記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/3 記事改定日: 2020/6/18
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
お腹の中には大きな血管「腹部大動脈瘤」が通っています。「腹部大動脈瘤」は大動脈瘤の病気で、瘤が破裂すると命に関わります。腹部大動脈瘤が破裂する前には痛みなどのサインがあるのか、何が原因で破裂するのかなどを解説しますので、腹部大動脈瘤破裂の予防に役立ててください。
お腹を通る腹部大動脈は、へそのあたりで左右に枝分かれします。太くて丈夫であることが腹部大動脈の特徴のひとつですが、いくつかの要因がこの血管壁を弱らせることがあります。
もろくなった血管には血液の大きな圧力がかかります。その結果、血管が腫れて瘤(こぶ)状に膨らみ、正常時に比べて1.5倍以上の大きさになった状態を「腹部大動脈瘤」と呼びます(腹部大動脈の正常な太さは約2cmであり、3cm以上に膨らんだ場合を指す)。
原因の90%以上は動脈硬化とされ、女性よりも男性の発症率が高い病気です。発症の平均年齢は65歳前後で、50~70歳の年代に多くみられます。
もしも大動脈瘤が破裂した場合は大量出血を引き起こして死に至ることがあり、年間に多くの人が命を落としています。というのも大動脈瘤は症状がほとんどあらわれないまま大きくなり、破裂にも前兆がないため、発症してから予防に取り組むことがなかなか難しいからです。健康診断やほかの病気で病院を訪れたところ、腹部エコー検査でたまたま大動脈瘤が見つかるケースが多くみられます。
ただし、大きくなった大動脈瘤が周囲の臓器を圧迫した場合などに次のような症状があらわれることがあります。
治療せずに症状が進むうちに、瘤の壁に集まった血塊などがはがれ落ち(解離)、血管を詰まらせてしまう場合があるので注意しましょう。
大動脈は高い圧力で血液を体中に送り出しているため、生じた傷が小さくとも、そこから大出血を引き起こします。破裂した箇所から大出血し、脳や脊髄など重要な臓器に血液が届かなくなってしまうと、命に関わるのです。そのため、腹部大動脈瘤の治療は、破裂する前に行うことが非常に重要とされています。
破裂をしてしまった場合の死亡率は80~90%と非常に高く、破裂する前に適切な治療を行うことが大切です。破裂の可能性の高い大動脈瘤の治療方法は、手術です。破裂する前に手術を行った場合の早期死亡率は1.4~5.1%前後に抑えられます。
瘤が大きいほど破裂のリスクが高まるため、早期診断・早期発見が必要となります。腰痛や腹痛など気になる症状があらわれたら、すぐに病院を受診してください。
腹部大動脈瘤でとられる手術のうち、日本で広く普及しているのが「人工血管置換術」です。
瘤のできた血管を人工血管へと置き換えます。血液をサラサラにする薬(ヘパリン)の服用と並行して行います。
手術後の合併症として注意したいのは、腸の機能低下、癒着による腸閉塞です。
破裂の危険性の低い動脈瘤に対する治療方法は、血圧を下げる降圧療法で経過をみます。
治療中は破裂や解離のリスクを下げるために安静にしましょう。また血管への負担を減らす高血圧予防も効果的とされています。
上記の注意点を守るようにしましょう。気になる症状はなくとも、定期的に腹部エコー検査を受けることが早期発見につながります。
腹部大動脈瘤の最も大きな原因は動脈硬化です。
動脈硬化は高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病や喫煙習慣などによって引き起こされます。そのため、腹部大動脈瘤を予防するには、食事や運動習慣を整えるなど生活習慣を改善することが大切です。
次のような対策をとりましょう。
自覚のないまま症状が進む腹部大動脈瘤は、破裂した場合に命に関わるため注意が必要です。破裂を未然に防ぐためにも、気になる症状は放置せず病院を受診するようにしたり、自発的に検査を受けるようにしましょう。