記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/23 記事改定日: 2019/3/27
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
今回はこのベル麻痺になるとどんな症状が出るのかを治療法と併せて解説していきます。
ベル麻痺は治療が遅れてしまうと後遺症が残る可能性があるので、早期発見・早期治療に役立ててください。
ベル麻痺とは、顔面神経麻痺の一種で、顔の片側の筋肉に突然起こる筋力低下や麻痺のことです。
顔にはさまざまな筋肉が存在しますが、顔面神経はこの顔面の筋肉を動かす神経です。顔面神経は脳から出て耳の骨の中を通り、耳下腺の中で目、鼻、口に向かう3方向に枝分かれし、それぞれの筋肉に繋がっていきます。
この神経に何らかの障害が生じると、顔面麻痺が起きる仕組みです。
ベル麻痺の発症率に男女比の差はなく、左右のどちらが麻痺しやすいかの差もありません。10代から50代にかけて患者は増加し、40代に最も多いといわれています。60代以降は徐々に減少し、10才未満の小児の患者は 5%程度です。
また、従来では小児のベル麻痺は治療をおこなわなくとも治癒するといわれてきましたが、必ずしもそうであるとは限りません。できるかぎり治療をおこなうことが望ましいでしょう。
ベル麻痺になると初期の症状として、耳の周りや後頭部に痛みを感じることがあります。
その数時間以内に片方の頬がはれぼったくなったり、水を飲もうとすると口からこぼれたり、片方の瞼が閉じない、笑うと口がつったりするなどの症状があらわれます。
また、顔にあらわれる症状以外にも、涙が出にくくなったり、涙が出すぎたりします。これは瞼が閉じないことで瞬きの回数が減少し、涙の分泌量が少なくなったり目が乾燥したりするためです。この場合、目に水分を補給し、保護しなければ、重篤な状態になる可能性もあります。
また、ベル麻痺が舌で生じると味覚が鈍くなったり、ベル麻痺が生じた側の耳では小さい音が耳の中で大きく響く、などの症状が起こることもあります。ほかにも、顔面筋肉が働かないため、顔を押さえると痛みを感じることもあります。
なお、これらの症状は顔の片側だけにあらわれるのが特徴です。
ベル麻痺になったら、星状神経節ブロックと呼ばれる神経ブロック療法をおこなうのが一般的です。このブロック療法は顔面の血液循環を改善し、神経のむくみや炎症をおさえ、麻痺の回復を促す効果があります。
治療効果はベル麻痺の程度や年齢、発症から何日経過して治療を開始しているかによって異なりますが、通常、3週間以内に治療を開始した場合、10~40回のブロックでおよそ90%の患者が改善するといわれています。
しかし、治療開始が遅れた場合、特に発症から3か月以上経過している場合では、治癒は不完全となり、後遺症を残す可能性が高いです。
瞼の麻痺がある場合は、人工涙液または生理食塩水を含む目薬を、瞼が完全に閉じられるようになるまで使用し続ける必要があります。また、睡眠時など時間帯を決めて、目が乾燥して傷つかないように眼帯を使用する必要がある場合もあります。症状が重症なときは、上下の瞼を縫い合わせることもあるでしょう。
これらの治療法のほかにも、ステロイド剤や抗ウイルス剤、ビタミン剤を併用することもあります。また、自分で顔面の筋肉を動かす練習をすることも大切です。
ベル麻痺は後遺症をのこすことがあります。
特に、麻痺が完全に残ってしまうような場合には以下のような後遺症が現れます。
一方、麻痺症状がある程度改善した場合でも以下のような後遺症がのこることもあります。
ベル麻痺は発症早期から適切な治療を行えば、軽快するケースが多いとされています。治療が遅れるほど後遺症がのこる可能性が高くなりますので、気になる症状がある場合は早めに病院を受診しましょう。
ベル麻痺はある日突然起こる、原因不明の顔面神経麻痺であり、治療が遅れるほど麻痺の回復は悪くなっていきます。違和感があったらすぐに医療機関を受診して、適切な処置をおこないましょう。そうすることで、早い回復と後遺症を避けられるからです。