過食症の原因は?放置すると体にどんな影響があるの?

2018/7/31 記事改定日: 2019/6/12
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

過食症などの摂食障害は、10~20代の若い女性がなりやすく、回復までに長い時間がかかる傾向にあります。そこで今回は、過食症の原因などをご紹介します。

過食症の原因は?

食行動の異常である摂食障害は、食事を拒否する「拒食症」と、大量の食べ物を一度に食べる「過食症」の2つに大別できます。

過食症の原因としては、痩せていることを良しとする風潮を受け、体重への関心が増すことで発症する可能性が高くなるといわれています。また初めは軽い気持ちから体重制限によるダイエットを始めた場合でも、次第に食べることへの恐怖心が生まれることから過食の後に嘔吐を繰り返すこともあります。
他にも、自己肯定感の低さや抑うつ症状なども発症の原因のひとつとして考えられ、子供の頃の虐待なども関係していると考えられています。

また最近では、低血糖症によって過食症などの摂食障害が引き起こされることがわかっています。低血糖症とは炭水化物などの糖分を多くとることで血糖値が急激に上がり、血糖値を下げるはたらきのあるインスリンが過剰に分泌されて身体にさまざまな症状が現れる病気のことをいいます。

このとき、急激に血糖値が低下することによって、脳に糖分を送ることができなくなります。すると、脳が緊急事態を察知して攻撃ホルモンと呼ばれるアドレナリンが分泌され、脳が食べるように指示を出すと考えられています。このような状態に陥ると、自分の意志で食欲などをコントロールできなくなり、一度に大量の食べ物を食べてしまう過食症につながるといわれています。

過食症とストレスの関係性は?

過食症の原因は上で述べたように様々な原因がありますが、なかでも精神的に過剰なストレスが原因になっていることが多いとされています。

ストレスは食欲中枢の異常を引き起こすことがあり、慢性的なストレスを感じることで過大な食欲が生じ、過食症につながることがあるのです。また、好物を食べることでストレス解消をしている人は、知らず知らずのうちに大量の食事を摂ってしまうこともあり、過食症を発症するきっかけになることもあります。

ストレスによる過食症を防ぐためにも、日頃からストレスが溜まりにくい生活を心がけるのはもちろんのこと、食事を摂ることによってストレスを解消している人は適度な量にとどめるよう注意しましょう。

過食症の原因は家族にもある?

過食症などの摂食障害は、家族との関係性などに強く影響を受けているという声もあります。しかし、家族の存在や関係性だけが原因となっているわけではありません。前項での説明の通り、さまざまな原因があるだけでなく、家族との関わりは過食症の克服を大きく左右するといわれているためです。

過食症を本人だけで回復させることは簡単ではなく、過食症を治すためには家族の接し方などに配慮を必要とする場合があります。たとえば、過食症になっていることなどを家族が受け入れ、生活の中で本人ができたことに注目して褒めるなど、安心感を与えて自己肯定感を高めることなどが挙げられます。過食症というと、「食べた」「食べなかった」など食事のことに注意が向きがちですが、生活全般のことに目を向け、本人の味方であることを言葉や態度などで示すことが重要といえます。

過食症を放置すると、体にどんな影響が及ぶ?

症状が治まったように見えても再発しやすい過食症は、そのまま放っておくだけで治るものではないといわれています。過食症などの摂食障害では、心不全や感染症などの合併症を引き起こす場合もあり、発症した人の半数は回復するまでに約5年以上、2~3割は約10年以上という長い時間がかかるという報告もあります。

また、死亡率は自殺も含めると5~10%といわれ、精神疾患の中で最も高いことも指摘されています。こうした重症化を避けるためにも、本人や周りの人が気づき、病院の受診による治療が望まれます。

もしかして過食症?と思う症状がみられたら

過食症の場合、過度に体重や体型を気にする傾向にあり、食欲や食事の量にそれまでとは違った変化がみられる場合があります。また過食症の特徴のひとつである自発性の嘔吐によって、前歯が手に当たってできる「吐きダコ」と呼ばれる症状が現れることもあります。

さらに精神的に不安定になることが多く、体重の増加に強い恐怖感や不安を感じることや、些細なことでイライラするなどの症状がみられることもあります。

このように体重の増加によって気分の浮き沈みが激しかったり、自己評価が変わったりする場合には過食症が疑われます。早めに病院を受診し、治療を開始することが望まれます。

おわりに:過食症が疑われたら、早めに病院へ

過食症は心との関係が深く、再発することもある病気のひとつです。また放置すると悪循環を招き、回復から遠ざかってしまう傾向にあります。過食症の症状がみられたら、早めに病院を受診することをおすすめします。

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