を阻害する副作用に十分な対策をとったが、改善が見られないとき
  • 副作用への対症療法に加え、他の原因から改善を図ったが効果が見られないとき
  • オピオイドを適切に増量したものの、十分な鎮痛効果が得られないとき
  • モルヒネの投与患者で腎機能が低下しており、強い眠気やせん妄が見られるとき
  • 同一のオピオイドのまま、投与経路を変えることが不可能なとき

オピオイドローテーションが必要となる副作用とは?

オピオイドローテーションが必要となる副作用には、以下のようなものが挙げられます。

眠気
オピオイドの投与開始から1週間以内に治まる副作用だが、1週間以上たっても軽減されず、かつ他の原因が考えられない場合にオピオイドローテーションが必要になる。
掻痒感(そうようかん)
オピオイド投与により身体が痛痒いような感覚に見舞われ、かゆみや炎症を抑える外用薬や5-HT3受容体拮抗薬でも改善しない場合は、オピオイドローテーションが必要になる。
ミオクローヌス
オピオイド投与時に、四肢など1つ以上の筋肉に短時間で不随意な収縮(ミオクローヌス)があり、薬物療法で効果がない場合はオピオイドローテーションが必要になる。
痛覚過敏
オピオイド投与で通常よりも痛みに敏感になり、投与量を増量すると痛みが増すようであれば、オピオイドの減量や中止、ローテーションが必要になる。

上記までにご紹介した、オピオイドローテーションが必要となる副作用や要件は、あくまで目安です。
実際のオピオイドローテーションは患者に現れている副作用の程度・体調を見ながら、専門知識を持つ医療チームによって、慎重に実施されます。

おわりに:オピオイドローテーションの実施は、慎重に検討される

オピオイド投与により強い副作用が出る、または鎮痛作用が不十分と判断された場合は、薬の種類を変更して対処するオピオイドローテーションが検討されます。ただし、オピオイドローテーションは簡単にできるものではなく、実施には専門チームによる慎重な検討が必要です。オピオイドローテーションが必要となる副作用・要件の目安は決められているものの、実際に行われるのはまれであると理解しておきましょう。

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