記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/14 記事改定日: 2019/3/27
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ベル麻痺は顔に症状が出るため、「周囲の目が気になる」「このまま治らなかったどうしよう」など、なにかと心の不安がつきまとうかもしれません。しかし、リラックスして適切な治療を受けていくには、原因を知ることが大切です。以下、詳しく解説していきます。
ベル麻痺の原因とされる単純ヘルペスウイルス1型は、じつは多くの人が自然に感染しているウイルスです。潜伏感染といって、通常は顔面神経の奥(神経節)でおとなしくしているのですが、何らかの原因で神経細胞内で増殖し、その結果、顔面神経が腫れて麻痺が生じます。
はじめは水を飲もうとして口からこぼれたり、よだれが垂れたり、口が反対につれたりして「変だな」と思っているうちに、顔の表情が非対称になってきます。これは、顔面神経によって支配されている顔面筋が、運動麻痺を起こすためです。
ベル麻痺の症状が出た人から、しばしば「数日前や数週間前に風邪をひいて体調を崩していた」、「仕事や家事が多忙をきわめて疲労が蓄積していた」というエピソードが聞かれることからも、ストレスが発症の引き金となる可能性はあるとも考えられるでしょう。
ベル麻痺は、ストレス以外にもヘルペスや帯状疱疹、おたふく風邪、風しんなどによって顔面神経に炎症が引き起こされることが原因になることがあります。
また、その他にも、慢性中耳炎や高血圧症、糖尿病などの病気や、頭部外傷・骨折などによって顔面神経にダメージが加わることが原因になるケースもあるとされています。
しかし、ベル麻痺は原因が特定できないものも多々あり、何の前触れもなく突然発症することもありますので注意が必要です。
ベル麻痺の治療では、主に副腎皮質ホルモン(ステロイド)、血流活性剤、ビタミン剤や神経賦活剤などが用いられ、目が十分に開かない場合などは、点眼薬、眼帯の装着が必要となることもあります。
このほかにも、星状神経節ブロックと呼ばれる、神経節に局所麻酔剤を注入して顔面神経への血流を改善させる治療、鍼灸、高圧酸素療法などが用いられます。
薬物治療によりベル麻痺全体の80〜90%程度は1年以内に、ほとんど後遺症を残すことなく治りますが、残りの10数%に口を動かすと目が一緒に閉じてしまうというような異常共同運動を伴う不完全麻痺が残り、数%に完全麻痺が残る可能性があります。
また、服薬による内科的治療を受けても改善がみられない場合などには、形成外科による外科的再建手術が適応されます。再建手術には、見た目の改善をはかる静的再建術と、動きのある表情を再建する動的再建術の2種類があり、麻痺からの帰還や状況、症状などによって、内容や再生までの期間が異なります。
リハビリやマッサージも大切ですが、ベル麻痺のリハビリは筋力を強化する目的で行うのではなく、あくまで顔面の不自然な動きやひきつれ(顔面拘縮)といった後遺症を予防する目的で行われます。したがって、焦らずじっくりと行うことがポイントになってきます。
なお、発症年齢が比較的若い場合には、予後(経過)は良好のケースが多いのですが、初めの麻痺症状が重篤な場合は、年齢に関係なく麻痺の残る確率は高くなります。糖尿病なども、予後を悪くする原因の一つになります。
ベル麻痺は基本的には完治しますが、過労や強いストレスをきっかけに再発することもあります。ストレスが引き金となって発症してしまった場合には、十分な睡眠、規則正しい食事、適度な休息をきちんととって、再発を予防するように心がけましょう。