ベル麻痺ではどんな薬が使われるの?薬以外に治療法はある?

2018/8/20 記事改定日: 2019/3/27
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

ある日突然、片方の頬がはれぼったく感じられたり、水を飲もうとして口からこぼれたり、口が反対につれたりするなどの症状がみられたら、それはベル麻痺かもしれません。ここでは、顔面麻痺全体の70%ほどを占めるベル麻痺について、その治療法などをご紹介します。

なぜベル麻痺になってしまうの?

ベル麻痺とは、イギリスの解剖学者であるチャールズ・ベルの名前がつけられた顔面神経麻痺の一種で、男女ともに発症年齢は40歳代にピークがみられます。

これまでその原因は不明(特発性)と考えられており、そのため特発性麻痺とも呼ばれてきました。しかし、近年では原因となるウイルス性感染症や自己免疫疾患などの特定を示唆する科学的根拠が、一部のケースで報告されています。

ベル麻痺の原因には、一般的に以下のものがあります。

  • 単純ヘルペス1型(口唇ヘルペスといった口の感染症の原因ウイルス)による感染症
  • 水痘帯状疱疹ウイルス

この他にも、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、あるいは流行性耳下腺炎、風疹、さらにはインフルエンザの原因ウイルスなども、ベル麻痺を発症させる原因となることがわかっています。

ベル麻痺の治療で使われる薬とは?

治療には、まず第一に薬物療法が選択されます。治療薬としては主に副腎皮質ホルモン(ステロイド)、血流活性剤、ビタミン剤や神経賦活剤などが用いられ、発症直後には約2週間程度の点滴を行うことで、治療効果を高めます。

このほかにも、星状神経節ブロックと呼ばれる、神経節に局所麻酔剤を注入して顔面神経への血流を改善させる治療、鍼灸、高圧酸素療法、あるいは外科手術(顔面神経管開放)などがあり、リハビリとしては顔面筋のマッサージなどが行われます。

ベル麻痺の薬に副作用はないの?

薬物療法により、8割ほどの方がほぼ元の顔の状態に戻りますが、場合によっては表情筋の動きが十分でなかったり(不全麻痺)、口を動かすと目が一緒に閉じてしまうというような(異常共同運動)後遺症が残ってしまう可能性もあります。

これらの後遺症を残さないためにも、なるべく最初の1〜2週間はできるかぎりの治療を行った方が良いでしょう。

特別な病気を持っている場合などを除いて、ベル麻痺の治療に使用する程度量と期間であれば、副腎皮質ホルモン(ステロイド)などでも、副作用の心配はほとんどありません。あまり心配しすぎず、医師の指導のもとで薬を服用してください。

また、軽症の場合はこれらの薬を内服で使います。ただし、50歳以上の方や麻痺の強い方、あるいは糖尿病などの合併症のある方などは、入院して治療を受けた方が良いかもしれません。

薬で回復しない場合は手術が必要なの?

ただし、麻痺が起きてから長期間(先天性や1年以上)経過していて、服薬による内科的治療を受けても改善がみられない場合などには、形成外科による外科的再建手術が適応されます。

外科的再建手術には、見た目の改善をはかる静的再建術と、動きのある表情を再建する動的再建術の2種類があります。以下、詳しく見ていきましょう。

静的再建術

上瞼の垂れ下がりなどに対して、皮膚の一部を切り取ったり、筋膜や糸を移植することでつり上げる治療のことをいいます。ただし、顔面を積極的に動かして表情運動を回復させる効果はないので、静的手術と呼ばれています。

眉毛つり上げ
麻痺により下がった眉毛を、再び下がらないようにします
頬部つり上げ
頬部の皮下に筋膜を移植し、頬の出っ張りの骨とほうれい線、口唇を、つり上げます
眼瞼
余った皮膚を切除し、筋膜を移植して上眼瞼をつり上げます

動的再建術

麻痺した顔面の筋肉にかわる動力源を導入する方法で、体の他の部位から筋肉をとって移植します。神経や筋肉の回復は遅いので、治療終了まで多少時間がかかります。

神経の再建
麻痺を発症してから経過時間が短い場合、表情筋は保たれているので神経のみの再建で十分なケースもあります。しかし、神経というのはつないだからといってすぐに元通りにはなりません。したがってリハビリテーションが大切です
顔面表情筋の再建
麻痺から長期間(2年以上)が経過した場合、神経の再建だけでは目や頬の動きが回復せず、筋肉を移行したり移植したりすることが必要になります。たとえば頬部の機能回復をはかる場合、筋肉、神経、血管などを同時に移植するため、手術は大がかりになります。

ベル麻痺のリハビリ方法は?

ベル麻痺では重症な場合や治療が遅れた場合に麻痺が残ってしまうことがあります。
このため、目が閉じられない、口角が下がって飲食物がこぼれる、表情を作ることができない、顔が不自然に動く、顔がひきつる、など日常生活に支障をきたすような後遺症を生じる可能性もあります。

このような症状を少しでも改善するためにはリハビリが必要であり、筋肉の萎縮を予防するためのマッサージや温熱療法、表情を作る練習などを行います。ただし、急激に筋肉を動かすとかえって症状が悪化することがありますので、一回10分程度のトレーニングを一日3回を目安に行うようにしましょう。

おわりに:ベル麻痺は、発症後1週間ほどの治療が大切なポイントに!

ベル麻痺は、軽症であれば2か月以内に完治する病気です。ただし、発症してから1週間程度は症状の進行する期間にあたるので、初期治療が大切です。たとえ治療を行っていても、目に見えるほどの改善がなかったり、あるいは症状が悪化するように感じられることもありますが、この時期を過ぎれば麻痺は改善に向かうので安心してください。いずれにせよ、症状が疑われた場合には、すぐに医療期間に相談して、早めの治療を心がけましょう。

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