子宮がん検診と治療 ― 聖マリアンナ医科大学 産婦人科学 戸澤晃子准教授インタビュー

2018/8/13

一般的に、がんと聞くと40代以上の人に発症しやすいというイメージがありますが、実は20代、30代の女性を襲うがんがあります。それは「子宮頸がん」。今回は、この子宮頸がんについて、聖マリアンナ医科大学難病治療研究センターで婦人科腫瘍や緩和治療を専門とされる戸澤晃子(とざわあきこ)准教授に、子宮頸がんが注目されている背景や治療・予防法、そして緩和治療について伺ってきました。

子宮頸がんが注目されている背景

― 本日はよろしくお願いいたします。最近、女性の検診で「子宮頸がん」って目にすることが多いのですが、子宮頸がんが注目されるようになった背景といったものはあるのでしょうか?

子宮頸がんの特徴は、女性特有のがんの中でも若い世代に発症するというのが最初のポイントです。

実は、子宮がん検診は20歳から実施しています。20歳になったら、もうがん検診の対象年齢なんですね。このことが認知されないまま、20代とか30代で上皮内がんという、一番早期のがんがあるんですけど、最近、このタイプのがんが日本の若い世代の間で増えつつあるのが注目されている点だと思います。

また、ほかのがんだとお年寄りがなるイメージだと思いますが、子宮頸がんは若い世代に発症するがんであること、発症年齢が妊娠や結婚、出産を経験する年代と重なっていることもあり、妊娠や出産に影響が出てしまう可能性があることも注目されている点だと思います。

― 子宮頸がんが若い世代に発生するのには、何か背景があるのでしょうか?

子宮頸がんの大半は、HPV(ヒト・パピローマウイルス)が原因です。まれに子宮頸がんの原因ってHPVじゃないこともありますが、頻度は少ないので、おおむね子宮頸がんの原因はHPVと考えてよいでしょう。

若い世代に発症しやすいのは、はっきりとしたデータはありませんが、性行為の低年齢化が原因と考えられています。HPVは性行為で感染するので、たとえば、初めて性行為をした年齢が中学生のときだとすると、その時点で感染のリスクがありますよね。これがすぐがんになる訳ではありませんが、5年から10年ぐらいかけてがん化していきます。したがって、HPVへの感染の機会が低年齢化すればするほど、若いうちにがんになる確率が高くなってしまうのです。

― 性行為で感染する可能性があるとしたら、若い世代に限らず、あらゆる年齢層に感染の可能性がある、ということでしょうか。

はい。感染リスクは誰にでもありますが、ほとんどの場合、一時的な感染で終わります。20代のHPVの感染率を調べると、かなり高い確率で感染しています。海外のデータと合わせた結果になりますが、7、8割の女性は一生のうちに一度はHPVに感染しているんですね。ほとんどの場合、自浄作用が働いてがん化することはありませんが、0.0何パーセントの確率で、少しずつがん化してしまうのです。

継続的な検査が欠かせない

― HPV感染に自覚症状はあるのでしょうか?

何もありません。ものすごく一般的な感染なので、ほとんどの人が日常生活の中で知らないうちに感染し、知らないうちに治っていくのが一般的です。

― HPVに感染しているかどうかは、HPV検診を受ければわかるのでしょうか?

はい、検査すればわかります。20代は感染していて当たり前の世代なので、検査で引っかかる可能性が高いのですが、感染しやすい年代であることと、がん化するかどうかはまた別の問題なので、国で推奨されている回数(2年に1回)検査を受けることをお勧めしています。

― 2年に1回、定期的に検査を受ければ、がん化していることがわかるのでしょうか?

子宮頸がんは、5~10年かけてがん化していくもので、急にがんになるわけではありません。このため、軽度異形成(※1)やCIN(Cervical Intraepithelial Neoplasia)、いわゆる前がん病変(がんの前の病変)の段階で見つけることができれば、がんになる前に治療したり、対策を立てることができます。また、ごく初期の子宮頸がんだった場合も、部分的な治療(子宮の入口の円錐切除など)で対処できるので、子宮に残して妊娠することもできます。早く見つかればみつかるほど、妊孕性(※2)を維持できるのです。

― 反対に、発見が遅れると、最悪の場合命に危険が及ぶこともあるのでしょうか?

