記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心筋症のひとつである肥大型心筋症は、指定難病のひとつです。そのうちの閉塞性肥大型心筋症は、突然死のリスクが高いことでも知られています。今回は、閉塞性肥大型心筋症の症状や治療法などをご紹介します。
心臓は、血液を全身に送るポンプのような役割をもっています。心臓は4つにわかれており、右上が右心房、右下が右心室、左上が左心房、左下が左心室と呼ばれています。
まず、「心筋症」とは心臓の筋肉である心筋に問題がみられ、心臓の機能が正常にはたらかなくなる病気です。そのうち「肥大型心筋症」とは、心肥大を起こす明らかな原因となるような高血圧などがないにもかかわらず、筋肉の壁が厚くなる心筋の異常な肥大が起こるもののことをいいます。この肥大によって心臓が過剰に収縮し、心室の内腔が閉じたり、拡大することができなくなる拡張障害を引き起こすといわれています。
「閉塞性肥大型心筋症」とは、肥大型心筋症により縮小した左心室の内腔の一部が、心臓の収縮期にはさらに狭くなり、左心室の内腔が閉じてしまうものです。血液の通り道の流出路が狭くなり、結果的に全身に送られる血液量が減少することによって、突然死などのリスクが高くなるといわれています。指定難病を受けている遺伝性の病気のひとつです。
閉塞性肥大型心筋症などの肥大型心筋症では、ほぼ自覚症状がないか、症状がみられた場合には不整脈によって動悸やめまい、息切れや失神などが現れることで知られています。失神は不整脈が原因となっているほか、運動時などに流出路の狭さが悪化することにより、血液が全身に送られなくなることで現れるといわれています。
閉塞性肥大型心筋症の治療には、主に以下のような薬物治療と非薬物治療の2通りがあります。
症状がみられない場合は、基本的に経過観察を行います。ただし何らかの症状がみられたり、検査によって異常が認められる場合などでは薬物治療が有効です。
主に心筋の過度な収縮を抑制し、脈拍数を低下させることで負担を軽減させるカルシウム拮抗薬やβブロッカー、肥大の進行を抑制するといわれるアンギオテンシン変換酵素阻害薬などを使用します。また不整脈がみられる場合には、アミオダロンなどの抗不整脈薬を使うこともあります。
ペースメーカ植え込み術や経皮的中隔心筋焼灼術、外科手術などが挙げられます。
ペースメーカによる治療では、ペースメーカからの刺激で拍動リズムをコントロールし、左心室の流出路が狭くなるのを予防します。
経皮的中隔心筋焼灼術では、カテーテルによって高濃度のエタノールを注入し、肥大した心筋の一部を人工的に壊死させます。これにより、大動脈に血液を流れやすくし、全身への血液循環が促進されます。
外科手術の代表的なものは、流出路の厚くなっている部分を取り除く中隔心筋切除術です。中隔心筋切除術は欧米では歴史のある手術で、約90%の症例で再発がなく、長期的にみても良好な経過であるという報告もあります。ただし日本では、手術を受けられる十分な環境が整っていない状況といわれています。
治療後は症状が現れないまま、生涯を終える人もいます。また一方で心機能の低下や危険な不整脈などがみられることもあります。死因としては運動中の突然死が多いとされるため、激しい運動は控えた方が良いとされています。
閉塞性肥大型心筋症は自覚症状がない場合が多いといわれていますが、不整脈によるめまいや動悸などが現れる場合もあります。また過度な運動は突然死につながる恐れがあるため、控えるようにしましょう。