記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/3/28 記事改定日: 2019/8/26
記事改定回数:3回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠中のむくみは、多くの妊婦さんが経験しますが、むくみが思わぬ重大な病気のサインである可能性もあります。ここでは、多くの妊婦が悩まされる足のむくみを中心に、気をつけなくてはならないことをお伝えします。
お腹が大きくなると、重力の影響で特に足のむくみを感じやすくなります。妊娠22週から27週になると、妊婦さんの4人に3人が足や顔のむくみを感じるといわれています。なかには出産するまで続く方もいます。むくみの程度は、時間や天候によって変わることが多く、夕方や暖かい環境下でむくみやすくなるといわれています。
妊娠中は、妊婦自身と赤ちゃんを守るために血液も体液も増えます。そこに、大きくなった子宮が血流が増えた骨盤静脈や大静脈を圧迫し、組織中に体液が溜まりやすくなるため、むくみが起こります。急激に体重が増加すると、さらにむくみやすくなることもわかっています。
妊娠初期にはまだ血液や体液の量は多くは増えていませんが、むくみを感じる人もいます。これは、妊娠によって増加するホルモン(プロゲステロン)が体に水分を蓄えようとする働きがあるためです。また、妊娠による急激な体調の変化や、ひどいつわりで安静にして過ごすことが多いこともむくみの原因となります。運動不足になると、体内に老廃物が溜まりやすくなるためです。
長時間立ちっぱなしの場合は、こまめに休憩をとりましょう。少なくとも、1時間に1回5分は立ったり歩いたりするとよいでしょう。
可能であれば、座っているときに台などに足を上げておいてください。足が下がると、それだけ下方に水分が溜まりやすく、むくみの原因になります。
できれば左側を下にして、横向きに寝ましょう。下大静脈の圧迫をやわらげてむくみを軽減します。赤ちゃんに血液を運ぶ大静脈は、身体の右側にあり、下肢から心臓に血液を戻します。この寝方は特に妊娠後期の安眠にもつながります。
妊婦さん向けの運動に取り組みましょう。ウォーキングは、むくみを防ぎ血液の流れを保ちます。医師の許可があれば、水泳もおすすめです。水圧は、体液を組織から静脈に戻し、腎臓に運び、尿として排出させます。
特に外出するとき、かかとの高い靴はやめましょう。また、矯正用の靴や中敷も試す価値があります。足は快適になり、足や背中の痛みを軽減することができます。家では、柔らかいスリッパをはくのがおすすめです。
ストッキングは、ひざ下タイプか、太もも丈のものを選びましょう。薬局などでも市販されていますが、医療用のものには圧力の種類があります。使用については医師に相談してください。午前中のむくみが起こる前にはいて、効率よく活動できるようにしましょう。
水で体液を押し流そうとするのは違和感があるかもしれませんが、1日に8~10杯の水を飲むと、過剰なナトリウムやほかの老廃物を身体の組織から取り除き、むくみを最小限に抑えてくれます。
塩分を制限し過ぎるとむくみがひどくなるので、過剰に制限するのはおすすめできません。適切な摂取量を守りましょう。
マッサージはむくみを改善するのに有効です。特に足のむくみがひどい時には、足首からふくらはぎ、太ももと、下から順に上がっていくような感覚で足を適度な力でなでるといいでしょう。足にたまった余分な水分を排出する効果が期待できます。
ただし、妊娠によって足に静脈瘤ができた人や、マッサージで痛みを感じる人は控えてください。特に、妊娠後期は足のマッサージをするような体勢を取るとお腹が張ることもあるため、注意が必要です。
妊娠中のむくみは多くの妊婦さんが経験するものであり、大部分は特に問題はないものです。しかし、中には妊娠糖尿病や妊娠高血圧腎症といった、非常に重篤な病気が隠されている可能性があります。
妊娠高血圧腎症は肝臓や腎臓の問題につながる可能性があり、また子宮内胎児発育遅延(IUGR)や胎盤剥離、その他合併症のリスクが増大する可能性があります。この場合、血圧の上昇、急激な体重増加、尿中のタンパク質の増加など、さまざまな他の症状が伴います。ただし、検診時に調べる血圧と尿が正常であれば心配することはありません。
妊娠中はホルモンの影響で神経質になりがちです。急なむくみが、赤ちゃんへ影響しないかと不安になるかもしれません。しかし、妊娠中のむくみの大半が問題がないものです。きちんとむくみ対策をとるとともに、検診をきちんと受けて毎回の数値をチェックしましょう。