腹部大動脈瘤が破裂する前に前兆ってあるの?破裂を防ぐには?

2018/8/3

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

血管は私たちの全身に張り巡らされ、血液の循環によって酸素や栄養を体中に運んでいます。お腹の中には大きな血管が通っていてたくさんの血液が流れていますが、この重要な役割を持つ血管には「腹部大動脈瘤」という病気が起こりうるのをご存知でしょうか。腹部大動脈瘤の原因と破裂の前兆について解説していくので、予防に役立ててください。

腹部大動脈瘤とは?

おなかを通る腹部大動脈は、へそのあたりで左右に枝分かれします。太くて丈夫であることが腹部大動脈の特徴のひとつですが、いくつかの要因が血管の壁を弱らせることがあります。

大動脈を弱らせる要因

  • 動脈硬化
  • 感染症(梅毒、サルモネラ菌など)
  • 炎症を引き起こす病気(ベーチェット病など)
  • 高血圧、糖尿病、高脂血症
  • 外傷
  • 老化
  • 先天性の病気

もろくなった血管には血液の圧力がかかります。その結果、血管が腫れて瘤(こぶ)状に膨らみ、正常時に比べて1.5倍以上の大きさになった状態を「腹部大動脈瘤」と呼びます(腹部大動脈の正常な太さは約2cmであり、3cm以上に膨らんだ場合を指す)。

原因の90%以上は動脈硬化とされ、女性よりも男性の発症率が高い病気です。発症の平均年齢は65歳前後で、50~70歳の年代に多くみられます。

腹部大動脈瘤が破裂する前兆はあるの?

もしも大動脈瘤が破裂した場合は大量出血を引き起こして死に至ることがあり、年間に多くの人が命を落としています。というのも大動脈瘤は症状がほとんどあらわれないまま大きくなり、破裂にも前兆がないため、発症してから予防に取り組むことがなかなか難しいからです。健康診断やほかの病気で病院を訪れたところ、腹部エコー検査でたまたま大動脈瘤が見つかるケースが多くみられます。

ただ、大きくなった大動脈が周囲の臓器を圧迫し、腰痛や腹痛、腹部のけいれんなどの症状があらわれることもあります。治療せずに症状が進むうちに、瘤の壁に集まった血塊などがはがれ落ち(解離)、血管を詰まらせてしまう場合もあるので注意しましょう。

腹部大動脈瘤が破裂する前に治療するのがマスト!

大動脈は高い圧力で血液を体中に送り出しているため、生じた傷が小さくとも、そこから大出血を引き起こします。破裂した箇所から大出血し、脳や脊髄など重要な臓器に血液が届かなくなってしまうと、命に関わるのです。

破裂の可能性の高い大動脈瘤の治療方法は、手術です。しかし破裂をしてしまった場合の死亡率は80~90%と非常に高く、破裂する前に適切な治療を行うことが大切なのです。破裂する前に手術を行った場合の早期死亡率は1.4~5.1%前後に抑えられます。
腹部大動脈瘤でとられる手術のうち、日本で広く普及しているのが「人工血管置換術」です。

人工血管置換術
瘤のできた血管を人工血管へと置き換えます。血液をサラサラにする薬(ヘパリン)の服用と並行して行います。
手術後の合併症として注意したいのは、腸の機能低下、癒着による腸閉塞です。

破裂の危険性の低い動脈瘤に対する治療方法は異なります。小さな動脈瘤は血圧を下げる降圧療法で経過をみます。瘤が大きいほど破裂のリスクが高まるため、早期診断・早期発見が必要となります。腰痛や腹痛など気になる症状があらわれたら、すぐに病院を受診してください。

治療中は破裂や解離のリスクを下げるために、安静にしましょう。また血管への負担を減らすことも必要です。高血圧の原因になる喫煙や塩分の摂りすぎは控え、適正な血圧を管理するようにしてください。気になる症状はなくとも、定期的に腹部エコー検査を受けることが早期発見につながります。

おわりに:腹部大動脈瘤を破裂させないためには早期発見、早期処置を心がけよう

自覚のないまま症状が進むため、腹部大動脈瘤の対策をとるのは難しいように思えるかもしれません。しかしもしも大動脈瘤が破裂してしまったら命の危険は甚大です。破裂を未然に防ぐためにも、気になる症状は放置せず病院を受診するようにしたり、自発的に検査を受けるようにしましょう。

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