不妊治療でがんになる確率は上がる?がん治療は不妊治療に影響する?

2018/8/22

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

不妊治療を受けるかどうか検討しているとき、マイナスな情報はとても気になりますよね。
「がんになるリスクを不妊治療が高める」という噂がありますが、本当でしょうか。
今回は不妊治療とがんの関係について、不妊治療が女性特有のがんの発生に与える影響や、がん治療を経験した人の不妊治療を解説していきます。

不妊治療で卵巣がんになる確率が高くなるって本当?

1990年代に「不妊治療を受けた未産婦は卵巣がんを発現するリスクが高くなる」と報告され、卵巣がんと不妊治療の関係性が指摘されたことがあります。

しかし2018年現在、不妊治療中の女性が卵巣がんになりやすいという研究結果の優位性には、疑問が向けられています。また、近年の研究では不妊治療を受けた未産婦・経産婦の卵巣がんの発症率は6~8割と、逆に低下している傾向も見られているのです。

このため、治療中は卵巣・子宮などの状態を観察する必要はあるものの、一概に「不妊治療を行うことで卵巣がんになりやすくなるとはいえない」という結論になるでしょう。

不妊治療中に乳がんになりやすい可能性は?

基本的には、不妊治療によって乳がんのリスクは高くなることはないと考えられています。

しかしながら、不妊治療に至る原因に肥満や多嚢胞性卵巣など、乳がんの一因ともなり得る要素があることから、不妊と乳がんの関連性は一部指摘されているのが現状です。
親族のなかに卵巣がんや乳がんの罹患者がおり、不妊治療中の発現が心配な場合は、その旨を主治医に相談してアドバイスをもらうのが良いでしょう。

がん治療中の不妊治療はどうなる?

もし、不妊治療中に卵巣や乳房にがんが見つかった場合は不妊治療を中止し、原則がん治療が優先されることになります。
がん治療には患部の切除や放射線の照射、抗がん剤治療が有効であるため、治療を進めるうちに生殖能力を失うケースも、従来は多く報告されていました。

そこで近年では、卵巣・乳房・精巣・前立腺など生殖に関係する組織のがん治療の前に、妊娠に必要な卵子・精子・卵巣細胞を冷凍保存する取り組みが行われています。

このような取り組みは「妊孕性(にんようせい)の保存」と呼ばれ、がん患者の将来的な妊娠・出産や、不妊治療のために行われているものです。
すべての医療機関で行えるわけではありませんが、将来的な不妊治療の再開を希望するなら有効な手立てとなりますので、覚えておきましょう。

がん治療後の不妊治療は?

最後に、がん治療後に不妊治療を再開し、妊娠を検討する場合の手順をご説明します。

まず、がん治療を経て妊娠・出産を希望する場合は、必ずがん治療の主治医にその旨を伝えて、OKをもらわなければなりません。
そのうえで、不妊治療を扱う医療施設や産婦人科、または泌尿器科で妊孕性の検査を受けて、どの程度生殖機能がのこっているのかを確認してもらいましょう。

なお、妊孕性の検査においては抗がん剤による影響も考慮するため、がん治療中に行った治療の内容や薬の種類を伝える必要があります。
がん治療を経た男女のなかには、治療の影響で卵子の発達や排卵が起こらなくなっていたり、精子の質が著しく低下しているケースも考えられます。妊孕性にかかわる検査を受け、身体の状態をしっかりと把握したうえで、医師の指導のもとその人の状態にあわせた不妊治療を進めていく流れになります。

おわりに:不妊治療とがん発症は関係ない!がん治療には組織の冷凍保存が有効

卵巣がん・乳がんなど、生殖器系のがん発現リスクと不妊治療との関連性が指摘されているのは事実ですが、確実な関連性は認められていません。また、仮に不妊治療中にがんが見つかった場合には、不妊治療よりもがん治療が優先的に進められることになります。なお、たとえがんになっても、治療前に卵子・精子などを冷凍保存しておけば、治療を終えてから不妊治療を行うことも可能です。詳しくは主治医に相談してみてください。

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