手の多汗症とは ― 手汗が止まらない原因と治療法、副作用を解説

2018/8/22

谷口 隆志 先生

記事監修医師

川崎たにぐち皮膚科、院長

谷口 隆志 先生

大量の手汗が止まらなくなり、ハンカチが手放せなくなってしまうこともある手の多汗症。今回はこの手の多汗症についての原因や治療法、そして治療に伴う副作用などを広く解説していきます。

ふいてもふいても手汗が・・・手の多汗症の原因は?

多汗症(たかんしょう)とは、その名のとおり、大量の汗をかいてしまう病気です。その中でも「手のひら」に多く汗をかいてしまう状態を「手掌(しゅしょう)多汗症」といいます。人間の発汗を活発にしているのは、自立神経のひとつである交感神経系です。この交感神経の作用が過剰になることで汗の量が多くなってしまうと考えられます。

薬の影響や、内臓の病気など明らかな原因がない原発性局所多汗症は、家族に多汗症の人がいるとなりやすいなど遺伝が疑われており、現在も研究が行われています。また、もともとの体質に加えて、ストレスや、緊張や不安、生活習慣の乱れなどが交感神経を刺激しているとも考えられています。

原発性局所多汗症の診断基準として、局所的に過剰な発汗が明らかな原因が無いまま6ヶ月以上続いていて、

  1. 最初に症状が出るのが25歳以下であること
  2. 対称性に発汗が見られること
  3. 睡眠中は発汗が止まっていること
  4. 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
  5. 家族歴が見られること
  6. それらによって日常生活に支障を来たすこと

の6項目中2項目以上を満たすことという基準が提唱されています。

手の多汗症では、常にハンカチが手放せないという人もいるほどです。運転中のハンドルが汗ですべれば、大きな事故につながらないともいえません。また、仕事上でも扱っている商品に汗が入ったり、汗ですべって壊したりといったことでトラブルになることもあるでしょう。手の多汗症の人はこういったトラブルが怖くなり、人と接することが不安になってしまうこともあります。

手の多汗症はどうやって治療するの?

手の多汗症の治療法には、塩化アルミニウム液などの外用薬やボツリヌス毒素局所注射、イオントフォレーシス、抗コリン薬などの内服薬などがあります。ボツリヌス毒素局所注射はA型ボツリヌス毒素と呼ばれるボツリヌス菌からつくった製剤を注射することで交感神経の作用をおだやかにします。イオントフォレーシスは、弱い電流を流した水に患部を入れることで汗を抑える効果を期待する治療です。また、不安や緊張をやわらげるための心理療法を併用することもあります。しかし、いずれの方法でも完治するということではありません。

手の多汗症に対してその他に、内視鏡を用いて交感神経を手術する「ETS」があります。ETSは「胸腔鏡下交感神経節遮断術」ともいわれます。多汗症への効果が高く、手のひらだけではなく、わきの下や首といった場所の多汗症にも効果的という報告がみられます。

手の多汗症の手術って、副作用はないの?

手の多汗症に対して、ETSの効果は高いという報告はあります。しかし、手のひらや、首、わきの下の汗が減る一方で、胸部や腹部、太ももといった部分の汗が多くなる代償性発汗が起こることがあります。また、人間は汗をかくことで体温を調節していますが、発汗のバランスが手術前と変わることで、首や顔が熱くなるという人もいます。さらに、汗が少なくなった手のひらが、カサカサになってしまうということもあります。

こういった副作用には個人差があり、手術前に予測することは難しいでしょう。手術はメリットだけではなく、デメリットがあるということも理解して、治療を受けるかどうかを決めていきましょう。

おわりに:ETSは効果が期待できるがデメリットもある。きちんと理解したうえで意思決定をしよう

手の多汗症では、仕事や、生活、人間関係に支障がでることもあります。治療は、外用薬やイオントフォレーシス、ボツリヌス毒素局所注射や心理療法、ETSも用いられています。ただし、ETSには副作用もあるため、治療の前にはしっかりと説明を聞き、デメリットについても理解をして選択をすることが必要でしょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

治療(462) 副作用(93) 原因(609) 手術(138) 多汗症(10) 代償性発汗(2) 手汗(1) ETS(1) ボツリヌス毒素局所注射(1)