企業のメンタルヘルスケアを担う「産業医」って?

2018/8/23

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

一定規模以上の事業場であれば、選任が義務化されている「産業医」。労働者のうつ病などメンタルヘルスの問題が近年注目を集めていることで、認知度の高まった存在ではありますが、具体的にどんな役割を担っているのでしょうか?

企業のメンタルヘルスケアを担う「産業医」とは

産業医とは、事業場における労働者の健康管理などについて、専門的な立場から助言や指導をする医師のことです。医師であるということに加え、産業医学や労働衛生に関する深い知識を持っている必要があり、労働安全衛生規則第14条第2項にて認定要件が定められています。

産業医の選任については、常時使用している労働者の数に応じて、選任義務の有無や人数、契約形態などが以下のように定められています。

  • 労働者数が3001名以上の事業場:専属の産業医を2名以上選任
  • 労働者数が1000名以上3000名以下の事業場:専属の産業医を1名以上選任
  • 労働者数が50名以上999名以下の事業場:産業医を1名以上選任
  • 労働者数が50名未満の事業場:産業医の選任義務なし

なお、危険物を扱うなど特定の業務に常時500名以上の労働者が携わっている場合は、専属の産業医を選任する必要があります。

産業医ではない医師が、企業のメンタルヘルスケアを行ってもいいの?

産業医ではない医師が、企業のメンタルヘルスケアを行うことは可能です。ただし、ストレスチェックの実施や高ストレス者への面接指導などは、事業場の業種や職場環境に理解のある産業医が実施したほうが効果的なケアが望めます

また、臨床医であれば患者さんの病気や怪我を診断・治療することが使命ですが、産業医の使命は診断や治療ではなく、中立的な立場で企業と労働者、双方にとって最善の策を出すことを使命としている、というようにスタンスにも差があります。この点からも、事業場のメンタルヘルスケアに関しては、産業医が務めることが望ましいとされています。

産業医とのメンタルヘルスケアでは、どんなことが行われるの?

産業医が事業場のメンタルヘルスケアとして主に行うのは、職場でのストレスチェックの実施とその後の面接指導です。

このうち面接指導の対象となるのは、ストレスチェックの結果高ストレス者と判断され、医師との面接指導を希望する労働者です。労働者が面接指導を希望した場合、事業場には面接を受けさせる義務が発生し、その申し出を受けてから1ヶ月以内に面接指導を行う必要があります。

面接指導では、医師は以下の4点を確認します。

ストレスチェックの3項目
仕事のストレス要因について、心身のストレス反応の詳細について、周囲からのサポートの有無について。
労働者の勤務情報
労働時間や業務内容などが書かれた書類(事業場が事前に提供する)。
心理的な負担の状況
抑うつ症状など、心理面の負担についての把握。
その他の状況
現在の生活状況や、過去の健診結果についての確認。

上記の確認のもと、医師は労働者に対して保健指導(ストレスへの対処・予防技術の指導など)か受診指導(専門機関の紹介)を実施します。その後は意見書を事業場に提出し、その内容を参考に、事業場は配置転換や労働時間の短縮、休職措置などについて検討することになります。

産業医との面接指導の内容は、企業に知られるの?

面接指導の結果について、その情報のすべてを無制限に事業場内で共有することは禁じられています。結果は人事・労務部門内のみで保管し、その後職務遂行上必要な情報のみに限り、労働者の上司に報告するというフローが基本です。

おわりに:産業医は、ストレスチェックや面接指導を実施する専門医

産業医は、職場のストレスチェックやその後の面接指導などを実施する、労働者のメンタルヘルスケアのためには欠かせない存在です。企業専属の産業医がいる場合は、ストレスチェックのときに限らず、困ったことがあれば相談してみましょう。

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