妊娠中の血液検査~出生前診断を受けるとき~

2017/3/28

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

赤ちゃんの健康状態は、生まれてみなければわからない…というのは過去の話。
医学の進歩は凄まじく、現在ではかんたんな血液検査で胎児の健康状態がはっきりとわかるようになりました。
ここでは出生前診断と、新しい無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)について解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

出生前診断とは

医学の進歩とともに、出生前診断によって多くの胎児の状態は妊娠9週目にはわかるようになりました。出生前診断は血液検査や超音波検査で行われ、これによって先天的異常などのリスクがわかります。具体的な病気を診断することはできませんが、さらなる検査が必要かどうか決定するための知識を得ることができます。たとえば、検査の結果によって1000人に1人の可能性で起こりうるダウン症候群を抱えて生まれてくるかどうかわかるかもしれないのです。

どんな出生前検査がありますか?

妊娠のはじめの血液検査では、すべての妊婦に対していくつかの染色体異常についての事前の出生前染色体検査を行うことがあります。35歳以上の女性、以前に遺伝子疾患の既往のある子どもを出産したことがある、これらの条件に該当する家族がいる、など生まれてくる赤ちゃんに染色体異常の可能性が高い妊婦には、NIPTや羊水検査などのより進歩した検査を実施することもあるでしょう。
無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)は、腕から血液を採取するだけなので妊婦にも胎児にもまったく安全な検査です。血液サンプルからDNAを分析し、異常を示す徴候があるかどうか調べます。その結果、超音波検査や項部浮腫測定(NT)検査の結果と照らし合わせて、さらなる検査が必要であるかどうか決定します。陽性であれば結果を確実なものにするために、絨毛検査(CVS)や羊水検査を続けて行うことを勧められるかもしれません。

出生前診断の適応条件

日本産婦人科学会では、出生前診断の希望があった場合「検査前によく説明し適切な遺伝カウンセリングを行ったうえでインフォームドコンセントを得て実施する」としており、新しいNIPTなどの遺伝子学的検査の適応条件として、以下の要件を定めています。
・夫婦のいずれかが,染色体異常の保因者である場合
・染色体異常症に罹患した児を妊娠,分娩した既往を有する場合
・高齢妊娠の場合
・妊婦が新生児期もしくは小児期に発症する重篤なX連鎖遺伝病のヘテロ接合体の場合
・夫婦の両者が,新生児期もしくは小児期に発症する重篤な常染色体劣性遺伝病のヘテロ接合体の場合
・夫婦の一方もしくは両者が,新生児期もしくは小児期に発症する重篤な常染色体優性遺伝病のヘテロ接合体の場合
・その他,胎児が重篤な疾患に罹患する可能性のある場合

NIPTは、どれくらい正確ですか?

NIPTは、ダウン症の危険性を99%正確に検査することができますが、先天性異常検査(クアッドスクリーン)の正確性は80%です。しかし、すべての検査と同じくらいの正確性があるわけではありません。そのため、推奨された検査が胎児の遺伝子疾患の危険性を調べる点においてどれほど正確であるかについては、医師に相談することが重要です。

出生前診断では何がわかりますか?

妊娠の最初の血液検査やクアッドスクリーンなどの出生前診断では、胎児が21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)のリスクがわかります。
NIPTなどのより進歩した技術では、13トリソミー(パトウ症候群)、ターナー症候群などのモノソミーや3倍体などのリスクがわかります。

出生前診断で調べられない症状は?

すべての検査で同じ染色体を調べているわけではありません。つまり、同じ症状を検査しているわけではないのです。ダウン症候群、エドワーズ症候群、パトウ症候群、ターナー症候群、および胎児の性別に関する染色体を調べるものもあれば、これらの症状に加えて中度から重度の知能障害や身体障害を引き起こす微小欠損を調べるものもあります。
繰り返しになりますが、NIPTなどの出生前診断を受けたいと思ったら医師から十分な説明とインフォームドコンセントを得たうえで決めることが大切です。
また染色体検査では、鎌状赤血球症、二分脊椎症などの神経管欠損や先天性心臓欠損などの遺伝子疾患を調べることはできないということも理解しておきましょう。最終的には、検査を組み合わせて受けることになるかもしれません。

遺伝子疾患のリスクが高いという結果が出たら、どのような選択ができますか?

出生前検査では実際に染色体疾患を診断することはできないので、最初の血液検査によってリスクが高いという結果が出たとき、医師はNIPTのようなより正確な検査を受けることを提案するかもしれません。あるいは、羊水検査や絨毛検査(CVS)のような胎児の染色体を検査することを勧めることもあります。これらの検査によって、ほぼ100%正確に診断することができますが、同時に流産の危険性も持ち合わせています。

おわりに:出生前診断は十分な説明と同意のうえで決めましょう!

出生前診断を受けるとき不安になるのは、だれしも同じです。しかし、知識は力だということを覚えておいてください。正しい情報を収集することは、医師の説明を受けたとき自分にとっても家族にとっても最善の選択をすることができます。そして生まれた赤ちゃんは、きっと最高の愛に包まれていることでしょう!

関連記事

この記事に含まれるキーワード

血液検査(43) NIPT(5) 出生前診断(4) 高齢妊娠(1) クアッドスクリーン(1) インフォームドコンセント(1)