記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
乳糖(ラクトース)がうまく消化できず、下痢や腹部のけいれん痛などを起こす「乳糖不耐症」。特に大人はなりやすいといわれていますが、その原因とは何なのでしょうか。症状や対処法と併せてご紹介します。
「乳糖不耐症」は、牛乳に含まれる「乳糖(ラクトース)」という糖質が消化できず、下痢や腹部のけいれん痛などを起こす症状です。
乳糖を吸収するには、小腸の前半部分から分泌される「ラクターゼ」という乳糖分解酵素が働く必要があります。しかし、このラクターゼが正常に働かなくなると乳糖は分解されずにそのまま大量に大腸に進み、腸壁から腸管内へ水分を引き寄せて下痢を引き起こします。同時に、腸内細菌によって分解されてできた酪酸によって大腸の収縮運動が活発になり、排便がうながされます。
小腸でラクターゼがしっかりと働いていれば下痢になることはありませんが、日本人を含むほとんどのアジア人(90%以上)では、ラクターゼは加齢とともに減っていきます。ラクターゼは高校生の時点で乳児期の1/10になるといわれ、大人の乳糖不耐症は、体質にもよりますが、高齢になると起こりやすい避けられない症状、正常な状態ということもできます。
大人の乳糖不耐症では、通常250~375mL以上の牛乳を飲んだときだけ症状があらわれます。腹部の膨満、けいれん痛、水様性の下痢、吐き気、腹鳴、腸のゴロゴロ音などがあり、牛乳を飲んだ後あるいは乳糖を含む食事の後、30分から2時間で切迫した便意が起こることがあります。
重度の下痢によって体内から栄養素が急速に排泄され、栄養素がうまく吸収されなくなる場合もありますが、乳糖不耐症によって起こる症状は一般的に軽度です。ただし、個人差はありますが、年をとってもラクターゼが全く無くなるわけではなく、牛乳をコップ2~3杯飲んだくらいでは症状があらわれない人も多くいます。
極端にラクターゼの量が減ってしまうと、コップ2~3杯の牛乳でも下痢をしてしまうので、このような場合には基本的には牛乳などの乳製品は避けるようにしましょう。
なお、乳酸菌を含むヨーグルトのような乳製品であれば、製造過程で乳酸菌のラクターゼによって30%の乳糖がすでに分解されているので、比較的下痢は起こりにくいです。また、チーズに含まれる乳糖の量は牛乳より少なく、摂取量にもよりますが多くの場合耐えられます。そして現在では、乳糖を減らした牛乳なども多くのスーパーマーケットで入手できます。
乳糖不耐症を根本的に治療するには、小腸のラクターゼ分泌量を増やす必要がありますが、現時点ではそのような治療法は確立されていません。大人は乳製品以外からも栄養を摂取できるので、それほど深刻に考える必要はなく、「牛乳の量を減らす、避ける」などして対処しましょう。
大人の乳糖不耐症は、年齢を重ねるにつれてラクターゼという乳糖分解酵素が減少することから起こります。個人差はあるものの、避けられない正常ともいえる症状です。下痢のほか、腹部の膨満やけいれん痛、吐き気、腸のゴロゴロ音などがみられますが、深刻になる必要はないので、牛乳を避けるなどして対処しましょう。