そうですね。進行がんで見つかってしまうと、子宮の機能を温存することができないので、手術で全摘出するか、放射線治療を中心とした治療を行う必要が出てきます。乱暴な言い方になってしまいますが、ⅠのA、B期、ⅡのA、B期、ⅢのA、B期のうち、Ⅰ期のⅠB期以上になると、基本的には手術で子宮を全摘出したり、放射線治療をしたりすることになります。

このため、いわゆる前がん病変の段階でしっかり対処すること、治療や検査の必要があることがわかったらすみやかに治療を始めることが大切です。そうすれば、進行を食い止めることも、早い段階で治療することも可能です。

2年に1回の検診をしていれば、前がん状態かどうかは大体わかると思います。特殊ながんの場合は進行がものすごく速いのですが、9割以上の方はがんになるまで5年~10年かかっています。ですから、2年に1度検診を受けていれば、どこかの時点で見つかる確率が高いです。

― わかった段階では治療になるのでしょうか?それとも、予防になるのでしょうか?

治療が必要な段階であれば治療します。ただ、異形成の中でも、軽度異形成やマイルドディスプラジア(mild dysplasia)、CIN1と呼ばれているものは、進行するより治る確率のほうが高いので、異形成になったからといって不安がる必要はありません。ただ、10%ぐらいはCIN1からCIN2、CIN3、がん、というふうに、徐々に進行する可能性があります。このため、精密検査や定期検査をきちんと受けて、自分が治るパターンなのか、進行する可能性があるパターンなのかを見極めることが大事です。

このため、1回目の検査でCIN1だった人が、2回目に受診したらCIN2になっていることもありますが、確率的にはCINがなくなっていることのほうが多いです。ただ、治るまでに2、3年はかかるので、いずれにしても定期的な検査は必要です。

 

乳がん検診と子宮がん検診の違い

― 「検診」と聞くと、市川海老蔵さんとご結婚されていた小林麻央さんのことを思い出します。たしか、がん検診のときにがんを発見できず、そのまま進行していったケースだったと思うのですが、検診時には見つからなくて発見が遅れる、ということは実際にあるのでしょうか?

小林麻央さんが発症した乳がんの場合、検診では画像診断(マンモグラフィーや超音波検査)を行うことが推奨されています。ただ、画像診断の場合、擬陽性や偽陰性といったものが出てきてしまうことが多いのです。

一方、子宮がん検査は「内診」と言って、特設腟から経由して細胞を取る細胞診を行うんですね。子宮は直接細胞を取ることができる臓器なので、きちんとした医師のもとで検診を受けることができれば、感度・特異度(※3)が高い結果を得られると思います。

実は、この「医師が行う検査」というのが重要なポイントなんです。会社などで行う検診(職域検診)の中には、この組織を自分で採取する方法(タンポンのようなものを腟の中に入れ、それを検査に出すもの)を実施するところがあります。この方法の場合、感度・特異度が低くなってしまうのでおすすめできません。自宅で採取して郵送するだけの検査もありますが、同じ理由でクオリティが低いため、がんの兆候を見逃してしまう可能性があります。内診はちょっと恥ずかしくていやかもしれませんが、婦人科で直接子宮の入口をこすって細胞を取る検査を受けたほうが検査の精度が高いのです。

― 子宮頸がんは婦人科で定期的に検査してもらうのがベストな方法だと思いますが、調べたら、予防するワクチンがあることがわかったのですが。

はい。これは定期接種と言って、中学1年生から高校1年生までは無料で、国からお金が出るので「予防」という大きな概念があります。子宮頸がんの場合、一次予防はワクチンで、検診は二次予防なんです。検診でがんを食い止めることはできませんが、ワクチン接種しておけば、かなりの確率で子宮頸がんを発症するリスクを抑えることができます。ただ、今はいろいろな社会問題があって、国から定期接種に補助が出てはいますが、積極的にワクチン接種は勧められていません。

HPVはさまざまながんの原因になるウイルスなのですが、中でも一番問題なのが子宮頸がんなんです。このため、定期接種で中1から高1までの方にはぜひ接種してもらいたいのですが、ちょうど5年前に定期接種の積極勧奨がCRPS(複合性局所疼痛症候群)という慢性疼痛の問題がさまざまなメディアで報道されてから、ワクチン接種が全国でも1%未満なんです。

― せっかくこのような法的制度があるのにもったいないですね。

はい、本当にもったいないです。科学的に見れば、本当は絶対に接種したほうがいいものなのに、なかなか報道されなくてもどかしい気持ちを抱えています。

子宮頸がんになった場合の緩和医療について

― ここからは、子宮頸がんになった場合の緩和治療についてお伺いしたいと思います。

まず、緩和治療について軽く触れておくと、大きな意味では「あなたはがんですよ」と言われて落ち込んだり精神的な苦痛を受けたときのケアも緩和治療に含まれます。ただ、多くの方が思い浮かべるのは終末期の緩和治療ですよね。ですので、まずは終末期のことをお話したいと思います。

