記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
A型肝炎は、世界中で年間140万人の患者が発生しているといわれています。公衆衛生の改善とともに、日本を含む先進諸国では大きな流行がみられなくなった一方で、いったん感染がおこると、急速に流行する危険性もはらんでいます。ここでは、A型肝炎の予防にもっとも効果があるとされる予防接種について、解説していきます。
A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)によって引き起こされる急性のウイルス性肝炎で、ウイルスで汚染された水や貝などの食べ物などを口にすることによって感染します。国外に比べると、日本で報告されている患者数は少ないのですが、実際は報告より多いと推定されています。
感染すると、2〜7週間(平均4週間)ほどの潜伏期間を経て、急な発熱、全身のだるさ、食欲不振、吐き気、嘔吐、さらには肝機能低下による黄胆などがみられますが、多くのケースは数週間程度の入院治療によって、後遺症もなく治ります。6歳以下の幼児では、約70%が無症状だといわれています。しかし、高齢者では重症化(劇症肝炎・死亡)することもあるため、注意が必要です。
現在の日本では公衆衛生が良くなったため、自然感染の機会が激減し、60歳以下の日本人のほとんどはA型肝炎の免疫を持っていません。そのため、免疫をつけるためには、ワクチンが有効となります。感染が多くみられるアジア、アフリカ、中南米などに渡航予定のある方は、特に予防接種を受けた方が良いでしょう。ちなみに、日本、オセアニア、西ヨーロッパ、北アメリカ以外は、すべて感染危険地帯とされています。感染の可能性のある国を訪れる際には、ぜひ、気をつけるようにしてください。
予防接種には、A型肝炎ワクチン(不活化ワクチン)が用いられます。日本で許可されている国内ワクチン(エイムゲン®)は、2~4週間の間隔で2回接種し、その約半年後に3回目を接種することで、約5年間の免疫が獲得できるとされています。以前は対象者が16歳以上でしたが、2013年からは1歳以上であれば全年齢で接種可能となっています。つまり、日本でもようやく子供でも国産ワクチンを受けられるようになったのです。
ちなみに、アメリカ合衆国では、A型肝炎ワクチンは子供の定期予防接種の一つとなっていますが、日本ではまだ任意です。中・低開発国ではA型肝炎は常に流行していますし、ヨーロッパやオーストラリアなど流行することもあります。海外旅行や長期滞在時には、子供でも接種をした方が良いでしょう。
1歳以上であれば、成人と同じく2~4週間の間隔で2回接種し、その約半年後に3回目を接種します。摂取量も成人と同じ0.5mlです。皮下、もしくは筋肉内に接種(筋注)します。筋肉注射の場所は、2歳までは太もも、3歳からは肩になります。ちなみに、不活化ワクチンの接種は、世界では筋肉内注射が標準とされています。皮下注射に比べて、注射部位の痛みや腫れが少なく、免疫獲得も優れているとされています。
A型肝炎の予防接種を受けて起こり得る副作用(副反応)としては、注射部位の発赤、腫れ、しこり、頭痛などがあります。その他にも発熱や頭痛、下痢や倦怠感がみられることもありますが、これまでに重篤な副作用は認められていません。しかし、何かおかしいと感じることがあれば、すみやかに医療機関を受診するようにしましょう。
また、以下の人は予防接種を受けることができません。
この他にも、心臓病、腎臓病、肝臓病や血液の病気を持つ人や、妊娠の可能性のある人、風邪のひきはじめと思われる人なども予防接種を受けることができませんので、ワクチン接種の際には、しっかりと医師の指示を仰ぐようにしましょう。
A型肝炎は、ワクチンで予防可能な感染症の一つです。感染の危ぶまれる地域を訪れる際、あるいは国内にいても必要性を感じた場合には、大人も子供もワクチン接種をした方が良いでしょう。医療機関を訪れて、医師に相談してみてくださいね。