一酸化炭素中毒の治療ってどんなことをする?治療後の注意点は?

2018/7/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ガスなどの不完全燃焼が原因で発症することのある「一酸化炭素中毒」。この一酸化炭素中毒になってしまった場合は、どんな治療が行われるのでしょうか。治療後の注意点と併せてお伝えしていきます。

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一酸化炭素中毒になったらどんな治療をするの?

一酸化炭素中毒になった場合には、酸素投与を行うことが基本となっており、体内に溜まっている二酸化炭素を体外に排出するとともに身体の組織の低酸素状態を改善させることを目的とします。
酸素の投与法では酸素マスクによる100%酸素投与、高気圧酸素療法がありそれぞれ6時間以上行うことが推奨されています。

100%酸素投与を行うことで血中の二酸化炭素濃度は40~80分ほどで改善することができ、高圧酸素療法では15~30分で二酸化炭素濃度の改善が認められています。通常の呼吸では改善までに4~6時間程時間がかかることを考えると、治療法に賛否両論あるものの現段階では治療効果があると考えられています。
通常、100%酸素投与にて改善が図れない場合に降圧酸素療法を行います。また、治療後は体組織の酸素消費を抑えるために安静が必要となります。

一酸化炭素中毒の治療後に気をつけることは?

一酸化炭素中毒の治療を行い、症状が改善しても気をつけなければならないことがあります。一酸化炭素中毒は治療にて症状が改善した後も間欠型一酸化炭素中毒といい、一酸化炭素中毒による昏睡状態から回復した後に錯乱状態や歩行障害などが見られる疾病になることもあります。

これは一酸化炭素中毒の患者の約1割に見られるもので3~4週間ほどで回復することが多いものの、稀に死を引き起こす場合もあります。そのため、治療後も4週間ほどは激しい運動を控えることが必要になります。

一酸化炭素中毒治療後、後遺症が残ることはある?

一酸化炭素中毒は、治療を適切に行えても後遺症が残る場合があります。一酸化炭素中毒における後遺症は慢性的な学習障害と頭痛が最も多く、他にも知能低下や意識障害、記憶障害、認知障害、抑うつ、無動性無言症、パーキンソン症候群、失禁、末梢神経障害などを起こす場合があります。

これらの後遺症は治療後2~6週間後に起こることが多く、MRI画像検査にて急性脳病変が見られた場合は、遅発性の神経後遺症が生じる可能性が高いという報告もあります。他にも人格が変化して攻撃っぽくなったり怒りっぽくなることもあります。
これらの後遺症は数か月から数年続くこともありますが、治癒することもあります。

おわりに:適切な治療後も継続的な経過観察を

一酸化炭素中毒は100%酸素投与や高圧酸素療法などを早期に受けることで改善することが期待されています。しかし、治療後にも間欠型一酸化炭素中毒や神経障害、学習障害などさまざまな後遺症を残す場合もあります。後遺症はすぐに治癒することもあれば数年後遺症に悩まされることもあります。

そのため、適切な治療を受けた後は体組織の酸素消費量を少なくするためにも安静にし、激しい運動等を控えることが望ましいです。また、これらの後遺症は脳のMRI検査でも発見することができます。治療後も継続的に自分の体調を観察し、違和感を感じた時には医療機関へ相談するようにすると良いでしょう。

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