マダニから感染するライム病の症状とは?ペットからも感染するの?

2018/8/6 記事改定日: 2019/6/27
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

聞き慣れない病名かもしれませんが、欧米では年間数万人ものライム病患者が発生していて、アメリカなどでは、社会的にも深刻な問題になりつつあります。日本でも患者報告があるライム病、いったいどんな病気なのでしょうか?

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ライム病ってどんな病気?

ライム病とは、細菌の一種であるスピロヘータによる感染症です。ライム病という名前は、1976年にアメリカのコネチカット州ライムで集団発生したことに由来しています。

世界中で発生が報告されていますが、ヨーロッパからアジアまでの温暖な森林地域、北アメリカの北東部、北中央部、太平洋沿岸地域などに多くみられ、ほとんどの人はこれら山間地域での野外で感染しています。ただし、日本でも年間数十件の報告があり、都内でも患者の報告があります。

通常は、ライム病の病原体であるスピロヘータ科のライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi sensu lato)を保有したマダニ(シカダニ)に咬まれることによって感染します。よって、人から人へ感染することはありません。アメリカでは、昆虫が媒介する感染症の中でもっとも多くみられるものです。夏から初秋にかけて発生することが多く、とくに山間地域など樹木の多い地域に住む小児や若い成人の感染率が高くなっています。

ライム病の症状とは

ライム病の潜伏期間は、およそ3〜32日間とされています。
ライム病の症状は、主に早期と後期に区分されており、感染初期にはマダニに刺された部位に、遊走性赤斑という特徴的な症状が出ます。これは、患部に赤い斑点や丘疹ができて、それが少しずつ広がっていくというものです。その際、疲れやすさや発熱、筋肉痛、関節痛、頭痛、悪寒などを伴うこともあります。

症状を放置すると、前述した遊走性赤斑が多発的にみられたり(二次性遊走性赤斑)、重度の頭痛や首筋の硬直、動悸や不整脈、手足のしびれや痛み、顔面神経麻痺や髄膜炎、さらには記憶障害など、さまざまな症状が現れます。

感染から数ヶ月ないし数年が経つと、病原体が全身に拡散することで重症化し、慢性の皮膚症状や髄膜炎、関節炎が悪化して、死に至ることもあります。また、これらの症状が順にみられることなく、突然に顔面神経麻痺が発症することもあります。

いずれにせよ、治療が遅れると皮膚や関節などに後遺症が残ることもあるため、心当たりのある人は、ただちに受診してください。

ライム病はどうやって治療する?

ライム病の治療は、抗生物質によって行われます。遊走性赤斑にはドキシサイクリン、髄膜炎などの神経症状にはセフトリアキソンなどが第一選択薬として用いられます。

予防接種がないため、まずは野山などでマダニの吸着を防ぐことが何よりも重要です。マダニの活動期である春から初夏、および秋に野山に出かけるときには、以下のことに気をつけるようにしてください。

  1. マダニが衣服についたことがわかりやすい、白っぽい服装をする
  2. むやみに藪などに分け入らない
  3. 衣服の裾を靴下に入れるなどし、きちんと虫よけをする
  4. 万が一マダニに咬まれたときは、自分ではなく医療機関(皮膚科)で切除してもらう

ライム病は、適切な治療が行われることで完治する疾患です。仮に皮膚症状のみであれば、適切な抗生物質を14日間服用することで完治が見込めます。ただし、全身に症状が強くみられ、皮膚症状の範囲が広い場合は、3週間から1か月にわたる治療が必要になることもあるでしょう。さらに、顔面神経麻痺がある場合には入院が必要となり、点滴での治療を10〜14日間ほど受けることもあります。

ペットから感染することもある?

ライム病はペットについたマダニを介して感染することがあります。
マダニは犬や猫の目や鼻の周り、耳、肛門、胸部など比較的毛の少ない部位に寄生しやすいため、定期的に皮膚の状態をチェックして、マダニを発見したり、噛まれたような跡が多数ある場合には病院を受診してマダニ駆除を受けるようにしましょう。

また、外飼いをしているネコは草むらなどでマダニをもらってくることもありますので、外遊びから帰ったときにはマダニを始めとする虫が付着していないかチェックするようにしてください。

おわりに:ライム病は、早期治療で治すことができる!

「たかがダニ」と、油断は禁物です。流行地への旅行時のみでなく、野外ではしっかりと虫よけをするようにしましょう。また、早期発見、早期治療がポイントです。少しでも「おかしい」と感じたら、すみやかに受診してください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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