ほかのがんと共通すると思いますが、終末期の緩和治療としては「痛み」ケアがあります。たとえば、骨に転移したら腰が痛いとか、肝臓に転移したらお腹が痛いといったものです。このような場合、さまざまな種類の鎮痛剤を使います。

また、子宮頸がん特有の症状として、子宮の周辺にある臓器(膀胱、直腸)にがんが広がってしまうことが挙げられます。たとえば、膀胱側に腫瘍が広がると、尿の通り道がふさがれて腎臓などが腫れてしまった結果、水腎症になって膀胱から尿を出せなくなってしまう可能性があります。また、腸が完全に塞がれてしまったり、子宮の経路から腸にまで病巣が広がってしまうと、食べたものを排泄できなくなるので、人口肛門をつけないとご飯を食べられなくなってしまう可能性があります。

― それでは、もうひとつの緩和治療(がん宣告を受けた後のケア)は、どのような流れで行われるのでしょうか?

今はいろいろな職種のスタッフが連携して治療にあたっています。たとえば、診断して治療方針を決めるのは医師ですが、がんの専門ナースといったスペシャリストがいます。こうした方々が早い段階からお話をしたり、悩みを聞いたりしています。また、うちの病院でも、ほかの病院でもよくあるのは、早い段階から緩和治療のチームと関わって、終末期じゃなくてもカウンセラーがいたり、緩和ケア担当の先生がいるので、その方々に相談したりすることができます。

また、うつになる方も比較的多いので、うつ病でなくても精神的な薬を一時的に服用して、苦しさを和らげることも必要に応じて取り入れています。

こうしたケアは必要に応じて取り入れています。たとえば、「がんです」と言われて気持ちの整理がついていないときに「緩和の先生のところに行ってください」と言うと、かえって「緩和=終末期?」と勘違いされ、余計に話がややこしくなる可能性があります。

このようなときは、コミュニケーションをしっかりとって、話ができそうだったらすすめるし、時間が経ってから家族を交えて話をしたりしています。あるいは、時間が解決してくれることも結構あるので、十分に時間を取って、ご家族の方もまじえて話をすることもあります。今の世代の人たちは、ネットで調べたり、本で読んだりしながら、病気への理解を深めてくるようです。

― ちなみに、告知するときは患者さんによって伝え方を変えることはあるのでしょうか?

はい、変えています。ストレートに言って欲しいタイプの人もいれば、「がん」と言っただけで気を失ってしまいそうな方もいるので、検査結果の伝え方で様子を見て、その後どうやって話そうかなと考えています。

話すべき項目を一方的に伝えればいい、というわけでもないので、話す義務はありますが、時間の猶予があれば今回はここまでにして、次に来たときに少しずつ話すこともあります。

― 実は私自身、検診でひっかかって大腸の内視鏡検査を受けたことがあるんです。検診で引っかかったというだけで、自分は大丈夫なんだろうか……と、ものすごく不安になりました。

たしかに、本当に軽い異常しか出ていないのに、「私『がん』なんですか?」という雰囲気で精密検査を受けに来る方がいらっしゃいます。でも、こちらの感覚としては「いやそれはないと思うんですけど、ちょっと引っ掛かっているので精密検査しましょう」なので、それほど精密検査を深刻に考えないほうがよいと思います。また、このくらいの感覚で、すぐに精密検査を受けていただければ、がんを未然に防ぐことができます。

― 本日はありがとうございました。

用語集

(※1)異形成(軽度異形成)

現時点ではがんではないが、将来がんになる確率が高い細胞(前がん病変)や、悪性・良性の境界線上にある細胞のこと。病変の程度により、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成に分類される

(※2)妊孕性(にんようせい)

妊娠しやすさを表すことば

(※3)感度・特異度

感度:検査によって、病気の人をどれだけの確率で見つけ出せるかを示すもの
特異度:病気ではない人をどのくらいの確率で陰性と判定できるかを示すもの

▼ 聖マリアンナ医科大学 産婦人科学
http://www.marianna-u.ac.jp/houjin/staff/univ/sanpu/

プロフィール

戸澤 晃子

平成10年聖マリアンナ医科大学医学部卒。
聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター准教授。
専門・担当分野は婦人科腫瘍、絨毛性疾患、婦人科病理、内視鏡、緩和医療。
日本産科婦人科学会指導医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、
日本がん治療認定医、日本婦人科腫瘍学会専門医。

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