胎便吸引症候群になると、出産後の赤ちゃんにどんな影響がある?

2018/9/4 記事改定日: 2019/12/18
記事改定回数:1回

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

胎児は普通、胎盤から臍帯を通して酸素や栄養をもらっているため、排泄をすることはありません。しかし、何らかの原因により体内で出生前や出生時に便を排出してしまうことがあります。この便を胎便と言い、胎便の混じった羊水を飲んでしまうと病気を引き起こすことがあります。
この記事では、胎便吸引症候群の特徴と治療についてお話します。

胎便吸引症候群ってどんな病気?

胎便とは、胎児が排出する無菌性の便です。

この便は濃い緑色で、通常は出生後に授乳を開始してから排出されるものですが、出生間近な胎児が何らかの原因で酸素不足になると、胎児の腸が動き出してしまい、胎便が羊水の中に排出されることがあります
このように胎便が羊水に混ざることを羊水混濁といい、混濁した羊水を吸い込んでしまうと胎便吸引症候群になることがあります。

酸素不足の状態が一時的なものであれば、基本的には胎児にさほど影響はないことがほとんどです。
ただ、混濁した羊水を吸い込んでしまうと、吸い込まれた胎便が胎児の気道をふさいでしまい、出生後の呼吸がうまくいかなくなることがあります
また、吸い込まれた胎便が肺に到達すると肺の炎症の原因になり、肺感染症のリスクが高くなります。

出生時に胎便が観察された場合、呼吸窮迫が起こっていないかどうか、胸部X線(レントゲン)写真の異常所見がないかどうかなどから診断します。

胎便吸引症候群が起こってもたいていの新生児は助かりますが、まれに酸素不足の状態が長引くとチアノーゼを生じ、心臓や脳に酸素が行き渡らないことでの合併症を引き起こします。脳性麻痺などの後遺症が残ることもあり、最悪の場合死亡することもあります。

胎便吸引症候群の場合にみられる症状は?

胎便吸引症候群を起こした新生児には、以下のような症状がみられます。

  • 皮膚が青みがかった色になる(チアノーゼ)
  • 呼吸が速く、息を吐くときにうめくような音を出す
  • 陥没呼吸など呼吸障害が起こる
  • 胸が前後に膨らむ

胎便吸引症候群では、主に酸素不足から生じる症状が多いです。皮膚が青みがかった色になるチアノーゼ、呼吸が早かったり息を吐くときにうめき声のような音が出る呼吸窮迫を始め、息を吸い込むときに肋骨の間や胸骨の下がへこむ陥没呼吸が起こることがあります。

また、肺の一部の気道が部分的に塞がれ、肺に空気を送り込めても吐き出せない状態になることがあります。
このような状態に陥ると肺が過剰に膨らんでしまうことになり、破裂してつぶれてしまうこともあります。肺がつぶれてしまうと肺組織が壊れてしまうばかりか、空気が肺の周囲の胸腔に溜まる気胸を引き起こしてしまいます。

胎便は母体に影響する?

羊水内に胎便が混入したとしても母体側には大きな影響は少ないとされています。しかし、様々な研究や調査の結果、胎便の成分は母体の血中に流入することが分かっており、出産時や出産後に母体の尿に胎便成分が含まれたとの報告もあります。

このため、現在のところ胎便が母体に及ぼす影響についてはっきりとしたことは分かっていませんが、何らかの悪影響を及ぼしている可能性も否定できません。

どうやって胎便吸引症候群を治療するの?

胎便吸引症候群の治療は、主に呼吸のための気道を確保するための治療が行われます。

まず出生時に胎便に覆われていた場合では、新生児の口・鼻・のどから胎便を吸引して取り除きます。その後、気管に呼吸用のチューブを通し、気管の中にある胎便も全て吸引します。

酸素吸入のほか、必要があれば人工呼吸器を使用することもあります。また、感染症のリスクがあるため、抗生物質も投与します。気胸を起こしていた場合には、胸腔穿刺などが必要となる場合もあります。

遷延性肺高血圧症を合併した場合、強いチアノーゼと循環不全を起こす場合もあります。その際には人工呼吸器のほか、強心薬などの多くの薬剤を使って治療を行います。仮死状態による低血圧やけいれんなどの症状についても治療が必要です。

胎便吸引症候群を起こしても、新生児のほとんどが助かりますが、ごくまれに重症化した場合、特に遷延性肺高血圧症を発症した場合は死に至ることもあります。

おわりに:胎便吸引症候群は出産直後の様子に注意

胎便吸引症候群は、ほとんどの新生児にとっては危険な病気ではありません。しかし、出生時の処置が不十分であったり、酸素不足の状態が長引いてしまったりすると合併症を引き起こすことがあります。新生児で胎便吸引症候群が疑われる場合は、迅速な処置が必要です。

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