記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
A型肝炎は、かつては流行性肝炎ともいわれた経口感染型の肝炎です。衛生状態があまり良くない諸外国で生水を飲んで感染するというイメージがありますが、日本国内での感染も多く報告されています。ここでは、その症状と治療法について紹介していきます。
A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)によって引き起こされる、一過性の感染症です。このウイルスは酸に強く、アルコールにも耐性があるため、不活性化には十分な加熱(85℃で1分以上)などが必要とされています。B型およびC型肝炎とくらべると慢性化することは稀であり、感染症法では4類(動物、飲食物などの物件を介して人に感染し、媒介動物の輸入規制、消毒、物件の廃棄などの物的措置が必要とされる)に分類されています。
通常、糞便から排泄されたウイルスが人の手を介して、水や氷、野菜や果物、魚介類などを経て口に入ることで感染します。したがって、特に上下水道の整備されていない、衛生状態の悪い地域では、感染のリスクが高くなります。
過去には、日本でも井戸水や二枚貝が感染源として推定されている事例があり、海外ではレタスや冷凍ラズベリーなどによる集団感染事例も報告されています。また、性交渉時に感染することもあります。
潜伏期間は、2〜7週間(平均4週間)です。ウイルスに感染すると、潜伏期間を経て急な発熱、全身のだるさ、食欲不振、吐き気、嘔吐、さらには肝機能低下による黄胆などがみられます。潜伏期間が長いため、感染したのは少し前の旅行時であったというケースもあります。
乳幼児の感染ではほとんど症状がないか、症状の軽いことが多いのですが、免疫を持たない中高年齢者が感染し発症すると、症状が重くなる傾向があります。高齢者では重症化(劇症肝炎・死亡)することもあるため、注意が必要です。
大部分は1〜2か月で肝機能が回復し、一度感染すると免疫ができるため、その後感染することはありません。日本では60歳以上の人の多くが免疫抗体を持っています。親子孫の3世代で比較した場合、40代の父親のリスクが高いので、注意してください。
また、感染した場合には、症状がみられる前後にも、数週間はウイルスを排出しています。この期間に、他人に感染させないようにしましょう。トイレの後や調理・食事の前には石鹸と流水で、十分に手を洗うようにしてください。
主な治療法は、症状にあわせた対症療法になります。食欲不振や悪心、嘔吐による脱水や栄養不良がみられる場合は、水分、栄養分、ミネラル、ビタミンなどを補給して合併症の発症を阻止するなど、基本的には安静と食事療法が中心となります。肝機能低下による黄胆がみられ、自覚症状の強い場合には、原則として入院治療が必要とされます。
ただし、A型肝炎にはさまざまな合併症があるため、すみやかに専門医と連携して治療に当たることが大切です。特に高齢者では黄胆や肝不全が長引くことが多いので、注意が必要となります。0.1%の確率と稀ではありますが、劇症肝炎を発症することもあります。
まずは、感染しないよう予防することが肝心です。衛生状態の悪い地域などでは、経口からの感染を予防するために、生水や、加熱処理していない植物の摂取を避けるようにしてください。
また、A型肝炎の予防にはワクチンが有効になります。衛生状態の悪い地域に渡航する場合、もしくはパートナーが感染した場合などには、医療機関に相談の上、ワクチン接種を検討してください。
A型肝炎は予防することができる病気です。安全な飲料水・食料品の摂取を心がけることや、衛生環境の改善、日頃からの手洗い、ワクチン接種など、できる対策はきちんと行っていきましょう。